「我が子のスポーツを伸ばしたい」パパママ必読!世界的サッカーチームの指導者に聞いた、親のベストなサポートとNG行為

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「スポーツの習い事」で得られるものは? 親は何を見極め、子どもをどうサポートすべき? 子どものスポーツへの親の関わり方を、世界的なアスリートを育成する専門家にお話を伺います。

親としては子どもに勉強だけでなく、スポーツも好きで得意になってほしいですよね。そこで習い事としても人気の「スポーツ」。水泳、サッカー、野球……いろいろあるけれど、何をどのようなタイミングでさせるといいのでしょうか?

ビジャレアルCFでスペイン代表などの一流選手を育成してきた、サッカー指導者でJリーグ常勤理事を務める佐伯夕利子さんに、子どもとスポーツの関わり方についてお聞きしました。

Jリーグ常勤理事で、スペイン男子ナショナルリーグ初の女性監督、佐伯夕利子さん (写真提供:Jリーグ)

 

スポーツに苦手意識を持っているママ・パパもいるかもしれませんが、その理由が解明されるかも……!? 子どもがスポーツと良い関係を築くためのヒントをQ&A形式で紹介します。

(以下本文、佐伯さん談)

Q. スポーツを始めるタイミングは子ども任せでいい?

子どもが興味を持ったものを、そのタイミングでやらせてあげるのがベストですね。強制さえしなければ、水泳でも体操でもスポーツに触れ合うきっかけは何でもいいでしょう。

人にとって体を動かすことは大事ですし、「水泳だけはやってほしい」と親御さんが考える場合は、まだ自分の好き嫌いがハッキリしない小さな子には「水泳に行こう」と親が決めてしまっても間違いではないと思います。

Q. スポーツに適した年齢を逃さないようにする必要はある?

サッカーの指導で大事にしている「コーディネーション能力」というものがあります。

足が速い、パワーがあるといった能力以前に必要な「自分の体を自在に動かす力」のことで、将来どんなスポーツをするにしても影響してくる、アスリートのベースになる重要なものです。

例えば、足を交差しながら歩く、飛んできたボールをキャッチするのもコーディネーション能力です。縄跳び、ケンケン、スキップなどの動きもすべてコーディネーション能力なので、昔の子どもたちは遊びの中で体験していたわけですね。

遊びや運動を通して身に付くものですが、機会がない子は身に付かないまま大きくなってしまいます。

科学的に何歳まで、と厳密に決まっているわけではありませんが、幼少期、できれば小学校低学年くらいまでのうちに、なるべく多く幅広くこの能力を体得する場があるのが理想的です。
スペインからオンラインインタビューに応えてくださった佐伯さん

Q. スポーツにまったく興味がないようで困っています

サッカー教室に初めて来た子の3分の1くらいはスポーツにもサッカーにも興味がなくて、ボールより土をいじることに夢中になったりしています。

そこまで興味がないと、レッスンは意味のない時間になってしまうので、時間をほかのことに使ったほうがいい。お子さんの様子を見て、親御さんがが判断してあげて、強制的に行かせるのだけはやめてほしいですね。

教室に通ったりすることだけがスポーツではないと思います。運動は簡単に始められます。

親子で一緒にお散歩するだけでもいいと思うのです。近所を散歩しながら虫を見つけたり植物を発見したりすると、あっという間に1時間くらいたってしまいます。子どもにとっても楽しい経験になるでしょう。

Q. 子どものスポーツの適性や向き、不向きをどう判断したらいい?

人の成長スピードはまったく違うし、成長のタイミングも人それぞれ。期待されていなかった選手が一流アスリートになることもあるので、子どもにスポーツが向いているか向いていないかを判断するのは難しいですね。

「どのスポーツがいちばん好き?」と聞くのが、大人ができる精一杯のことだと思います。

大事なのは、子どもが興味を持っているスポーツに取り組ませてあげること。人は興味のあることに対しては頑張れるし、成長できるものです。うまくなくても、お子さんが好きなスポーツをさせてあげてください。

レアル・マドリード・サッカースクールの選手たちと (写真提供:Jリーグ)

