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女の子に多い起立性調節障害。10~16歳ごろに発症することが多いです
起立性調節障害は、自律神経の調節の乱れによって起こる病気です。約半数に遺伝傾向があり、なりやすい因子をもつ子がいます。
主な症状は、次の通りです。
起立性調節障害の主な症状
1)朝、なかなか起きられない
2)朝から頭痛や腹痛がする
3)朝、目覚めてから時間が経たないと朝食が食べられない
4)午前中は気分が優れず、午後になると元気が出てくる
5)夜、なかなか眠れない
6)立ちくらみ、めまい、動悸、息切れ、顔色不良がある など
女の子の発症率は男の子の1,5~2倍
起立性調節障害は、10~16歳ごろに多く見られ、有病率は軽症を含めると、小学生では約5%、中学生では約10%と言われています。また男の子より女の子のほうが1.5~2倍発症しやすいです。
起立性調節障害を防ぐ4つのポイント
起立性調節障害の予防や重症化を防ぐには、自律神経の調節の乱れを整えるためにケアが大切です。家庭では、次の4つのポイントを心掛けてください。
Point1 3食食べて、水分を多めに補給する
起立性調節障害だと、朝食が食べられない子もいます。しかし少量ずつでも朝食を食べる習慣をつけることが大切です。起立性調節障害の改善には、血の巡りをよくすることが必要なので、塩分と水分を適度にとってください。食欲がないときは、朝はお味噌汁だけでもいいです。発症した場合、水分は体格にもよりますが1日1.5~2ℓを目安に摂りましょう。
Point2 早寝・早起きをして、小学生は9~11時間は眠る
夜型で睡眠時間が少ない子は、起立性調節障害を発症しやすい傾向があります。6~13歳では、9~11時間の睡眠時間をとるのが理想です。朝7時に起床するなら、遅くとも夜9~10時には就寝してほしいものです。夜型で、夜遅くまでゲームなどをしている場合は、親子で話し合って、夜8~9時にはゲームは終了するなどルールを決めましょう。その際、親が怒ったりして一方的に決めるのはNGです。親子関係が悪くなると、ストレスから症状が悪化しやすくなります。
Point3 適度に体を動かす
コロナ禍で運動不足が引き金となり、起立性調節障害を発症した子もいます。そのため毎日、体を動かす習慣を作りましょう。1日中、横になってゲームをしたり、動画を見たりしていると症状が悪化しやすいです。運動が苦手なら散歩やラジオ体操でもいいです。親子で体を動かす習慣を作りましょう。発症した場合、勉強をする時間が長いときは座っていても足を動かしたり、家の中を歩きながら暗記したりするのもおすすめです。
Point4 ストレスを溜めず、心の負担を減らす
起立性調節障害は、ストレスから発症や悪化することも多いです。そのためストレスを軽減することが第一です。「習い事が多くて忙しい」「周囲の期待が重荷になっている」など、考えられるストレスの原因をできるだけ取り除いてあげましょう。
起立性調節障害の予防や改善には、こうした生活習慣の見直しが欠かせません。
Point1~4を見て、ごく当たり前のことを言っているように感じたママもいるかも知れませんが、コロナ禍で生活リズムが乱れて起立性調節障害を発症し、不登校になってしまった子は少なくないのです。
不登校の約30~40%は、起立性調節障害を併存している
不登校はコロナ禍で増加傾向にありますが、不登校の約30~40%が起立性調節障害を併存しているというデータもあります。
起立性調節障害によって「朝、なかなか起きられない」などの理由で不登校気味になったり、もともと不登校気味だった子が、起立性調節障害を発症してますます登校できなくなるケースもあります。
起立性調節障害は放っておくと悪化するケースもあるので、上記の「起立性調節障害の主な症状」に該当する場合は、早めにかかりつけの小児科で相談しましょう。また起立性調節障害と思われても、ほかの疾患がある場合もあり、先にその診療が必要となります。
起立性調節障害は「夜は元気で活動的なのに、朝、起きられない」などの特徴があり、さぼりと勘違いされやすいです。周囲に理解されにくい病気なので、診断がつくことで安心する子もいます。
また受診すると、疾病教育といって子ども本人と親に病気の説明がされて、生活指導や環境を整えるようにアドバイスされます。必要な場合は薬による治療を行うほか、頭痛・腹痛などの症状を緩和する薬が処方されます。
家庭と学校の居心地がいいと、症状は和らぎます
起立性調節障害は、心理的・社会的ストレスから発症や悪化することも多いです。また比較的、生真面目な子が発症しやすいです。改善のカギは、子ども自身が前向きになることなので、ママやパパは頭ごなしに叱ったり、学習面などでプレッシャーをかけたりしないでください。子どもの話を遮らずに、最後まで聞いてあげることも大切です。親子関係や友人関係が良好で、家庭や学校に居心地のよさを感じると、症状は次第に和らいでいきます。
また、なかには「今日もお昼から学校に行ったの? 朝、ちゃんと起きなさい」と叱るママやパパもいますが、起立性調節障害でお昼から学校に行くというのは、本当は心身ともにつらいことです。そこを認めて「すごいね。頑張っているね」とほめてあげてください。根性論では、解決しない病気です。
起立性調節障害は症状がおさまっても、再発することがあるので、長い目で見守っていくことが大切です。
記事監修
中澤聡子先生
専門分野は小児科全般、小児心身症、アレルギー疾患。子どものこころ専門医、日本小児心身医学会認定医・指導医。
取材・構成/麻生珠恵