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イヤイヤ期ではなく「自立促進期」と考えて
子どもは1歳半ごろから自分と他人の区別がしっかりしてきて、「自分はこうしたい」という自我が芽生えはじめます。
その時点で親子の信頼関係が築かれていると、子どもは「何かあればママやパパのところに戻れば大丈夫」という安心感から、少しずつ行動範囲を広げることができ、それが自立への第一歩に。
イヤイヤ期は、すべてを大人に依存する赤ちゃんの状態から、いかにして自立につなげていくかが重要となる「自立促進期」です。「このイヤイヤにどう関われば自立を促せるかな?」と考えて向き合うといいでしょう。
「イヤイヤ」と「ワガママ」の線引きが大切
イヤイヤ期に子どもの行動を全面的に許容してしまうと、小学校入学後も困った行動がエスカレートして子どもに振り回されてしまうケースが少なくありません。おうちの方が困るような行動まで許してしまうと、結果的に叱ることが増え、子どものイヤイヤがひどくなるという悪循環に。
自立につながるイヤイヤと単なるワガママをしっかり見極め、子どもの甘えたい気持ちと自立につながる行動は許容しながらも、各家庭のルールに沿って、ダメなことはダメと伝える。この線引きを明確にすることが大切です。
そのイヤイヤ、OK?NG?イヤイヤとワガママの見極め方
今、この行動を許容することは…数か月後にこの子のためになっている? 私(おうちの人)は困らない?という視点で判断する
「子どものためになるorおうちの人が困らない」と思える
〇無理のない範囲で受け入れる
例:まだひとりでははけないのに、靴下を自分ではきたがる。 お散歩で通る道を決めたがる。
「子どものためにならないorおうちの人が困ってしまう」と思える
×わが家のルールを決めて、ダメなことは毅然とした対応を
例:テレビやスマホを際限なく見たがる、食事の前にお菓子を食べたがる
イヤイヤ期が始まる前からできること
日ごろから関わり方を工夫しておくと、イヤイヤ期の大変さを軽減できます。2歳以降でも遅すぎることはないので、できることから始めましょう。
0歳台:親子の絆を深めることで、その後の意思疎通がスムーズに
子どもの喜怒哀楽におうちの方が応えることなどを通じて、アタッチメント(愛着)の形成を。親子の絆が育まれていると、イヤイヤ期になっても、子どもは「ママやパパの言うことなら聞こうかな」と思えます。
アタッチメントとは?
発達心理学の概念で、子どもがある特定の人との間で築く情緒的な結びつきや信頼関係のこと。ママやパパをはじめとする周囲の大人が愛情をもって接することで強化され、アタッチメントが強いほうが、成長してから問題行動を起こしにくくなるというデータも。0歳台から形成されますが、何歳からでも強化していくことは可能です。
1歳ごろ~:身の危険につながることはダメと伝えていく
歩き始めたら、自分や他人の身に危険をおよぼす行動はダメだと伝えて。世の中にはやってはいけないことがあることを教え、少し我慢をさせたり、おうちの方の言うことを聞くという関係づくりを。
2歳ごろ~:甘えさせつつも、ダメなことには毅然とした対応を
子どもの気持ちを受け止め、スキンシップなどで十分に甘えさせつつも、甘やかしはしないことが大切。家庭のルールに反することには毅然と対応することがイヤイヤの悪化を防ぎ、おうちの方のストレス軽減にもつながります。
イヤイヤ期が始まってからの関わり方のポイント
イヤイヤ期が始まったら、叱る場面を減らせるような関わり方をすることが大切です。押さえておきたいポイントを紹介します。
困った行動をする前に、できていることをほめる
子どもは何らかの行動をしたときにほめられると、その行動を続けようと思う性質があります。イヤイヤが始まってから叱るのではなく、ルールを守れている段階で先にほめることで、よい行動の習慣化をめざしましょう。
まだ上手にできない場合は、できたところまでの努力や挑戦した意欲をほめることが大切です。
選択肢を用意して子どもに決めさせる
イヤイヤ期の子どもは「自分のことを自分で決めたい」という気持ちが強いので、その気持ちを満たせる場面をつくりましょう。
おうちの方としてはどちらに決まってもよい選択肢を用意して「どっちがいい?」と選ばせたり、「夕ごはんは何がいい?」と子どもの意見を聞いたりする場面を増やしてみてください。
大人が先回りせず待てる場面では待つ
「時間がないから」「まだひとりではできないから」「できなくて嫌な思いをさせるのがかわいそうだから」といった理由で、大人が何でも先回りしてやってしまうと、子どもの自立の妨げに。
イヤイヤ期は時間に少し余裕をもって行動し、無理のない範囲で、子どもの「やりたい!」を見守ることができると理想的です。
「泣けば思いどおりになる」という学習をさせない
泣かれたときに根負けして、子どものワガママを許容すると、子どもは「泣けば思いどおりになる」と学んでしまいます。
すると、小学生になってからも、ダダをこねて自分の要求を通そうとすることが習慣になってしまう場合も。泣かれても根負けせずに、おうちのルールを伝え、ダメなことには毅然とした対応を。
他人の気持ちを考えることはまだ難しい時期
子どもが相手の立場を考えて行動できるようになるのは、6~7歳ごろからだといわれています。2~3歳ごろは自分を中心とした物事のとらえ方をする年代であり、他人の気持ちを想像することはまだできません。
お友だちとトラブルが起きた場合は、「○○ちゃんの気持ちを考えて」とは言わずに、「順番に遊ぼうね」というように、やるべきことを端的に伝えましょう。
【よくあるシーン別】こんなとき、どうする?
