人に物を贈るとき「つまらないものですが」と言うのは失礼なの?【知って得する日本語ウンチク塾】

「つまらないもの」は失礼にあたりませんが、覚えておくと便利な「言い換え」があります

この場合の「つまらない」は、たいしたものではないという意味で、謙譲の気持を表している語なので、ことばとして失礼などということはありません。

でも、「失礼」などと断定されてしまうと、少し気になりますよね。そう言って贈り物をすると、ひょっとして相手も自分のことを失礼なやつだと思うのではないかと、余計な心配をしてしまいそうです。そのようなとき、どうしたらいいのでしょうか。

「心ばかり」「気持ちばかり」などへの言い換えをおすすめします

いちばん簡単なのは、別の語に言い換えることです。

たとえば、「心ばかり」という語があります。自分の心の一端を表しただけである、という意味です。「心ばかりですが」「心ばかりで恐縮ですが」「心ばかりのお礼のしるしです」「心ばかりの贈り物です」など、さまざまな使い方ができます。

また、「気持ちばかり」という言い方もあります。こちらは、「気持ちばかりですが、今回の大会の運営費としてご寄付いたします」のように、謝礼のときばかりでなく、慶弔の金品を送るときや、寄付をするときなどさらに広い場面で使えます。

いずれも「つまらないものですが」と言うよりもへりくだった感じがなくなり、相手への気遣いが感じられる言い方となると思います。でぜひ使ってみてください。

 

記事執筆

神永 暁|辞書編集者、エッセイスト

辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。

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