木下ゆーきさんに聞く、夫婦の子育てを楽にするコツ。「うまく誘導する」「素直に思ったことを言う」

おむつを替えるアパレル店員のモノマネなどで大きな反響を呼んでいる子育てインフルエンサーの木下ゆーきさん。ママとパパにクスッと笑える育児の動画や文章をいつも届けています。
木下さんの動画や文章には等身大の暖かさもあり、子育てのヒントになることもたくさん盛り込まれています。
シングルファーザーの経験もあり、今も3人の子育てをしている木下さんに、子育ての大変さを和らげるコツ、夫婦で育児をするときに心がけていることを伺いました!

木下ゆーきさんが行っている子育てのコツ。イライラを笑いに変える!

 


木下ゆーき  

元シングルファーザーで3児のパパ。子育てインフルエンサー、タレントとして、ママパパに向けたクスッと笑える育児コンテンツをTwitter・Instagram・YouTubeで発信している。SNSの総フォロワー数は54万人以上。著書に『#ほどほど育児 失敗したっていいじゃない』(飛鳥新社)、『世界一楽しい子育てアイデア大全』(KADOKAWA)がある。

Twitter:@kinoshitas0309  Instagram: kinoshitayuki_official YouTube:@kinoshitayu-ki

――子育てはなかなか思い通りにいかないと思います。木下さんは、どのように育児を行なっていますか?

木下さん 真正面からぶつかるとお互いにフラストレーションが溜まるので、あの手この手を使って子どもの注意を逸らしながらやっています。例えば、子どものお風呂。2歳くらいになると、入りたがらないときってありますよね。そんなときは、「後ろ向きで歩くゲームをやろう」と子どもを誘います。「こうやって後ろ向きで歩けるかな?」と誘って、「隣の部屋に行けるかな?すごいすごい、上手じゃん!次は、お風呂場に行ってみよう」と誘導していくんです。こんな風にごまかし、ごまかしでやっていますね(笑)

また、余裕がないときは家事を頑張り過ぎないようにしています。スーパーのお惣菜を活用することはもちろん、お皿に移し替えずパックのまま食べることもしょっちゅうです。いくつかお惣菜をならべて「お惣菜パーティ」と呼んでいるんですよ。パーティーと名づけるとマイナスな気持ちが和らぎますし、子どもたちも喜ぶのでおすすめです。

――子どもの突進をうまく逸らすマタドールみたいですね……!木下さんのSNSの投稿からは、育児を楽しくしようとしているように見えます。心がけていることはありますか?

木下さん ありがとうございます。「子どもが何をやりたいんだろう?」と想像して、逆手にとっているだけなんですが、おもしろく見ていただけているようで嬉しいです。

ただ、育児は大変さが8割。「これだけ大変ならもう笑うしかない……」と開き直ってるだけなんですよね。SNSで発信している僕の生活はジューシーな唐揚げに見られるのですが、中身は本当にパサパサです。実際の生活を見ると「ああ、こんなもんか。皮はカリッとしているけど、中身は全然じゃん……」とガッカリすると思います(笑)。

――育児の大変さを和らげるために、楽しさを足しているんですね。木下さんのSNSを見ると、パートナーの笑い声がたくさん聞こえてきます。子育てを通じてパートナーと笑い合えるのも、大変さが和らぐポイントになりそうな気がします。

木下さん はい。その通りです。僕は子どもとのやり取りで妻を笑わせるのも好きなんです。妻に笑ってもらえるのは、とても嬉しい。子どもと自分だけの対話になると、話が通じなくむしゃくしゃすることもあるのですが、パートナーが横にいれば和らぐと感じています。

最近では、TwitterやInstagramで「奥さんの笑い声が大好きです」って声も多く届くようになったんですよ。妻の笑い声だけ録音して、NFTで販売できたりしないですかね?NFTに詳しい方、ぜひ教えてください!(笑)

――短いやり取りだけでも、木下さんの人を楽しませようとするお人柄が伝わってきます……!子育てではストレスも多いと思います。木下さんなりのストレス軽減の方法はありますか?

木下さん 子育てをしてると「あーっ、もうっ!」と声が出る瞬間がありますよね。一般的には、アンガーマネジメントで6秒待てば怒りが薄れると言いますが、子育てではそうもいきません。6秒の間に子どもたちは次のイタズラを始めます。なので、「あーっ、もうっ!」と声が出た瞬間に、無理やり「かわいい」と続けるようにしているんです。「あー、もうっ!かわいいっ!」と。事件を起こした子どもが可愛く見えるというわけではなく、無理やりかわいいと言ってる自分がおかしくて、少し笑えてきます。

――大変さをうまく自分の笑いに変換しているんですね。他にやっていることはありますか?

