レスリング金メダリスト登坂絵莉さんと総合格闘家 倉本一真さん夫妻のリアル子育て。子どもがのびのび育つには「見守り」が大切

元女子レスリング日本代表の登坂絵莉さんと総合格闘家として活躍している倉本一真さんご夫婦に、子育てについてインタビュー。アスリートならではの、子育て論やご自身の競技との向き合い方などお話をお伺いしました。

アスリート夫婦に聞く!子育て&競技について

昨年(2021年)8月に第一子を出産した元女子レスリング日本代表で金メダリストの登坂絵莉さん。ご主人は、元レスリング選手で現在総合格闘家として活躍している倉本一真さんです。アスリート夫婦が出産を経て変わったこと、子育て論や選手時代の競技の向き合い方とこれからについて、お話をお伺いしました。

インタビューしたのは・・・

登坂絵莉さん

リオデジャネイロオリンピック女子レスリング48kg級金メダリスト。2022年に現役を引退。
プライベートでは2020年に結婚し、2021年に男の子を出産。
現在はレスリングの普及活動や講演活動に励み、女性アスリートのセカンドキャリアの選択肢を広げるべく、様々な新しい活動に積極的に挑戦している。

倉本一真さん

総合格闘家、元レスリング選手。
小・中学校で空手、中学校で柔道とレスリングに取り組み、レスリングで全日本レスリング選手権3連覇、2013年世界選手権では7位入賞。2017年に総合格闘技へ転向し、総合戦績10勝3敗。
現在はRIZINで活躍中。

登坂絵莉さん流子育て&競技との関わり方

出産を経て変わったこと・子育てについて

―出産を経て子育てをしていく中で変わったことはありますか?
登坂さん:すごく時間に余裕を持つようになりましたね。選手時代は、1分でも多く練習をしたかったので新幹線を乗るにしてもギリギリに行動したりして(笑)。息子が生まれてからは、おむつ替えだったり、いつなにがおきるのかわからないので、30分くらい余裕をもって行動するようになりました。

気持ちの変化としては、穏やかになりました。今までは自分のことに必死で常にせかせかしている感じでしたが、子どもが生まれてからは一緒に過ごす時間も愛おしいですし、予期せぬことの連続なので何が起きても動じなくなってきました。選手時代は、想定外のことが起こると不安になっていましたが、そういう小さいことを気にすることがなくなったというのもありますね。

―子育てで大切にしていることを教えてください
登坂さん:選手時代に、ずっとご飯を作ってくださっていた寮母さんに出産の報告をした時に、「子どもって思ったよりなんでもできるし、危ないなって思っていることでも難なくできたりするから、あんまり過保護になりすぎないほうが可能性をつぶさないよ」と言われたことがすごく心に残っていて、それから息子を子どもとしてではなく、一人の人として考えるようにしています。

―現在、子育てで気になっていること、困っていることはありますか?
登坂さん:今は、ごはん中にずっと座っていられないことが一番の悩みです。友達に相談しても、みんなそうだよと言われますが、遊びたいが優先してごはんを食べなくなってしまうので、好きな動画を見せながら食べさせたりしていますが、このやり方はいいのかな?って不安になってきたりして・・・。

不安なことがあれば子育てサイトで調べたりしていますが、心配になりすぎないように気を付けています。私は、すごく心配性なのですが、夫は真逆で動じないタイプなので、「大丈夫だよ」と声を掛けてくれます。いいバランスだなと思います。

―仕事と子育ての両立はどのようにしていますか?
登坂さん:仕事が入った時は夫が空いている時間であれば息子をみてもらっています。お父さんのことが大好きなので、安心して任せられます。

登坂さんが子どもの頃について  両親のサポートは?関係は?

―レスリングを始めたきっかけを教えてください
登坂さん:競技を始めたきっかけは、父がレスリングをやっていて高校時代に兄にレスリングやらせたくて練習場に連れて行った時に、私も遊びでついていき、レスリングの準備段階であるマット運動がかっこいいと思って、自分からやりたい!とお願いして始めました。

―小学生のころ好きだった遊びや習い事はありますか?
登坂さん:活発な子どもだったので、放課後は男の子たちと一緒に球技やドッジボールなどをして遊んでいました。習い事は、レスリング以外に夏期講習で水泳と陸上、テニスも習っていました。いろいろやりたいと思って、習い事を始めるのですが結局なかなか続かなくて、レスリングだけはずっと続きましたね。

―親御さんはどのように登坂さんを応援、サポートしてくれていたのでしょうか?
登坂さん:レスリングの試合に行く時はいつも家族で行動して全国をまわっていました。私が県外に遠征に行きたい!と言うと父が連れて行ってくれたのですが、ホテル代や交通費が掛かるので、父と車中泊して練習に行った記憶がすごく残ってます。

