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主な症状は涙目や目やに。悪化すると、目の回りが腫れ上がる
先天鼻涙管閉塞症は、生まれつき目から鼻にかけての涙の通り道である鼻涙管(びるいかん)が詰まっている状態です。主な症状は流目や目やにで、生後1カ月以内に発症することが多いのですが、原因は不明です。
細菌感染をして炎症を起こし、悪化すると目の回りやまぶたが赤く腫れ上がることもあります。
自然軽快率は1歳までに80%以上
涙目や目やにが気になる場合は、念のため眼科を受診しましょう。
先天鼻涙管閉塞症は自然によくなることが多く、小児の自然軽快率は日本では1歳までに80%以上。欧州では1歳までに96%と言われています。
ただし「自然によくなるから」といっても、受診をしないのはNGです。医師の指示に従ってケアをしてください。目やにや涙目が気になるときは、清潔で肌触りのよい薄手のタオルなどで優しくおさえるように拭いてあげましょう。
マッサージは無理に行わなくてもOK
先天鼻涙管閉塞症は、目の内側(鼻のつけ根あたり)をマッサージすると症状が改善することもあります。そのため眼科でマッサージの仕方を指導されることもありますが、お母さんやお父さんにとって負担になったり、赤ちゃんが嫌がってうまくできなかったりするときは、無理して行う必要はありません。
眼科によっては、涙管ブジー術を勧められる場合も
先天鼻涙管閉塞症は、医療用の細い針金状の器具を涙が出る涙点から挿入する「涙管ブジー術」という治療法があります。涙管ブジー術は確かに有効な治療法ではありますが、赤ちゃんが動かないように体をしっかりおさえつけて行う必要があります。そのため赤ちゃんが活発に動かない、1歳前に行うことが勧められます。また1歳1カ月以下だと、治療の成果が高いことも報告されています。
涙管ブジー術は、菌血症の合併症を起こす割合が20%
ただし涙管ブジー術は、術後の合併症として菌血症を起こす割合が20%という報告があります。菌血症とは、血液中に細菌が認められ、発熱や倦怠感などの症状が現われます。ほかには肺血症が認められた報告もあります。肺血症とは、細菌感染により臓器の機能に障害を起こす重大な疾患で集中治療室への入院が必要です。
涙管チューブ挿入術は、安全性は高いが全身麻酔が必要
先天鼻涙管閉塞症は、前述の涙管ブジー術のほかにも「涙管チューブ挿入術」があります。涙管チューブ挿入術は、涙道内視鏡を用いてシリコン製の涙管チューブを挿入する手術です。涙道内視鏡を用いて行うため安全性が高く、涙管ブジー術のような重篤な合併症の報告もありません。また1歳前を目安に行う必要もありません。
ただし全身麻酔をするため不安を感じるお母さん、お父さんもいると思います。
治療方針は眼科によって異なるため、不安なときはセカンドオピニオンを
実は先天鼻涙管閉塞症の治療方針は、眼科によって異なります。診断がつくと、涙管ブジー術を勧められる場合もあるでしょう。しかし前述の通り1歳までは自然軽快率が高いことや、術後の合併症のリスクなどと照らし合わせて考えたほうがよいと思います。不安なときは別の眼科でも診てもらい、医師とよく相談しながら納得のいく治療法を選んでください。
記事監修
取材・構成/麻生珠恵
構成/HugKum編集部