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小学生や未就学児でなる場合もある「スマホ内斜視」
スマホ内斜視は、デジタルデバイスを使いすぎた後で発症する内斜視の一つです。
原因として考えられるのは、適切にメガネを使用せず、スマホやタブレットの画面を近くで見ることが習慣になっていることです。小学生や未就学児でも、スマホや携帯ゲームタブレットを使いすぎた後にスマホ内斜視を発症することがあります。また、遠視なのを知らずに、無理に手元のスマホなどを見ようとして発症する子もいます。
人は読書をするときは、スマホやタブレットよりも少し離して本を持ち、自然と黒目を動かしながら文字を追います。しかしスマホやタブレットだと、画面が小さいほど近くで見るために、下のイラストのように黒目が寄りがちになります。また本とは違い文字をスクーロールして動かすので黒目があまり動きません。そのため内斜視になりやすいのです。
未就学児が内斜視になると、視力に悪影響が!
徐々に悪くなることもある内斜視。黒目が内側に寄り、物が二重に見えるように
内斜視の主な症状は、左右の黒目のどちらかが内側に寄り、物が二重に見えることです。子どもは適応しやすいため、3・4年生ぐらいまでだと、物が二重に見えても違和感を覚えにくいのです。そのためママやパパに二重に見えていることを伝えず受診が遅れるケースもあります。
しかし、走ってくる車や友だちが投げたボールなどが二重に見えたりすると事故やけがの危険があります。黒板の字も見づらくなり、勉強も集中できないでしょう。さらに内斜視になると、立体感や遠近感もつかみにくくなります。そのためコップにお茶を入れようとすると上手に注げなかったり、はさみが使いにくくなるなど日常生活にも支障が出やすくなります。
また視力の成長段階である未就学児が内斜視になると、黒目が寄ってしまったほうだけ視力が育ちにくくなります。
未就学児に3DはNG! 小学生でも長時間は見ないで
未就学児は前述の通り、視力の発達が未熟なのでスマホやタブレットでゲームをしたり、動画を見ることは控えてほしいのですが、3Dのゲームや映画を見たりするのもやめましょう。3Dの絵本も同様です。
3Dを見るとき子どもは無意識に黒目を内側や外側に向けて見るなど、目の動きが不自然になります。目の発達が未熟で、ピントを合わせる力が育っていないお子さんが続けると内斜視を発症します。任天堂ではゲーム機の説明書などに「6歳以下のお子様が長時間3D映像を見続けると、目の成長に悪い影響を与える可能性がありますので、保護者による使用制限機能で、3D映像を表示しない設定にしてください」と注意喚起を促しています。
小学生でも、3Dのゲームを長時間したり、3Dの映画を見るのは避けたほうがいいです。スマホ内斜視のリスクが高まります。
こんなサインがあったら眼科受診を!
次のような様子が1つでも見られたときは眼科の受診が必要です。脳に異常があって急性内斜視になることもあります。スマホの見過ぎや、ゲームのやり過ぎと決めつけず受診してください。
【眼科の受診が必要なサイン】
・黒目が寄っている
・片目をつぶって物を見る。または「片目をつぶらないと見えにくい」と言う
・横目で見る
・急に目つきがおかしくなった
・明るいところに出ると片目をつぶる
視聴を中止しても回復しにくいことも。治療法は?
スマホ内斜視は、スマホやタブレットの使用をやめたからといって回復しないこともあります。主な治療としてはプリズムという特殊なメガネを装着することもありますし、程度によっては手術が必要になります。
また12歳以上だと、ボツリヌス毒素を目(目を動かす筋肉)に3~4ヵ月ごとに注射する治療法もあります。
スマホ内斜視にならないための、デジタルデバイスの使い方。近視の子は要注意
スマホやタブレットの使い方によっては、近視やスマホ内斜視のリスクが上がります。家庭ではそのリスクを子どもに伝えて、次のことを守るように親子で話し合ってください。
【デジタルデバイスを使うときの4つのポイント】
・スマホやタブレットなどの画面を見るときは、目から30cm以上離す
・20分に1回は休憩をとり、20秒以上遠くを見て目を休める(窓を開けて外の景色を見るなど)
・スマホやタブレットは、明るい場所で見る
・就寝の1時間前になったら見るのを止める
未就学児は腕が短いので、スマホやタブレットの画面を30cm以上離して見ることができないと思います。
そのため本来は、スマホやタブレットは見せないのがベストです。もし見せる場合は、スマホではなくできるだけ画面が大きいタブレットなどをテーブルに置くなどして離れて見るようにしましょう。
また前述の通り、メガネをかけずにスマホやタブレットの画面を見続けると、スマホ内斜視になりやすいので、学校の視力検査で再検査となったときは必ず眼科を受診してください。メガネは眼科医と相談したうえで、その子に合ったものを作りましょう。
記事監修
佐藤美保先生|浜松医科大学医学部眼科 准教授・医学博士
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取材・構成/麻生珠恵 イラスト提供/佐藤美保先生