お正月休みが明け、今週は仕事初めを迎えたママたちが多かったのでは。再び出された緊急事態宣言に心がざわめくなか、仕事や子育てに頑張るママたちに捧げたい映画が、1月8日(金)より公開された井上真央主演の『大コメ騒動』です。
本作で描かれるのは、1918(大正7)年、富山県の貧しい漁師町で行われた「米騒動」。日本の女性による初の市民運動とも言われています。この“女一揆”の知られざる舞台裏が、富山出身で、大ヒット作『超高速!参勤交代』を手がけた本木克英監督の手によってパワフルに描かれます。学校の教科書にも登場する史実なので、きっと子どもたちにも興味を持ってもらえそうな映画です。
井上さんは、日に焼けたたくましい主人公のおかか(女房)、松浦いと役を熱演。また、米騒動を起こすおかかたちのリーダーであるおばば役の室井滋が、強烈な存在感を発揮しているほか、立川志の輔、柴田理恵など富山出身俳優陣も多数出演しています。
家族のために、毎日大奮闘するおかかたち
夫が出稼ぎの漁に出ている間、約60キロもある米俵を毎日浜へと運ぶ女仲仕をしながら、3人の子どもを必死に育てているいと。汗水たらして働いても、手にする賃金はわずかなうえに、コメの価格は高騰するばかりです。そこで、いとたちおかかが、頼れる存在である清んさのおばばと共に、コメの積み出しを阻止しようとしますが、失敗に終わります。
ところが、地元の新聞記者によってコメ騒動が報じられたことをきっかけに、全国へと広まっていきます。そして、我慢の限界を迎えたおかかたちが、いよいよ腹をくくって、ある行動に出ます。
母は強し!家族を養うため、過酷な重労働にいそしみ、苦しい生活を支えてきたおかかたち。「理想や主張で腹いっぱいになるんがやったら誰も苦労せんわ」という清んさのおばばの言葉は、ドラマ「家なき子」の「同情するなら金をくれ」に匹敵するほど心に刺さります。
そのいとたちの奮闘ぶりを観れば、きっとママたちも時代を超えて共感できそう。どんなに困難な状況でも「負けんまいけ!やらんまいけ!」と自らを奮い立たせる姿に思わず拍手!
子どもが訴える世の不条理さに涙
「働けど働けどなおわがくらし楽にならざり」と詠んだのは石川啄木ですが、まさに劇中のおかかたちもそうでした。ある日、いとの息子が、なぜ母親たちはあんなに働いているのに、自分たちは満足にご飯を食べることさえできないのか?と、先生に問います。少年が訴える内容はあまりにも正論でありすぎて、涙を禁じえません。
だからこそ、そんな苦境のなか、怒りを爆発させ、勇気ある行動に出たおかかたちにエールを送りたくなります。そして、おかかたちの起こしたコメ騒動が、結果的には不条理な社会に一石を投じることになりました。
立川志の輔が語る「家族の命を助けたい。ただそれだけの思いの富山のおかかたちが、気がつけば時代を変えていたのでございます」という言葉が、とても心に響きます。子どもたちのためにも、決してひるまずに声を上げたおかかたちの心意気は、いまを生きる私たちに大切なメッセージをがつんと届けてくれそうです。
監督:本木克英
出演:井上真央、室井 滋、夏木マリ、立川志の輔、左 時枝、柴田理恵、鈴木砂羽、西村まさ彦、内浦純一、石橋蓮司…ほか
公式HP: https://daikomesodo.com/
文/山崎伸子
©︎2021「大コメ騒動」製作委員会