競技をするうえで、私は両親に強制されたことがなくて、やりたいならやればいいし、やりたくないならやらなくていいというような感じでした。家族で行動していたので、勝つと喜んでくれるのがやっぱり嬉しくて、それで親を喜ばせたいという気持ちが大きかったですね。

―競技に挑戦するお子さんを支える親御さんへアドバイスがあればお願いします
登坂さん:私が試合で負けて親の元に戻っても、二人とも本当によく頑張ったって迎えてくれるんですよ。それがあったから、すごく安心して試合に挑み続けられました。そこが私が育ってきた環境の中で一番大きかったことだと思います。頑張っていることを素直に認めてもらえるということは、子どもにとって嬉しいことですよね。

娘が絶対世界チャンピオンになれる!って親バカなんですけど、ずっと信じて言い続けてきてくれたことに感謝しています。信じてくれたことで、親バカで済ませたくないという想いがあり、原動力になりました。

―登坂さんの今後の活動について教えてください
登坂さん:レスリングって踏み込みにくいイメージがあるかと思いますが、マットさえあればどこでもできますし、対人競技なので予期せぬ動きもある中で対応していくので、運動能力向上におすすめのスポーツです。これからは、皆さんにもっとレスリングを身近に感じてもらえるような活動をしたいと思っています。

倉本一真さんがパパになって変わったことは!?

―パパになって変わったことはありますか?
倉本さん:変わったことはあんまりなくて、今までの生活に息子が自然に入ってきた感じです。最近は、歩けるようにもなって一緒に遊べることも増えて、楽しみがどんどん増えていきますね。

―子育てで分担してることはありますか?
倉本さん:妻がほとんどやってくれていて、息子の爪切りは僕の担当ですね。もうすこし家事や育児を僕ができたら妻の負担が減らせるかなと思いますね。

―子育てで気になることはありますか?
倉本さん:動けるようになったので、当たり前だけど見ておかないと心配ですね。本人は立てるようになってそれが嬉しいのに、ずっと座っとけっていうのもつらいと思うので、自由に動かしてあげたいですけどね。最近は甘えん坊になって、ちょっと前はパパとママどっちでもよかったのに、ママがいなくなると泣くようになりました。完全に見えなくなると諦めるのが早くて、僕で大丈夫なんですけど、イヤイヤが出てきた気はしますね。

―これからお子さんと一緒に挑戦したいことはありますか?
倉本さん:ジムにマットがあるので、一緒に練習に行ってマット運動など遊びから始めたいですね。あとは外で、自転車やスケボーなどいろいろ挑戦させてみたいです。

倉本さんの学生時代 競技との向き合い方、親御さんとの関係 そしてこれから

―競技を始めたきっかけを教えてください
倉本さん:小さい頃からレンジャーシリーズが好きで、戦いごっこ遊びをよくやっていました。強いということが、かっこいいという憧れがあって、小学校のとき、たまたま空手教室のチラシをもらい、そこからずっと格闘技をやっています。
中学の部活で柔道を始めたのですが、顧問の先生がレスリングの選手で、先生の母校のレスリングの練習に連れて行ってもらったのをきっかけに、レスリングを始めました。

―ご家族のサポートで印象に残っていることはありますか?
倉本さん:とにかく両親は見守ってくれていましたね。好きなことやっていいよ、行ってこいという感じでやりたいことに関しては反対されたことないですね。中学くらいから一回も怒られていないです。父は特に自由にやらせてくれた。試合の結果も特に気にしていない感じで何にもない。あまりにも反応がないので、「俺、今日全国優勝したんやで!」って怒ったことがあります(笑)。

後から両親に聞いた話だと、僕が小学生の時に空手の大会で恥ずかしくて、「見にこなくていい」と言ったことがあったらしくて、それから親は意地をはって応援しに来なかったみたいですね。僕が社会人でレスリングをやっていたときに、なんで応援に来ないのか聞いたらそういうことがあったと言われて、じゃあ全日本選手権を見に来てと伝えてから、毎年レスリングの全日本選手権は東京までわざわざ応援に来てくれてました。
実家で新聞の切り抜きとかネットニュースとかプリントアウトして全部集めてくれているのを見て、ずっと応援してくれていたことを知りました。

―これからの目標を教えてください
倉本さん:子どもに勝ってる姿を見せたいですね。親の背を見て子どもは育つじゃないですけど、かっこいいパパでいたい。「RIZIN」など日本で有名な団体でやらせてもらっているので、ベルトを取って自慢のおとーちゃんになりたいと思ってます。

家族のサポートがあるから頑張れる

お二人のご両親の育て方で共通していたことは、子どもが挑戦したいと思ったことは全てやらせてあげて、結果がどうであれ応援し続けることでした。近くで信じてサポートしてくれる人がいたからこそ、お二人の活躍があるのですね。伸び伸びと子育てを楽しんでいる姿が印象的だった登坂さんと倉本さんのこれからの活躍、お子さんの成長が楽しみです!

撮影/黒石あみ 取材・文/やまさきけいこ

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