10人に1人が該当!乳歯が抜けない「永久歯欠損症」の場合、どう対処する?

実は1割の人が、大人でも乳歯が抜けずに永久歯が生えないそう。わが家にもそろそろ歯の生え変わり時期に入る5歳の息子がいます。永久歯に生え変わらなかったらどうしよう? どんな処置が必要になるの?
そんな、永久歯欠損症の疑問点を、歯科衛生士の江頭小百合さんにうかがってみました。

永久歯欠損症とは?

永久歯欠損症とはどのようなものなのか、症状と原因をうかがいました。

生まれつき永久歯が欠如した「永久歯欠損症」

永久歯は親しらずを除いて計28本ありますが、生えるべき永久歯が生まれつき欠如していることを「永久歯欠損症」といいます。先天性欠損歯や無歯症などと言われることもあります。

永久歯欠損症になる原因はあるの?

本来は赤ちゃんの頃に永久歯の素となる「歯胚」(しはい)が作られますが、何らかの理由で歯胚が作られず後続の永久歯ができないと、永久歯欠損症となってしまいます。

永久歯欠損症は未だにはっきりとした理由が解明されていない症状です。中には遺伝や妊娠中の栄養不足、薬物の副作用などが関係しているのではないかと言われることがありますが、因果関係ははっきりしていません。お母さんが事前に予防することもできませんし、あまり気にすることはありません。

歯が生え変わる時期や順番は?

そもそも乳歯は、どのように永久歯に生え変わるのでしょうか。

初めて乳歯が抜けるのは5〜7歳頃

初めて乳歯が抜けるのは5〜7歳頃が多いようです。乳歯が生えた順に抜けることが多いので、下顎の真ん中の前歯(下顎乳中切歯)から抜けることがほとんどです。

12歳前後で永久歯が生えそろう

すべての永久歯が生えそろうのは、12歳前後です。乳歯は前歯から乳中切歯、乳側切歯、乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯の5本が上下左右計20本生えます。

6歳前後になると、5番目の歯の後ろに、永久歯の奥歯「第一大臼歯」が生えてきます。一番奥から生えてくるので「親しらずが生えてきた!」とビックリされる親御さんもいますが、生え変わりのない永久歯です。別名「6歳臼歯」とも言われ、永久歯の歯並び・噛み合わせの中心となる大切な歯でもあります。

第一大臼歯の前の乳歯が順番に生え変わり、最後は12歳前後に7番目の歯(第二大臼歯)が生えて、生え変わりは完了です。

※8番目の親知らずは20歳前後に生えますが、無い方や生えない方もいます。

永久歯に生え変わらない…どうしたらいいの?

乳歯が抜けない、永久歯が生えてこない…そんな時はどうしたらいいのでしょうか。

9歳で生え変わりゼロが受診の目安

乳歯が生えるのが早かったお子さんは抜けるのも早い傾向にあります。最近は5歳くらいで第一大臼歯が生えるよりも前に前歯が抜けるお子さんも増えているため、抜けないと心配になる親御さんもいるようです。中には7歳過ぎても抜けないお子さんもいますが、個人差があるのであまり心配はいりません。

8〜9歳になっても歯の動揺さえもない場合は、永久歯欠損症の可能性もあるので、念のため一度歯科医院で診てもらいましょう。

ゆっくりと永久歯が頭を出すこともある

多くの場合、乳歯は永久歯の歯冠に押されて根っこが吸収されて抜けるため、抜けた後すぐに生えてきます。ですが、まれにゆっくり歯冠を歯ぐきの上に出すこともあるので、半年くらいは様子を見ることもあります。

永久歯がある場合は生えやすく処置をすることも

乳歯が抜ける適正時期を過ぎても歯が動揺もしてこない場合、レントゲン撮影をして永久歯があるか確認します。後続の永久歯がある場合は、永久歯欠損症ではありません。

レントゲンで永久歯の存在を確認する

 

永久歯欠損症ではないのに、永久歯がなかなか生えてこない原因としては、下記が考えられます。

・顎が狭いことで、対象の永久歯が乳歯を押せていないのに抜けてしまった
・永久歯の歯胚がまだ下のほうにあるので時間がかかる
・他の乳歯の根っこが邪魔で出にくい
・乳歯が抜けたあと、歯ぐきが永久歯の上に厚く被ってしまい、なかなか頭を出せない

歯ぐきが永久歯の上に厚く被っている場合は、歯科医院で歯ぐきを少し切開して永久歯が出やすいようにする処置をおこなうこともあります。永久歯の数が足りているかどうかレントゲン撮影したり、歯ぐきの切開(開窓)は保険適応の範囲です。

永久歯欠損症と診断されたら?

永久歯欠損症の場合、何か処置をする必要があるのてしょうか?

乳歯を一生使い続けることはできない

永久歯欠損症と気づかず、大人になって歯が抜けてびっくりされる方がいるくらい、後続の永久歯がない場合、長く乳歯が残っていることもあります。問題なければ乳歯のままでも良いのですが、もともと永久歯よりも小さく、エナメル質や象牙質といった歯質も薄く根っこも短いため、長年使っていると20歳過ぎて抜けることが多いようです。

自然に乳歯が抜けるのを待つ場合

長年使った乳歯が抜けたあと、後続の永久歯が無いと隙間ができてしまうので、インプラントやブリッジ、入れ歯など欠損部の修復治療で隙間を補います。

乳歯でできる隙間は永久歯よりも狭い場合もあるので、修復ではなく歯列矯正で歯並びを整えることもあります。

※歯列矯正の場合は上下左右の噛み合わせのバランスも重要なため、矯正治療で整えることができるかどうかは欠損状態によります。

子どものうちに早めに歯列矯正を行う場合

早い段階で永久歯に欠損があると分かった場合は早めに抜歯し、歯並びを整えるためのスペースとして活用し矯正するという方法もあります。

最近のお子さんは顎の成長が弱くスペースが不足してガタガタに生えることが多いので、歯の交換や顎の成長に合わせてスペースを活用した矯正を行えば、顎の成長を促しながら歯並びを整えることができるため、大人になって矯正するよりも、抜歯も必要なく歯の動きもスムーズです。

日頃から歯医者で定期検診を

永久歯欠損症について、症状や処置の方法を江頭小百合さんに教えていただきました。

歯が生え変わる年齢には個人差があるとはいえ、他の子と比べて我が子の歯がなかなか抜けないと心配になりますよね。9歳頃に心配になって歯医者を受診するのもいいですが、できれば早い段階で気づき、子どもに合った処置を選択してあげたいです。

虫歯がなくても定期的に歯医者へ行き、歯や顎が年齢相応に成長しているかチェックしてもらうのも、大切ですね。

教えてくれたのは…

江頭小百合さん
歯科衛生士、日本Webライティング協会認定ライター、3姉妹の母。子どもたちへ虫歯にならないための知識を伝えたいと歯科衛生士になる。その後小児歯科に通算10年勤務し、3人目出産後Webライターに転身。臨床の知識と経験を活かし、歯科情報サイトの執筆・監修や歯科医院のホームページ制作に携わっている。

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構成・文/村上詩織

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