令和版としてパワーアップした『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争』
1年の公開延期を経て、ようやく3月4日(金)より公開された『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』。まだまだコロナ禍ですが、換気が行き届いた映画館で、子どもたちにしばしの時間、閉塞感のある日常を忘れ、宇宙での大冒険を体感してほしい!本作を試写で観た時、私はそう思いました。
本作は、ドラえもんファンから「名作」と呼び声の高い『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争』(85)のリメイク版ということで、おそらくママパパ世代は、85年度版を映画館で観たという方も多いのでは。
本作は、宇宙の彼方にあるピリカ星から地球にやってきた手のひらサイズの小さな宇宙人・パピと、ドラえもんやのび太たちとの厚い友情を描く冒険ファンタジーです。パピの故郷である星を、みんなで救おうと大奮闘していきます。
スモールライトで小さくなったドラえもんたちの大冒険が痛快
宇宙人のパピは、ピリカ星の大統領で、反乱軍から逃れるために地球にやってきたようです。ドラえもんやのび太たちは、ひみつ道具‟スモールライト”で自分たちもの身体も小さくして、彼と交流を深めていきます。
しずかちゃんは、パピのために、ドールハウスを貸してあげますが、まさにパピにぴったりのサイズでした。
大人が観ていても、ワクワクしたのは、小さくなったドラえもんやのび太が、大好きなスイカやメロンをお腹いっぱいになるまで食べるシーンです。オレンジにいたっては、一房ではなく一粒でさえも食べごたえがありそう。
お約束であるしずかちゃんの入浴シーンは、なんと牛乳風呂です!お肌がつやつやになりそうですよね。
それぞれが小さい体でしかできないことをめいっぱい堪能している様子にほのぼのします。また、スモールライトを使ったことで、後半に驚くべき展開が用意されていますが、そこも本作の大きな見どころと言えそうです。
今回のキーパーソン、スネ夫の葛藤に心を揺さぶられる
“リトルスターウォーズ”というタイトルどおり、まるでSF映画のような宇宙バトルが繰り広げられる本作。いつもながら、大ピンチを迎えた時、ジャイアンが男気を見せたり、のび太が奮起したりしますが、今回のキーマンはスネ夫です。
まさかの宇宙戦争に巻き込まれたスネ夫が「僕は兵隊でもヒーローでもない」と、パピのために戦うことに躊躇し、葛藤するシーンが描かれます。そんな彼に仲間たちがどんなふうに声をかけていくのかにご注目。
仲間たちは、スネ夫の気持ちに寄り添い、決して彼を責めようとはしません。そんななかで、スネ夫は「もしかして僕にもできることがあるかもしれない」と、思い立ちます。
今、まさにコロナ禍で、大人も子どもも人間関係がギスギスしている気がします。何か問題が起こると、ついつい弱者を追い詰めてしまいがち。でも、そうではなく、「映画ドラえもん」は、いつも相手の気持ちをおもんばかり、一緒になって考えることの大切さを教えてくれます。
内容も映像も令和版は、まさに今観るにふさわしい心に響く感動作となりました。折しも今、世界情勢も緊迫しているし、大人たちも日々、いろんな課題を突きつけられています。そういう意味で、子どもはもちろん、今、いろいろな渦中にいて悩める大人たちにも、ぜひ「映画ドラえもん」を観ていただきたいです。
原作:藤子・F・不二雄 監督:山口晋
声の出演:水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一…ほか
公式HP:doraeiga.com/2021/
文/山崎伸子
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