Q. 親がアドバイスや指導をしてもいい? その際の注意点は?

親に競技経験があればなおさらアドバイスしたくなりますが、いちばん悪いのは、逃げ場のない場所で子どもにダメ出しすることです。

プロになったアスリートからもよく聞く話ですが、子どもの頃、練習場に迎えに来た親から、帰りの車中で延々と「今日のプレーはああだった、こうだった」と言われるのが苦痛だった……というのです。

何をやっても頑張ってもダメ出しされる。子どもが伸びるどころか、むしろ逆で、スポーツ嫌いになるいちばんの原因です。子どもは小言を言う親を嫌いになるのではなく、スポーツが嫌いになってしまいます。

「運動=楽しい」と紐付いている子は、生涯スポーツを楽しむことができます。しかし日本では「スポーツ=辛い、苦しい」と思われがちで、スポーツアレルギーやスポーツ嫌いを生み出す要因にもなっています。

サンドイッチ話法がおすすめ

コミュニケーションのスキルに「サンドイッチ話法」というのがあります。

子どもにアドバイスをするとき、「良いこと」をまず言ってから、成長の伸びしろになる「アドバイスや課題(改善点)」を続けます。そして最後に「期待すること」を伝えるのです。

「きみの◯◯が良かったね」

「ところで、◯◯はもう少し頑張るといいね」

「◯◯できるといいね」というふうに。

サンドイッチのパンが「良いことや期待」で、その中に挟むハム・チーズは「成長のための課題」。しかしハム・チーズだけを伝えて、パンを省略してしまう親が多いのです。

「教え方」「伸ばし方」の前に、人としての「伝え方」が大切 (写真提供:Jリーグ)

 

伝わるか伝わらないかは言い方次第。同じことを言われても、まず褒められるのか注意されるのかでは、まったく響き方が違います。

ダメ出しではなく、子どもが幸せかどうか、楽しんでいるかどうか。できたこと、頑張ったことをほめてあげて、子どもが「明日も頑張ろう」と心地よく思えるコミュニケーションを心がけてみてください。

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Q. スポーツで伸びる子の親の特徴は?

親の満足度を測りながらスポーツをしている子は、親の顔を振り返ってばかりいます。子どもは親を満足させることで幸せを感じるので、お父さんお母さんの嬉しそうな顔が最大の喜びなのです。

でも、親が期待していることが「自分が点を入れること、チームが勝つこと」だとしたら、それがゴールと目的になってしまいます。

スポーツで健全な体や精神を育んでほしい、克己心やチームワークを身に付けてほしいと思って始めたはずなのに、少しずつずれていってしまうのは残念なことです。

子どもをお迎えするなり「勝った?  負けた?」「あなたは何点決めたの?」と聞くよりも、まず「今日は楽しかった?」と聞いてほしいですね。これができると子どもたちの表情も成長も違ってきます。

チームの屈強な選手たちと。二列目左から3番目が佐伯さん (写真提供:Jリーグ)

Q.子どもがやめたいと言ったら、どうするべき?

実は私はスポーツも習い事もやりたがりな子どもでした。サッカー、野球、水泳、ピアノと何でもやらせてもらいましたが、親に言われたのは「途中でやめるな」ということでした。でも、やってみたらおもしろくなかったり、先生が意地悪だったり、初めて気付くこともありました。

子どもには「なぜやめたいのか」をしっかり聞いてみてください。鬼みたいな監督がいつも怒ってばかり……という理由かもしれません。

ほとんどの子は初めから「好きなこと」がわかっておらず、友だちやお兄ちゃんがやっているからとか、始めるきっかけは些細なことです。ですが小学校3、4年生にもなり成長すると、本当に好きなのかがわかってきます。好きでなくなったり、ほかに興味あることが出てきたり。

子どもの「やりたい、やめたい」という声を丁寧に拾ってあげるといいと思います。

子どもの気持ちに寄り添い傾聴することで、解決をはかれることも (写真提供:Jリーグ)

Q. 勉強や日常生活との両立について悩んでいます

そもそも勉強かスポーツか、どちらかを選択するのは難しいですよね。

私の知る優秀な選手、例えば医学生に「試験期間は大変でしょう。練習を休んでいいよ」と言ったら逆に怒られたことがあります。「僕が僕らしく楽しめる唯一の時間を奪わないでください」と。

