ずばり「おもちを食べると母乳がつまる」ってウソ・ホント?
おもちと母乳の出方の関係性について、お話を聞いたのは、授乳相談を中心に幅広く産後のママと赤ちゃんをケアする「すみれ助産院」の助産師・坂田陽子先生です。
お話を聞いたのは…
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※以下「 」内、助産師・坂田陽子先生の談話
Q. 母乳をあげていると、乳腺炎になっちゃうからおもち食べられないね」と先輩ママから聞きました。本当ですか?
「『おもちで母乳が詰まってしまった』という相談も実際にはありますが、年末年始の生活リズムの崩れ、授乳間隔が空いてしまうことなど、他の要因の影響が考えられます。
医学的には、おもちと乳腺炎の直接的な関連はありません。おもちを食べたからと言って、母乳の出が良くなるという根拠も実はないのです。
人によっては、特定の食べ物を食べると胸の張りを感じる体質の方もいるかもしれませんが、基本的には食事上の制限をする必要はありませんよ」
―なるほど!では、授乳中でも、おもちが食べても大丈夫ですよね!? 実は、私の祖母からは、むしろたくさん食べるようにと言われていたのです!
Q. 祖母からは、授乳中はたくさんおもちを食べるよう勧められました。その点はいかがでしょうか。
「昔はもっと質素な食生活で、おもちやお団子はご馳走でした。そのため、産後に食べるよう言われていましたが、今は高カロリーな食事が多いので、おもちを積極的に食べる必要はありません。親世代や祖父母世代とは、子育ての常識も変わってきています。アドバイスを参考にしつつも、新しい情報や根拠を確認することも重要ですね」
―そういうことですね!では、授乳中の人が、おもちを食べる時に気を付けたほうがよいことってあるのでしょうか。
Q. 授乳中におもちを食べる時の注意点はありますか?
「おもちには、糖質が多く含まれています。糖質過多は乳腺炎に限らず体調不良を起こす引き金にもなりうるため、食べ過ぎさえ気をつければ、特に食べ方や時間帯などは影響しません。
1日おもちばかり食べてしまうということにはならないよう、食べる量を調整し健康的でバランスの良い食事を心がけてください。おもちを食べないよう無理をして我慢する必要はないので、安心してくださいね」
―おもちは食べてOK!と知ってホッとしました。では、授乳中に食べない方がいいものってあるのでしょうか?
Q. 安定した母乳を出すために、気をつけた方がいい食べ物はありますか?
「医学的に母乳の出と関連のある食べ物はありません。『和食がいい』という情報も耳にしますが、和食にこだわる必要はなく、バランスよく適量を食べる食事を心がけてください。ママが健康でいることが、赤ちゃんに美味しい母乳をあげられるコツです」
-どんな食べ物も、食べ過ぎはNGってことですね。
Q. 最後に、安定した母乳の出のために、おすすめの年末年始の過ごし方も教えてください
「実家に帰省したり、親戚が集まったりなど、年末年始はいつもと違うスケジュールで過ごす方が大半でしょう。その中でも、できるだけ授乳間隔を空けず、授乳のリズムを崩さないように過ごすのがポイントです。
そのためには、周りにも『授乳の時は抜けるね』など事前に声をかけておくのもおすすめ。赤ちゃんが欲しがったらいつでもあげられるよう、授乳ケープや授乳のできるお部屋の用意など、環境を整えておきましょう。
お正月は助産院もお休みで受診しにくくなります。ママが疲れやストレスを溜めすぎないように休んだり睡眠をとって、ママ自身の体を守ってくださいね」
-情報は鵜呑みにせず、調べることが大事ということも改めて分かりました。今日はありがとうございました。
母乳が、詰まったらどうなるの?
母乳が十分に排出されないと、乳房の中に長い間溜まり、炎症が起こったり乳管や乳腺が詰まることがあります。
母乳が詰まるメカニズム
「母乳が作られる量と赤ちゃんの飲める量に差があると、赤ちゃんが飲みきれず残った母乳が乳管や乳腺に溜まります。
まだ上手に母乳を飲むことができない新生児や元々の体質として母乳の出が多すぎる(分泌過多)ママの場合は乳腺炎になりやすい傾向があります。
原因としては、『授乳回数が少ない』『まだ赤ちゃんが飲みたがっているのに時間で切り上げている』『◯時間経たないと授乳しないと決めている』場合などがあります。赤ちゃんが乳房に深く吸い付いていなかったり、姿勢が不適切な場合にも起こりやすいです。
また、意外と知られていない原因が、胸まわりのきつい下着や長時間の抱っこ紐による圧迫。母乳の流れが妨げられてしまうので、授乳期間中は胸部の締めつけも気にしてみてくださいね。
乳腺炎の症状は
「乳房に腫れや赤みが出てきたり、熱を帯びてきます。母乳が溜まっている部分がしこりのように硬くなったり、押すと痛みを伴うこともあります。ひどくなると膿が溜まり皮膚を切開する手術が必要になる場合も。
乳首に傷があるとそこから細菌に感染し、化膿して汚い色の母乳が出てきたり、高熱、インフルエンザのような悪寒や体の痛みが出てきたりすることもあります」
乳腺炎にならないようにする対策は
「赤ちゃんの抱き方や姿勢、乳首への吸い付き方に不安があれば、一度助産院や母乳外来に相談してみましょう。ママや赤ちゃんにとって適切な回数や間隔のアドバイスを受けることもできますよ。
授乳に慣れてきたママであれば、適切な授乳時間を確保することと、授乳間隔が開きすぎないように気をつけてくださいね」
食事と授乳の関係には医学的な根拠はない
「すみれ助産院」の助産師・坂田陽子先生は、食事と授乳の関係には医学的な根拠はないと教えてくれました。噂に惑わされず、授乳のリズムや食事のバランス、睡眠を整えることが大事、イベントが盛りだくさんの年末年始、健康第一に、楽しく過ごしてくださいね。
文・構成/吉田萌美