熱狂的なファンを持つ人気コミックで、しかもファンタジーとなると、実写映画化はかなりハードルが高いと思いますが、本日12月18日(金)に公開された『約束のネバーランド』も、間違いなくその1本だったかと。週刊少年ジャンプで連載されて人気を博し、「このマンガがすごい!2018 オトコ編1位」(宝島社)にも輝いた「約ネバ」ですが、遂に理想的なキャストを迎え、その世界観をスクリーンで体感できることになりました。
主人公エマ役に、『君の膵臓をたべたい』以降、日本映画界の未来を担う若手女優となった浜辺美波、クールな少年レイ役に、『万引き家族』の好演も記憶に新しい城桧吏、リーダー格の少年・ノーマン役には、「仮面ライダージオウ」で注目された次世代スター、板垣李光人。このメインキャスト3人に加え、エマたちが住む孤児院を管理するイザベラ役の北川景子と、イザベラの補佐役(シスター)・クローネ役の渡辺直美も、強烈なインパクトを放ちます。
舞台は、楽園のような孤児院「グレイス=フィールドハウス」。ここで暮らすエマたち孤児は、 母親代わりでみんなから“ママ”と呼ばれているイザベラ(北川景子)のもと、里親に引き取られる年齢になる日を待ちわびていました。ところが、ある秘密を知ってしまったエマたち3人は、 孤児たち全員を引き連れる、 無謀な脱獄計画を試みます。
ティーンエイジャーのうつろいとファンタジーの世界観
まずは、浜辺美波、城桧吏、板垣李光人による、子ども以上大人未満というティーンエイジャーならではの美しい存在感にご注目。
すでに実力派女優として名を馳せる浜辺さんは今年20歳となりましたが、華奢な体に端正な顔立ち、澄んだ瞳がエマ役にベストマッチ。また、城くんは台詞を交わさずとも、佇まいだけで意志の強さが伝わってくるという天性の才を感じさせます。
特筆すべきは、王子系の美少年である板垣さんで、カラコンやウィッグもすんなり馴染み、原作から抜け出たようなノーマンを作り上げました。おそらく本作でブレイク必至かと。とにかく実写映画化のカギは、間違いなく、このキャスティングが実現できたことだと思いました。
最後まで決して諦めずに信じる心のすばらしさ
本作は、週刊少年ジャンプ史上、最も異色とされた「衝撃の脱獄ファンタジー」というジャンルですが、エマたち3人が織りなす友情のドラマが、女子の心をも鷲づかみします。みんなで命懸けの脱獄を図るべく、綿密な計画を立てていきますが、いろいろなミスリードもあり、余談を許さない展開に。そこに織り交ぜられた3人の関係性が、「約ネバ」をより一層盛り上げていきます。
また、親子で観る映画としてプッシュしたい点は、最後まで決して諦めないことで、道は開けるということを、ファンタジーを通して描いている点です。自分を信じ、仲間たちを守るために、勇気を振り絞って、最後まで闘っていくエマたち。そして、エマたちの脱獄を阻止しようとするイザベラと対峙するシーンもわかりやすい善悪の提示ではないメッセージが込められていて、深い余韻を与えます。
折しもコロナ禍で、先が見えない年末となりましたが、逆境のなかで、困難に打ち勝つ勇気をくれる本作を、ぜひ映画館で観ていただければと思います。
監督:平川雄一朗 原作:「約束のネバーランド」白井カイウ・出水ぽすか(集英社 ジャンプ コミックス刊)
出演:浜辺美波、城桧吏、板垣李光人、渡辺直美/北川景子…ほか
公式HP:https://the-promised-neverland-movie.jp/
文/山崎伸子
©白井カイウ・出水ぽすか/集英社 ©2020 映画「約束のネバーランド」製作委員会