旅行会社がPTA代行? どこまで外注できる? PTAのアウトソーシングサービスについて訊いてみた

近畿日本ツーリストが、PTA業務のアウトソーシングをスタート。「旅行会社がなんでPTA代行?」を取材しました。

PTAの活動に皆さんはどれくらいかかわっていますか?「嫌いじゃないから」と熱心に参加する人もいれば、まったくかかわらない人もいると思います。

近畿日本ツーリスト株式会社(東京都新宿区)がそんなPTAの世界に新たな「代行サービス」をスタートしました。

一見すると、「PTA活動は面倒だから」というネガティブな偏見を招きかねないプロジェクトでもあると思います。どうして旅行会社がPTAのアウトソーシング業務を始めたのでしょうか。

いろいろ質問をぶつけるうちに、最初に連想したPTA代行業務(=保護者が面倒くさがる業務をなんでもお金で引き受ける便利屋)とはちょっと違うとわかってきましたので、その詳細を紹介します。

旅行会社がなんでPTA代行?

PTA活動って、外注してしまってよいもの?

冒頭でも書いたとおり、PTA業務のアウトソーシングを近畿日本ツーリストが、2022年8月からスタートさせました。

「旅行会社の『近ツー』がなんでPTA代行?」と最初は正直思いましたし、「アウトソーシングするくらいならPTAの組織や活動自体を丸ごとなくしてしまったほうがいいのでは?」とも思いました。

確かに、PTA業務もPTAの組織自体も、非効率で非生産的な面があると思います。夫婦共働きで忙しく立ち回っている家からすれば、子どもの学校に関する大事な活動だといえども、負担・大変という本音が正直あると思います。

しかし、PTA業務にせよ、似たような地域の祭りや清掃活動にしても、完全に切り捨ててしまうにはもったいない側面が存在する点は間違いないですよね。

例えば、PTAに関して言えば、

・学校での子どもたちの様子がわかる
・他の家の子どもたちとも交流できる
・保護者同士のつながりができる
・教職員との会話が増える
・地域とのつながりができる

といったメリットが一般的に言われています。

PTAに限らず地域の祭りや清掃活動なども含め、半ば強制的にでも参加させられるコミュニティ活動を通じて、人は、予定調和な暮らしの延長では決して得られない出会いや学び、感情の変化などを体験できると指摘する有名な社会学者もいます。

「面倒くさい」という保護者の本音を受けて、PTAの各種業務を企業が代行すれば、学校を軸にした保護者と先生・地域のつながりは薄まるばかり。

旅行業を軸とした多事業展開の企業知見をPTA代行で多角的に生かす、とのことですが「それでいい話なのか」と浅学な筆者は思ってしまいました。

しかし、近畿日本ツーリストへの取材で、ネガティブな感想を率直にぶつけてみると、同社のPTA代行業務はちょっと様子が違うとわかってきました。

PTAを持続可能な組織にしたい

さまざまな側面をもつPTA活動。細分化してみるといろいろな作業が

まず、近畿日本ツーリストは、保護者からの依頼をなんでも引き受ける「便利屋」になるつもりはないとの話です。

取材に応じてくれた同社の担当者によれば「例えば『忙しいのでPTA会議に自分の代わりに出席してほしい』といった個人からの人材派遣要請には応じていない」と言います。

「PTAの組織には素晴らしいものがあり、昔ながらの価値を持つPTA自体を否定しているわけではありません。

あくまでも、自分たちのPTAを持続可能な組織にしたいと思う方々のサポートを最大の目的としています。

その意味で、個人からのご依頼は受け付けておらず、PTA活動の存続と発展を考える団体さまからのご依頼を承っております」

(近畿日本ツーリスト・担当者)※以下「担当者」

要するに、近畿日本ツーリスト側はPTAの組織と活動をポジティブに考えているのですね。

ポジティブに考えているからこそ、どうしても限られてしまいがちな人員と時間を、実りのある活動により割いてほしいとの思いから、アウトソーシングのビジネスを始めたとの話です。

「例えば『PTAの規則を変えたいのだけれど、パソコンを得意とする人がいなくて時間ばかりかかるので手伝ってほしい』だとか『行事の受付で人数が足りないので追加で補充してほしい』だとか。

規則の中身を話し合う、行事を企画し主催するなど、保護者の皆さまが活動の中心になる点は今までどおりです。当社のアウトソーシングでは、そうしたメインの活動に保護者の方々がより集中できるように補助させていただくイメージです。

また、PTAのアウトソーシングを始めたところ、いろいろな声を頂いていて、高齢者や職員だけでは維持・継続できないコミュニティ活動の支援についても、自治会や自治体などからご相談をいただいております。

今あるサービスが完成形ではなく、PTAを含めた地域のコミュニティを持続可能にするサービスに、ゆくゆくは拡充していきたいと考えています」(担当者)

外部の業者にお金を払ってPTA業務をアウトソーシングするくらいなら、PTAの組織や活動自体を丸ごとなくしてしまったほうがいいという意見もネット上にはやはり見受けられます。

しかし、近畿日本ツーリストが考えるアウトソーシングの狙いはむしろ逆で、コミュニティの一種であるPTAを評価し、持続可能になってほしいと願うからこそ、組織内で無理が生じている部分については、気軽に頼ってほしいと考えているのですね。

「印刷物」「記念品の手配」「スタッフの派遣」など、サービス内容はいろいろ

印刷物の作成だけ頼るなど、部分的な発注を検討してみても

現状のサービス内容は「印刷・デザイン」「WEBサイト作成」「人材派遣」「イベント関連の運営」「出張授業・学習支援」「記念グッズの手配」など。詳細と申込みは、WEB専用サイトにて受け付けています。

近畿日本ツーリスト|PTA業務アウトソーシングサービス

人手不足や情報不足、特定の役員への負担が大きい作業などで、もし活用できるサービスがあれば、部分発注することでぐんと効率のいいPTA活動が可能になる場合もあります。

自分の子どもが通う学校のPTAをもっと実りある組織にしたい、そのための活動に集中したい人こそ、近畿日本ツーリストのPTA業務アウトソーシングサービスをチェックするといいのかもしれませんね。

文/坂本正敬 写真提供/近畿日本ツーリスト

参考: PTA活動のためのハンドブック – 神奈川県

編集部おすすめ

関連記事