クリスマスを一緒に過ごしたいのは誰? 恋愛ドラマ「姉ちゃんの恋人」「この恋あたためますか」が問いかける絆の大切さ

2020年の秋ドラマで視聴者の癒やしとなった王道のラブストーリー「姉ちゃんの恋人」(関西テレビ制作/フジテレビ系)。有村架純さん演じるホームセンター勤務の桃子と、その配送部で働く青年・真人(林遣都)の今どき珍しいぐらいピュアな恋が共感を集めています。12月22日(火曜)放送の最終回では、ついに2人の恋のゴールが描かれることに。同日、最終回を迎えるもうひとつのラブストーリー「この恋あたためますか」(TBS系)と比較しながら、どんなドラマだったのかを振り返ります。

今どき珍しい純愛を描いたハートフルストーリー「姉ちゃんの恋人」

“あね恋”こと「姉ちゃんの恋人」の舞台は、デパートでも駅ビルでもなくホームセンターという庶民的な職場。桃子は高校生のときに両親を交通事故で失い、3人の弟を養うために働いてきた苦労人です。一方、真人には暴力事件を起こし刑務所に入っていたという壮絶な過去がありました。そんな2人が職場で出会い、お互いにひかれあって、桃子から告白しますが、真人は前科持ちだからと交際を断ってしまいます。しかし、もともと肝っ玉母ちゃん気質の桃子は、めげずに彼から逮捕された本当のいきさつを聞き出し、彼が当時の恋人を守るために罪を被ったと知ると、「もっと好きになっちゃいました。私と付き合ってください」と改めて告白。ついに彼の頑な心を溶かしました。

その後、真人は元カノの香里(小林涼子)と再会。事件が起こったとき、彼女が男たちに襲われたから真人は彼らを殴ったわけですが、彼女は世間体を考えて襲われてなんかいないと証言し、真人は有罪となってしまいました。そんな裏切りを真人は許し、「幸せでいてほしい」と言って和解します。「俺は幸せ、今」と明るく笑い、同席した桃子を見て「全てのことが彼女に出会うためだったって思えるんだ」と語る。自分でも「俺、重いよね」と言っていたように、付き合い始めにこんなことを言うなんて、普通ならちょっと“重い”彼氏ですが、過去の事情が事情なので、ほっこりとした気持ちで見守れます。

振り返ってみれば、桃子と真人の交際は、恋愛というよりは最初から結婚を意識していたようでした。第1話で「吉岡さん(真人)のような人は、バキバキした人と付き合ったほうがいい、私みたいな」と自分のことなのにまるでお見合いの仲人のように言ってしまった桃子。その後、晴れて付き合うことになると、2人はまだキスもそれ以上もしていないのに、家族や職場の人たちにも交際を報告。まるでこれは結婚に至る付き合いだと確信しているようでした。真人は元カノとも婚約していましたし、恋愛を楽しむというより、人生のパートナーを見つけて大切にしたいというタイプのようです。現実でもどこの職場にも、始めから堂々と交際宣言し、1年ぐらいで順調に結婚するというカップルがいるものですよね。

2020年、変わってしまった世界で大切にできることとは?

新型コロナの感染拡大で変わってしまった“今”を描いているこのドラマ。桃子の弟・和輝(髙橋海人)によるモノローグで繰り返されるのは、桃子や真人のように不幸な事故や理不尽な事件に巻き込まれたとき、つまり世の中の残酷さに直面したとき、できることは、大切な誰かを見つけて支え合うことだというメッセージです。そこに脚本家・岡田惠和さん(朝ドラ「ひよっこ」など)が、激変の2020年の終わりに言いたいことが込められているのだと思います。

絆を築く相手は恋人でもいいわけですが、このドラマでは桃子が弟たちとの暮らしを楽しみながら大切にし、真人も母親とつつましい生活をしながらも支え合い、親子兄弟の絆が描かれてきました。最終回は桃子の家でホームパーティーが開かれ、そこでなんらかの爆弾発言があるようです。辛い過去を乗り越えた桃子と真人が好き合っていることは明確なので、ここはやはりプロポーズ的な言葉でしょうか?

クリスマスイブは仕事のシフトが入っている2人が、その日、どんな結末を迎えるのか。また、桃子の上司であるアラフォーの日南子(小池栄子)と、真人の先輩でイブに異動してしまうという悟志(藤木直人)の恋もどうなるのか。ダブルのハッピーエンドを期待しつつ見守りたいと思います。

「この恋あたためますか」はドS社長が恋のときめきを知って急展開

“あね恋”と対照的なのは、同じ火曜日に放送されている“恋あた”こと「この恋あたためますか」(12月22日最終回、TBS系)。コンビニチェーン本社のスイーツ開発部門に勤める樹木(森七菜)は同僚の新谷(仲野太賀)に交際を申し込まれ、一緒にクリスマスを過ごす流れになっていましたが、そこにドSキャラだった元社長・浅羽(中村倫也)が乱入。2人の間に割って入り樹木に「君がそばにいると、楽しい。俺には君が必要なんだ」と告白した浅羽は、自分をよく理解してくれている元カノの里保(石橋静河)より、恋のときめきを優先したのです。

ここに至るまでの展開はかなりもどかしかったけれど、ようやく浅羽が自分の気持ちを自覚し、話が動き出しました。そう、ヒロインは中村倫也さん演じる彼だったのです。
樹木は浅羽にひかれていましたが、自分にまっすぐ愛情を向けてくれる新谷と付き合おうと決心したタイミング。最終回はヒロインがいったいどちらの男性を選ぶのか?という恋愛ドラマの王道を行くエンディングになります。

実は、この20年ほどテレビ業界では“恋愛ドラマ冬の時代”と言われ、ラブストーリーがクリスマス間近に最終回を迎えかつ劇中でクリスマスを描くというパターンは途絶えていました。現実ではコロナ禍でステイホームとサイレントクリスマスが提唱されている今だからこそ、ドラマの中ぐらい夢を見たい。そんな視聴者の願望が叶えられる最終回になりそうです。

 

どちらも気になる!12月22日(火)最終回はこの2作品

■「姉ちゃんの恋人」 関西テレビ系列 21時から放送

■「この恋あたためますか」 TBS系列 22時から放送

文/小田慶子

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