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定義に当てはまれば、昼寝中のおもらしも「夜尿症」です
夜尿症には「おもらしをする」こと以外にも、次のような定義があります。また夜尿症というと「夜間、就寝中のおもらし」をイメージしがちですが、以下の定義に当てはまれば、昼寝をしている最中に、おもらしをするのも夜尿症です。
夜尿症の定義
□5歳以上で、1ヵ月に1回以上のおもらしが3ヵ月以上続く
□昼間のおもらしをすることもある(夜尿症の1/4くらいにある症状)
男の子に多い傾向。困ったときは、かかりつけの小児科で相談を
夜尿症の原因はさまざま
夜尿症は、理由は不明ですが男の子に多い傾向があります。
夜尿症の主な原因は、就寝中の尿の量を減少させる抗利尿ホルモンの分泌が少なく、就寝中も尿量が抑えられないことです。膀胱の壁に働く神経の機能が亢進して、膀胱への尿の貯留が阻害される過活動膀胱も原因としては多く、この両方が原因となっている子もいます。
また糖尿病や腎臓の病気などの基礎疾患が原因のこともありますが、割合は5%程度です。
受診の目安は、親子ともに困ったときです。サッカーやスイミングなどの習い事をしていると、未就学児や小学校低学年でも合宿などがあったり、幼稚園や保育園によっては宿泊行事があったりします。「参加したいけれど、おもらしするから…」と悩んでいるときは、一度、かかりつけの小児科を受診しましょう。
医療機関の検索は「おねしょドットコム」で
宿泊行事がない場合でも、年長の終わりや小1になっても就寝中のおもらしが続くときは、かかりつけの小児科に相談してください。夜尿症は、早期発見・早期治療が有効です。ただし医師によっては、小1ぐらいの夜尿症だと「そのうち治るよ」「少し様子を見ましょう」と言うこともあります。
困ったときは、夜尿症の専用サイト「おねしょドットコム」で、夜尿症について相談できる医療施設が検索できるのでチェックしてください。
薬物療法とアラーム療法、2つの初期治療のメリットとデメリット
初期の夜尿症の治療は、薬物療法とアラーム療法の2種類があります。どちらもメリット・デメリットがあるので、医師とよく相談して治療法を決めましょう。
抗利尿ホルモン剤を使った薬物療法
薬物療法は、抗利尿ホルモン薬を用います。メリットは比較的早く効果が出る一方で、薬の服用をやめると再発するケースも。また薬物療法は、就寝2時間前ぐらいから水分摂取を控えることが必要です。そのため水分摂取を控えることができない子には不向きです。
アラーム療法
欧米で主に用いられる治療法で、就寝中、おもらしをするとパンツにつけたセンサーが反応してアラームが鳴ります。子ども自身でおもらしに気づいて、アラームを止めることを繰り返すうちに症状が治まっていきます。デメリットは、夜中に起きてアラームが鳴っていることを子どもに教えてあげるなど、家族の負担が大きいことです。しかしアラーム療法で、夜尿症が治まると再発は少ないです。アラーム療法を続けても効果がないときは、薬物療法に切り替えます。
おしっこの量を把握することから。治療法が合えば半年ぐらいで効果が
夜尿症は、その子に合った治療が見つかると半年ぐらいで効果が出ますが、再発することもあります。就寝中、尿意を感じたら自分で起きてトイレに行けるようになるまでには1年半ぐらいはかかるので、長い目で見ることが大切です。
また夜尿症の治療は、どのぐらいおしっこが出ているかを把握する必要があります。起床時の尿量をビーカーで測ったり、就寝中は、できたら紙おむつをはかせて、おしっこをしたら紙おむつの重さを測って尿量を記録します。慣れるまでは大変でしょうが、親子で頑張ってほしいと思います。
10代のADHDの約2人に1人は夜尿症というデータも
夜尿症は、ADHD(注意欠如/多動症)傾向がある子に多く見られます。
10代では、ADHDの約2人に1人は夜尿症というデータもあります。ADHDは、特性として興味のあることを優先しがちなため、トイレになかなか行かず、夜間だけでなく日中もおもらしをする子がいます。
困ったときは、医師に相談してください。薬物療法でADHDの症状を緩和すると、夜尿症は比較的治りやすいです。
夜尿症は慢性疾患。しつけや育て方は関係ありません
ひと昔前は、夜尿症はしつけの問題のように言われることもありましたが、夜尿症は慢性疾患です。しつけや育て方は関係ありません。
子どもを叱るのはNG!ほめ伸ばしが効果的
ただしママやパパに注意してほしいのは、おもらしをしたとき子どもを叱ったり、友だちやきょうだいと比べるなどして、子どもの自尊心を傷つけるような言葉をかけないことです。
子どもを傷つけるようなことを言っても、親子ともにメリットは何もありません。失敗しなかった日は「すごいね!」「頑張っているね!」と笑顔で大いにほめてください。「ほめ伸ばし」という言葉がありますが、夜尿症にもほめ伸ばしが効果的です。
記事監修
大友義之先生|順天堂大学医学部附属練馬病院小児科
取材・構成/麻生珠恵