木下さん そうですね……。僕の場合は、メモと写真で記録に残すようにしています。子育てにおいて、喜怒哀楽の怒と哀のエピソードって出現率が高いんですよ。でも、その怒と哀のレベルが強ければ強いほど、見返したときに面白いとある日気づいたんです。それから、意識してメモを取るようになりました。イラッとしたときに、「よし、またメモが増えるぞ!」と思えると、少し嬉しくなって感情がちょっとだけ穏やかになります。

――「イラッとしたことを見返すと面白い」ということですが、どのようなことがありましたか?

木下さん 例えば、10歳の長男が1歳だった頃のエピソードがあります。スーパーで買ってきた袋をそのまま床に置いていたら、息子がよちよちやってきて、スルメイカのパックを取り出して、ワーッと破っちゃったんです。そのときは、「ええー……!何してんのよ……」とビックリしたんですが、とりあえず写真だけ撮っておきました。


で、数年経ってふとカメラロールを見返したときに、当時の写真が出てきてたんです。「懐かしい。こんなことあったな」と思ってビリビリに破れたラップを拡大したら、スルメイカ1杯100円って書かれていて。「うわー。イカ安かったなー。」と妙に楽しくなりました。こういった育児中に起こった事件の写真は、悲惨な光景というフォルダを作って保存しています。

子育ては一番楽な方法をみつけてやるのがベスト。「ほどほど」が大事

――木下さんは、子どもの目線に立ったり、1歩引いて見ることで楽しみをプラスしているように思えます。ただ、そういったことに恥ずかしさを覚えたり、苦手と感じたりする方もいます。木下さんのように楽しむコツはありますか?

木下さん いや、恥ずかしい、苦手と思う方はやらないほうがいいと思います。子育ては、子どもが100人いれば100通りの方法がありますし、親にも得意・不得意があります。自分が一番楽な方法を見つけてやっていくのがベストだと思いますよ。僕自身もいつも意識できているわけではありませんし、感情的になることもよくあります。子育ては、短期ではなくゴールの決まっていない長距離走です。無理をして頑張ると持たなくなります。ハイテンションで子どもと踊ったり遊んだりするのが苦手だったら無理にやる必要はないと思います。

「思ったことをそのまま伝える」、「弱い自分を子どもの前で出す」家族と行うコミュニケーション方法

――木下さんの育児では、「ほどほど」がキーワードになっていると思います。ただ、子どもの前で頑張ってしまうことってあると思うんですよね。最初の子育てでも、同じような気持ちで臨めていたのでしょうか?

木下さん いえいえ。最初はうまくいきませんでした。シングルファーザーで長男を育てていた頃は、毎晩のように子どもの寝顔を見ながら、「なんて駄目な父親なんだろう……」と思っていました。イヤイヤ期の子どもに怒ってばかりいて、自己嫌悪に陥ることが多かったんです。夜泣きにも悩まされて、「いつまで続くんだろう」とも思っていました。真っ暗なトンネルの中をずっと1人で走りながら、このトンネルはいつ終わるのか、そもそも終わりがないんじゃないか、と暗い気持ちを抱えていましたね。

--その暗いトンネルはいつ頃抜けられたのでしょうか?

木下さん どのあたりから抜け出せたのか、わからないんですよね。一気に明るくなったというわけではなく、徐々に明るくなって、気づいたら抜け出せていたように思います。シングルファーザー時代は、両親や姉夫婦に助けられました。育児の悩みや出来事を素直に話せたことで、気持ちが楽になったんです。つらいことを言葉に変換して表に出すっていうのは、すごく大切なことだと思いました。また、今のパートナーと出会ったことも、少しずつ明かりが見えるきっかけになりました。

――たしかに、つらさを人に話すと気持ちが楽になりますよね……。木下さんは、今のパートナーと再婚して、2人目、3人目の育児も行っています。パートナーと話す時に心がけていることはありますか?

木下さん 夫婦間で、特別に意識していることはありませんが、「パートナーは自分よりちょっとだけ大変」と思って常に接しています。パートナーが自分よりもすごく大変と思うとキツくなって続かなくなりますが、「ちょっと」であれば互いに思いやり続けられると思います。
また、些細なことも伝え合うようにしています。言葉の表現を考えたりせず、思ったことそのままです。「こういう表現したら嫌かな?」、「どうやったらくみ取ってもらえるか?」と整理しながら伝えようとするとその点で頑張りになると思うんです。伝える作業に頑張りが入ると、伝えること自体が億劫になりますよね。ありのままの言葉を投げ合って、受け止め合うようにしています。育児と同じように、無理せずに自分がありのままの状態で、楽な道を進んでいくのがうまくいくコツなのかなと思っています。

――夫婦のコミュニケーションでも、思いやりを持ちながら無理をしないことが重要になるんですね。些細なことを伝え合っているとおっしゃっていましたが、どのようなことを伝え合っているのでしょうか?