イヤイヤ期はどう対応していいか困ってしまう瞬間がたくさん。そんなよくあるシーン別に対処法をご紹介します。
遊び食べをする・歩きながら食べる
椅子に座って食べている時点で「ちゃんと座って食べているね」とほめると、子どもはもう少し座って食べようという気になれます。
歩きながら食べ始めた場合、おうちの方が追いかけて食べさせると、子どもは「立って食べてもよい」と学んでしまうので要注意。食べてもらいたいあまりに、言葉と行動が矛盾しないよう心がけましょう。
着替えや歯みがきを嫌がる
2種類の服を用意して子どもに選ばせる、親子で着替えのスピードを競う、歯みがきを終えたらカレンダーにシールを貼るなど、楽しく取り組める工夫を。
生活習慣として身につけてほしいことに関しては、「やるのが当たり前のことだから一緒にやろうね」という姿勢で接し、毎日なるべく同じ順序で取り組んで習慣化しましょう。
公園から帰ろうとしない
5~10分前からそろそろ帰ることを予告し、「ブランコ30回か、すべり台5回のどちらかをやったら帰ろうね」といった選択肢を与えて子どもに選ばせると気持ちを切り替えやすくなります。
「帰り道で、はたらく車を見られるかな?」「今日の夕ごはんはコロッケだよ」など、公園を出てからの楽しみを伝えるのも効果的です。
靴や靴下を自分ではきたがる
子どもは「自分ではいてみる」という行動を楽しみ、試行錯誤をするなかで上手なやり方を身につけようとしているところです。おうちの方は子どもができている部分をほめながら、やり方のコツを教えてあげましょう。
「ここを一緒に持ってごらん」と、靴や靴下を子ども自身にも持たせながら手助けすると、子どもが「自分でできた」という満足感を得やすくなります。
おもちゃやお菓子などを「買って」とねだる
「買うのは週末だけ」といったルールを決めておき、「買って」とねだられる前の時点で、「今日はおりこうに買い物ができているね」とルールを守れていることをほめましょう。ねだられても根負けして買わないことが大切です。
泣き止まない場合は、抱きかかえるなどして一旦その場から離れ、子どもの気持ちを落ち着かせましょう。
「イヤイヤが続いてつらい」と感じているおうちの方へ
世界中のママ・パパがイヤイヤに悩んでいる!
2歳前後の子は、アメリカでは「No,No!」、フランスでは「Non, Non!」と言って自己主張をします。イヤイヤは世界中のママ・パパに共通する悩みだと知っていると、「つらいのは自分だけじゃない」と思えて、気持ちが少し楽になるかもしれません。
怒りを呼び起こしやすいワードはできるだけ避けて
子どもは同じことをくり返すものですが、そこで「またやってる!」と叱っても、子どもには効果はなく、自分がイライラするだけです。「また」「昨日も」「この間も」などの言葉は怒りを増幅させるので、「使わないほうが自分のため」と避ける工夫を。
周囲の人に頼ることも大切
育児に疲れたときは、パートナーや祖父母、園や子育て広場の先生、ママ友パパ友など、周囲に助けを求めましょう。さまざまな人と絆を築くきっかけをつくることは、子どもの社会性を育むうえでもプラスになります。
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再構成/HugKum編集部