子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。
子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!
夏休みがスタートして早2週間。あっという間に経ってしまいました。残りのお休みを有効に過ごすにはどうしたらいいでしょう。二学期への準備もあれば教えてください。
埼玉県 N・Mさん
長い夏休みは子どもの自立を育む体験と学びのチャンス
園生活があるときと違って、夏休みは家庭で自由に使える時間がたっぷりあります。その時間をぜひ、親子で上手に使ってほしいと思います。
たとえば、夏休みはしつけのチャンス。園生活のあるときは、時間に追われているので、子どもが食事や着替えをしているときに、つい「早くしなさい」と言ってしまったり、手伝ってしまいがちです。しかし、時間のある夏休みならそれを我慢して待つことができます。子どものゆっくりした動作を見ていると、手や口を出してしまいたくなるかもしれませんが、ここはぐっと我慢して、できる限り子どもを見守り、できたら褒めてあげましょう。それを繰り返していくうちに、生活習慣の自立が高まっていきます。
また、本物にふれ、五感をみがく機会をたくさん持てるのも夏休みならではです。ただし、お金をかけて旅行やイベントに連れて行かなくても、日常生活の中で、そうした体験は十分にすることができます。たとえば〝お手伝い〟は子どもにとって楽しい体験の宝庫です。親子で買い物に行き、玉ねぎをカゴに入れさせるだけで、子どもは玉ねぎの肌ざわりや重さを知ります。そして、その玉ねぎを料理するときに、皮を剥かせてあげれば、臭いを感じたり、玉ねぎ成分の影響で涙するかもしれません。お手伝いが素晴しいのは、どんな作業をした場合でも、お母さんが「ありがとう」と子どもに言える点です。それは子どもにとって、大きな喜びとなり、自信になります。
しつけにしてもお手伝いにしても、お母さんにとっては時間も手間もかかる面倒なことだと思います。しかし、子どもにとって、それはとても大切な学びの機会。こうした体験が夏休み中に蓄積されることで、すぐに効果は現れなくても、やがて子どもの生きる力になります。
二学期直前は生活リズムと食生活の見直しをしましょう
夏休み終盤になったら、まず、生活リズムの見直しをしてみてください。子どもの健康や体力を維持するには「規則正しい生活が大切」とわかっていても、開放的な夏は、昼寝を長時間するようになってしまったり、夜更しをしていることが多いものです。そして、そのようにルーズなまま二学期を迎えてしまうと、寝不足で、午前中、園でぼーっとしていたり、昼食後に寝てしまう子どももいます。そうならないよう少しずつ生活リズムを整えていきましょう。園によっては、二学期を前に午前中だけ登園するといった、慣らし保育を実施する園もあります。
また、暑いので水分補給をジュースで済ませたり、いつのまにかおやつを多く与えていて、朝昼晩のごはんをしっかり食べられなくなっている子どもも、しばしば見かけます。食欲が落ちているような場合は、間食を控えて様子をみるなども必要です。
いずれにしても、夏休みは子どもが心身ともに大きく成長する時期です。親子の時間を大切にして、たくさんの思い出をつくってあげてください。体験に勝る学びはありません。
回答していただいたのは…
宝仙学園幼稚園元園長。2007年から2019年3月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。
構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2014年9月号