木下さん 本当になんでもです(笑)。仕事で怒られた、仕事に行きたくないなんて話もしています。パートナーはもちろん子どものいる前でもです。

――子どもの前で、仕事への素直な気持ちを出しているんですね!弱い父親を子どもの前で見せるのは、勇気がいりそうですが………。

木下さん 弱い自分を家族の前で出したくないと考える人もいますが、僕はそう思っていないんですよね。子どもが大きくなったときに、「学校に行きたくない」とか「友達と喧嘩した」とか言いにくいことを溜め込んで欲しくないという想いもあります。息子たちや娘に「こうやって言葉にして、家族に話してもいいんだ」と思ってもらえると嬉しいです。

――ちなみに、素直に言葉で表現するというのは、昔から実践されていたのでしょうか?

木下さん 昔からやってはいました。ただ、今のパートナーに出会えてからより意識するようになったと思います。パートナーはありのままの自分と一緒にいてくれているので、すごく楽だと感じているんですよね。

これは家庭でも仕事でも同じだと思っていて。無理して自分を作り上げてしまうと、ずっとその自分であり続けないといけなくなるのでキツくなります。それよりも、ありのままの自分でいて、その自分を好きでいてくれる人を大切にする方がうまくいくような気がしています。思ったことを素直に言い合えた方が、関係はいいものになりやすいんじゃないでしょうか。

――ありがとうございます。親が素直に弱さを出す環境だと子どもも悩みを相談しやすそうですね。

木下さん とは言っても、実際はわからないです。全部が全部、親には言わないと思います。この間も長男が宿題やってるときに机をちらっと見たら、消しゴムに鉛筆の芯がたくさん刺さっているのを見つけたんですよ。「これやったらダメって言ったじゃーん!!」とガックリきました。こういう風に隠し事はなにかしらあるし、これからもあると思うので、僕も全て報告しろとまでは思いません。ちなみに消しゴムに鉛筆の芯を刺すやつ、僕も子供のころやっていました(笑)。

――こういった話もパートナーと共有できるといいですよね。

木下さん「はい。夫婦で子育てをする良さって、エピソードを共有し合えるところだと思うんです。大変なエピソードは毎日いくらでも出て、ストレスはどんどん増えていきます。大変さを分かち合えると同じ立場で話をできますし、メンタル面も和らいでいきます。子育ては、頑張っても褒めてもらえないし、大変さを伝えても「当たり前だよ」と言われがちです。夫婦で取り組んで、大変さを和らげる必要はありますよね」

「夜中にクスッと笑えるものを提供したい」木下さんにとっての笑いとは?

――ここまでお話を聞かせていただいて、木下さんは「笑い」を大事にされていると感じました。木下さんにとって、「笑い」とはどのようなものなのでしょうか?

木下さん 自分にとって、笑いとは救いだと思っています。子どものころから、お笑いは好きでしたし、育児をする前からつらいときの自分を救い続けてくれました。明確な出来事は思い出せませんが、笑いで気持ちが助けられた、上向きになれたってのは何度も経験しています。今は家族で笑っている時間が一番幸せです。

――家族で笑い合えると楽しいですよね。木下さんは、クスッと笑える動画や文章を投稿し続けています。苦しんでいる人に笑いを届けたいという想いもあるのでしょうか?

木下さん そうですね。僕自身、笑っている間が一番幸せなのはありますが、子育てで孤独感を抱いている人がクスッと笑えて少しでもつらさを和らげてくれたらと思っています。自分が子育てで辛かったとき、子どもを2時間抱っこして寝かしつけた後にSNSを開いたら、友達がビールジョッキ片手に楽しそうに騒いでいる写真が出てきたんですよ。それを見てすごく孤独感に苛まれたんですよね。なので、同じように子育てで悩み苦しんでいる人が夜中にSNSを開いたときに、クスッと笑えるものを提供したいと思っています。これからもやり続けたいですね。

――ありがとうございました。最後に、子育てをしているママ・パパにひと言お願いします。

木下さん 子育てでうまくいかないことがあっても、自分を責めすぎないようにしてほしいです。自分を責めるということは、それだけ子どもに向き合っている証だと思います。「子どもに強く怒りすぎてしまった………。自分は駄目な親だ」と思ってしまった時は、そう思えただけいい親なんだと自分に言い聞かせればいいと思います。

子どもが「これで遊びたい」と言ったのに余裕がなくて遊ばせてあげられなかったときは、時間があるときに遊んであげればいいと思います。そして、反省するときも「絶対にやる」とハードルを上げすぎず、「できたらいいな」くらいに思えたらいいと思います。僕にも3人の子どもがいて、まだまだ子育てのトンネルの中です。頑張らず、ほどほどに育児をやっていきましょう!

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文・構成/中たんぺい

構成/HugKum編集部

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