誰しも同じ1日24時間しかないわけですが、それをどう使うか、どのように設計していくかは自分の責任です

規則正しい生活とは24時間を自分の意思をもって計画的に過ごすことなので、選手を指導するうえでも自由時間の使い方は本人の自主性に任せています。間違いながら学びながら、彼らなりの人生設計をしています。そして優秀な人ほど時間の使い方が上手です。

勉強が忙しくてもお子さんにスポーツを続けたい意思があるなら、時間の使い方を親子で見直し、「週に1時間だったらできるかな?」などと、できる範囲から話し合ってみてはどうでしょうか

Q.コーチや指導者とのコミュニケーションにおいて、心掛けるべきことは?

私たち指導者が勘違いしてしまいがちなのが、親御さんより指導者の方がお子さんのことをわかっているという思い込みです。

しかし、優秀なアスリートはコーチが誰であっても伸びていきます。彼らが安心して取り組める環境を提供してあげれば自ずと育っていきます。

なので「自分が鍛えてやる、世界一にしてやる」というような指導者の考えは思い上がりでしかありません。指導者の意識を変えないと、運動嫌いの子どもたちは減らないと思います。

一方、「なぜうちの子を試合に使わないのか」というような要望に対しては、指導者は対応できないことが多いものです。

親御さんは自分の子どもという「木」しか見ていませんが、指導者は1つ1つの「木」を大切にしながらも「森」の管理をしないといけない立場だからです。

受け入れられる要望ばかりではないかもしれませんが、伝えたいことがあれば、客観的な視点で建設的にコーチや指導者に伝えてみるといいでしょう。

指導者としてのあり方を常に問い続ける佐伯さん。愛情ゆえの葛藤と試行錯誤は親も同じか (写真提供:Jリーグ)

最後に「スポーツは自分のために」

運動やスポーツをするのは本来、アスリートとしてより自分を高めたいからです。自分が楽しめて、成長したと感じられる自己満足でいいと思うのです。

しかし日本には、他者のためにやっているアスリートが多いと感じます。悲壮な顔で競技をしているのです。「誰々のために勝ちます、戦います」というのも間違いで、自分のために楽しむのが当然で、もっと自分のためにスポーツをしていいと思います

明るい笑顔と真摯な語り口で、スポーツを通して人を育むことの奥深さを感じさせてくれる佐伯さん

 

「負けたら怒られる」「罰則30周」など、ネガティブな外からの動機づけを避けるために頑張るのはおかしなことで、「より良いアスリートになりたい」というポジティブで自発的な動機づけこそが人を育てるのです

スポーツが辛く苦しい思い出になっているから、高校で選手権に出るようなレベルの子たちでも「大学でまでサッカーをしたくない」などと言うのです。これも変えていかないといけませんね。

欧米のスポーツ文化では「頑張れ、耐えろ」ではなく「楽しめ」と教わります。こういう考えが浸透すれば、日本でもスポーツを楽しむ子どもたちが増え、生涯スポーツの普及につながっていくでしょう。

 

取材・文/村重真紀

お話を伺ったのは…

佐伯夕利子さん 
2003年にスペインの男子リーグ3部で女性初の監督に就任。翌年からマドリード女子チーム監督や普及育成副部長などを務め、2008年にビジャレアルCFと契約を結ぶ。2014年以降、ビジャレアルCFにて発足された「ビジャレアルCF人格形成プロジェクト」の一員であり、スペイン代表を育てる重要なポストを担う。Jリーグ常勤理事。
著:佐伯夕利子|小学館新書本体800円+税

欧州リーグ優勝で話題となったビジャレアルCFは、選手の人格形成を重視した「教えずして人を伸ばす」育成術で評価を集めるスペインのサッカークラブチーム。その育成改革を進めたコーチの一員であり、現Jリーグ常勤理事である佐伯夕利子さんが、ビジャレアルCF流・主体的に考えられる人間を育てるノウハウや指導者たちの姿勢を語ります。

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