【小児科医監修】子どもが頭を打ったら?「病院に行くべきチェックリスト」と対処法

乳幼児から小学生まで、子どもが頭を打ってしまったという状況は家の中でも外でも、気をつけていても起こってしまいます。頭は大切な部分で、とても心配になりますよね。とっさの事態に慌てずに対応できるように、小児科の先生に症状の見極めと対処法を教えてもらいました。

Q 子どもが転び、家具に頭をぶつけました。すぐに泣き出し、泣き止んだ後は元気なのですが、病院へ行くべきでしょうか?

A 元気にしていても慎重に様子を見守って!

子どもは体にくらべて頭が大きく、重心が高め。運動能力も未熟なため、転んだときなどに頭を打ってしまうことが少なくありません。頭を打ったときに注意が必要なのは、衝撃の強さなどによっては脳に影響を及ぼす可能性があるからです。

意識の乱れがないか? を確認することが大切

 

子どもが頭を打った際、いちばん大切なのは意識の状態を見極めることです。「すぐに泣き出せば大丈夫」と言われることがありますが、それは泣くことが意識のある証拠だから。頭を打ってすぐに泣いたからといって、その後心配する必要はない、という意味ではありません。

頭を打った後、ぐったりして呼びかけにも応えないような場合は、救急車を呼びます。意識がはっきりしているときも、しばらくは安静にして様子を見ます。そして、左上の表の症状がひとつでも見られたら、すぐに病院へ行きましょう。

少し休んだら元気になり、気になる症状も現れないようなら、自宅で経過を見ます。当日は入浴を控えて静かに過ごし、その後は普段どおりの生活に戻します。ただし、頭を打ってから最低でも48時間は慎重に様子を見守りましょう。元気に見えても注意が必要なのは、時間がたってから頭を打った影響が現れることもあるからです。

頭の皮膚と筋肉の下には「頭蓋骨」があります。そして頭蓋骨の中に、「硬膜」という膜に包まれて脳がおさまっています。頭を打って頭蓋骨の内側で出血すると、骨と硬膜の間や、硬膜と脳の間などに血液がたまります。そして、たまった血液が脳を圧迫すると、体の動きや感覚、言葉などに影響を及ぼしたり、意識障害などを引き起こしたりすることがあるのです。少量の出血が長く続くような場合、頭を打った直後は元気だけれど、数日~数カ月後に症状が現れることもあります。

「こぶ」は頭の皮膚の内出血

脳そのものや硬膜などが傷つかなくても、脳が強くゆさぶられたために「脳震盪」を起こすことがあります。一時的に意識や記憶が乱れたり、頭痛やめまい、吐きけなども起こったりしますが、どれも一時的なもので、後遺症が残ることもありません。ただし、脳震盪かどうか(脳への影響があるかどうか)を自己判断するのは危険です。意識の乱れなどが少しでも見られる場合は、すぐに受診しましょう。

また、頭をぶつけると「こぶ」ができることがあります。こぶは頭の皮膚の内側から出血し、皮膚と頭蓋骨の間に血液などがたまったものです。受傷直後なら、こぶが広がるのを防ぐため患部を冷やすとよいでしょう。こぶ以外に、重大な損傷がないか観察する必要がありますが、こぶだけならば頭蓋骨の外側なので、脳を圧迫する心配はありません。たまった血液は自然に吸収されるため、とくに治療をしなくても1週間から10日ほどで消失します。

 

記事監修

金井正樹|小児科医

東京都八王子市・金井内科医院院長。「国立小児病院」、米国の小児病院などで小児外科の臨床・研究を行い、2008 年より現職。診療科目は内科、小児科、小児外科、外科。保育園の園医、小・中学校の校医も務める。


イラスト/小泉直子 構成/野口久美子 『めばえ』2019年2月号

 

親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。

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