大学のゼミとは? 所属するメリットや講義との違い、就活への影響も

大学には「ゼミ」と呼ばれる活動があり、多くの学生が所属しています。よく聞く言葉ではありますが、ゼミとはどのようなものなのか、うまく説明できない人もいるのではないでしょうか。ゼミの内容や所属するメリットについて、分かりやすく解説します。

大学のゼミとは?

ゼミの活動内容は大学や学部によってさまざまなので、実際にゼミを経験していない人は、イメージしにくいかもしれません。他の授業との比較を交えながら、ゼミとはどのようなものか見ていきましょう。

少人数でより専門性が高いテーマを学ぶ授業

ゼミは大学の授業の一つで、専門分野に関して深く研究する活動を指します。同じテーマを学びたい学生が教授の下に集まり、討論や発表、グループワークなど、研究テーマに沿った活動を進めます。大人数で聴講する授業とは異なり、教授の研究室や指定の教室にて、少人数で行うのが大きな特徴です。

所属するゼミは、基本的に学生が自分で決めます。ただしゼミには定員が設けられており、人気のあるゼミの場合は面接や選考がある場合があり、希望が通らないケースもあります。

学生主体で進められる

ゼミは、学生が主体となって研究を進める場です。教授はあくまでも学生の研究を見守り、サポートする立場に徹します。

発表や討論の場では、教授も学生と同じ立場で参加して、意見を交わします。教授が培ってきた知識や経験を受動的に学ぶのではなく、学生自らがテーマを決めて研究を進められるところに、ゼミの面白さがあるといっても良いでしょう。

講義との違い

大学の授業といえば、大きな講堂での講義や、教授主導型の実習・実験をイメージする人は多いかもしれません。こうした授業は、教授が学生に自分の知識を教えるのが目的です。教える内容や使用する教材も、全て教授が決めます。

一方のゼミは、学生が自分で研究テーマを決めて臨みます。担当の教授はいるものの、何かを積極的に教えてくれるわけではありません。テーマだけでなく、文献や資料などを探すのも基本的には学生なのです。

ゼミの基礎知識

ひと口にゼミといっても、大学や学部によって活動の内容は大きく異なります。ゼミのタイプや学習内容、ゼミに所属するメリットを見ていきましょう。

ゼミは主に2タイプに分けられる

ゼミは大きく「一般教養系」と「専門研究系」の2タイプに分けられます。

一般教養系のゼミは、資料のまとめ方やプレゼンテーションのやり方、ディスカッションの進め方など、社会生活に役立つ能力を磨くことが主な目的です。1~2年生の間に必ず履修する科目として、一般教養系のゼミを実施している大学もあります。

一方、専門研究系ゼミは、特定のテーマを深く掘り下げる場です。理系学部のゼミでは研究室にある本格的な設備を使ってデータを集めたり、試作したりすることもあります。文系学部でも、卒論のテーマに沿ったフィールドワークや文献調査のため、専門研究系ゼミに所属する学生はたくさんいます。

ゼミでは何をどのように学ぶのか?

ゼミでの活動の流れは、ほぼ以下の通りです。

・講義で学んだ内容や興味があるものの中から、自分が研究したいテーマを見つける
・先行する研究の文献を読み、実験やフィールドワークなど必要な調査を実施
・調査結果から自分の考えをまとめ、ゼミの仲間と討論
・研究成果を発表

ゼミは基本的に週に1回程度、通常の授業が終わった後に開催されます。限られた時間で討論や発表をするため、ゼミがない日も調査や資料作りに追われる学生は珍しくありません。懇親会を開いたり、休日を利用して研究テーマに関連した場所へ旅行したりするゼミもあります。

ゼミに所属するメリット

ゼミが必修科目になっている大学や学科もありますが、所属が強制ではなく、ゼミに入らなくても卒業できる大学もあります。

しかし、ゼミに所属すると、専門分野の研究以外にも、社会に出てから必要な以下の能力を鍛えることが可能です。

・論理的思考力
・コミュニケーション力
・プレゼンテーション力
・文章力
・パソコンのスキル

ゼミは、自分でテーマを見つけるところからスタートします。教授や仲間に対して、その研究テーマを選んだ理由を説明するだけでも、論理的思考力やコミュニケーション力は自然に鍛えられるでしょう。

発表時には、分かりやすく伝えるためのプレゼンテーション力が身に付きますし、資料の作成を通して文章の書き方やパソコンの専用ソフトの使い方が学べる場合もあります。

さらに、活動の中で他のメンバーと協力するシーンもたくさんあります。学年を越えて交友関係が広がり、より充実したキャンパスライフを送れるでしょう。

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ゼミに所属すると就活に有利?

ゼミに所属すると、就職活動が有利になるとのうわさもあります。将来子どもを大学に進学させたい保護者にとっては、気になるポイントともいえるでしょう。ゼミと就活との関係について解説します。

大切なのは取り組む姿勢

ゼミへの所属やゼミの内容は、就活にほとんど影響がありません。面接時にゼミについて聞かれる機会はありますが、企業側が知りたいのはゼミの内容ではなく、学生本人の「課題に取り組む姿勢」です。ゼミに所属しているかどうかにかかわらず、大学時代に何か一生懸命に取り組んだことがあるなら、その経験を分かりやすく伝えられれば十分です。

ゼミはあくまでも学ぶ場であり、就活のために所属するものではないことを押さえておきましょう。

専門職を狙う理系学生には大切

就活のために所属するものではないといっても、専門職を狙う理系の学生にとってはゼミ選びはとても大切です。専門職の場合は、入社時にある程度の知識レベルや実験機器への熟練度が求められることもあるため、ゼミで学んだ内容が選考に大きく影響します。

また、理系のゼミでは、教授やOBが持つコネクションが、就活を有利にしてくれるケースもあります。そのため志望大学をゼミで選ぶ理系の学生も珍しくありません。

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専門性や人との繋がりを得られるゼミ

ゼミは高校までの授業とは全く違う、大学特有の授業形態です。専門性はもちろん、教授を含むさまざまな人との繋がりが得られ、大学時代に限らず社会に出た後の人生にも影響します。

ゼミで大切なのは、自分が主体的に学ぶ姿勢です。講義やアルバイト、サークル活動などで多忙な中、興味を持ったテーマを自主的に研究する体験は、一生の宝物になるでしょう。

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文・構成/HugKum編集部

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