7家族が暮らす東京・練馬のユニークな賃貸住宅「青豆ハウス」の“つながりのある暮らし”に潜入!

東京・練馬の「青豆ハウス」は、“人とのつながりを大切にしたい”という価値観を持つ家族が集まったユニークな賃貸住宅です。住人同士で共用の中庭にピザ窯を作ったり、目の前の区民農園を借りて野菜を育てたり、夏祭りを開いて近隣の住民を招いたり…と、何やら楽しそうな暮らしぶりが垣間見られますが、一体どんな人がここに住み、日々どんな生活を送っているのでしょうか。ここの大家であり、住人でもある青木純さんに話を聞きました。

「青豆ハウス」の特徴を一言で表すなら、“長屋の現代版”であると青木さん。

「敷地内には3階建てのメゾネットが8住戸、2棟ずつが絡まり合うようにシンメトリーに配置されています。テラスでつながった2階部分に各戸の玄関があり、その奥はキッチンとリビングダイニング。朝昼晩の食事時に窓越しにお互いの生活感を感じられるような、目が合って手を振りたくなるような、コミュニケーションが自然に生まれる距離感を意識したつくりになっています」

現在、青豆ハウスに住んでいるのは、青木家を含めた7家族。年々子どもが増え、賑やかになってきているのだそうです。

「雛祭りを一緒に祝ったり、目の前の区民農園を借りてみんなで野菜を育てたり、コロナ禍で保育園や学校が休みになった時には、時間のある大人が子どもたちを集めて敷地内の外の空間で遊ぶ光景も見られました。青豆ハウスではそういうことが住民の発意で自然に起こっていて、子どもたちは、たくさんの大人に見守られながら兄弟姉妹のように育っています」

それぞれに自立した生活を送りつつも、お互いが心地よいと感じる距離感の中で、一緒に豊かな日常を育む。青豆ハウスは、単なる集合住宅ではなく、みんなで育てる共同住宅なのだと青木さんは話します。

「青豆ハウスのみんなの家訓は、“無理せず気負わず楽しもう”。ですから、ここでの暮らしにルールはなく、何事も強制はしません。ただ、住人同士の対話は大事にし、誰もがありのままでいられることを大切にしています。その、温度感を整えるのが大家である僕の役割。青豆ハウスで積み重ねる時間の中で、住人同士の関係性も育っていくといいなと思っています」

 

  • オリジナルの夏祭りや毎朝のミニ黒板メッセージで、ご近所と交流

青豆ハウスの住人たちは、“地域とのつながり”も大事にしています。彼らに共通しているのはこんな思い。

「自分たちの暮らしは自分たちで楽しくできるし、そのためには、地域も楽しくなる必要がある。地域との良い関係性を育むことは、自分たちの幸せのためにも、いざという時のためにも、次の世代にとってもすごく大事なことだと思うのです」

そこで青豆ハウスでは、毎年、近隣の住民を招いて、夏祭りを開催しています。

「流しそうめんをしたり、ご近所出身の落語家さんを呼んで青空寄席を開いたり、子どもたちの原体験になるようなことを企画して、その楽しさをご近所のみなさんと分かち合っています。近年は、地域の方々がこのお祭りの継続を募金で応援してくれたり、僕らの思いに共感してくれた近隣の飲食店の方がお祭りに参加してくれたりも。また、そうした方々と、地域の未来について話す機会も増えてきました。回を重ねるごとに、地域との関係性が育ってきているのを実感しています」


また、別の角度ではこんな取り組みも。

「青豆ハウスは、地域との境界線を低く緩くするという考えの下、公道と敷地を隔てる塀を設けていません。そのため、道に面した庭の土が掘り返されてしまったり、缶などのゴミが敷地内にポイ捨てされることがよくありました。そこで僕らは、土を掘り返されないように花をたくさん植え、さらに、道を通る方々に向けたメッセージを小さな黒板に書いて、毎朝日替わりで掲げてみたのです。
すると、ご近所の方が散歩がてらこの黒板を見に来てくれるようになり、常に人の目があるということで、結果としてごみのポイ捨ても減りました。また、この黒板の取り組みに、『毎朝楽しみにしている』というファンレターが届いたりと、うれしい波及効果も生まれています」

こうした環境の中で育っている青豆ハウスの子どもたちは、敷地内外のゴミ拾いや掃き掃除を自ら進んでやるようになっていると青木さん。

「そういうことって、子どもが自然にやりたくなる環境づくりが大事だと思うのです。ご近所をどれだけ意識するかということもその一つ。とはいえ、1人ではなかなかできることではない。だからこそ、複数の大人たちで手を取り合って責任を果たしていくべきなのではないかと思っています。いずれ僕らのバトンを受け継ぐ子どもたちには、ゴミが落ちていても拾わない大人にはなってほしくないですからね」

青豆ハウスから、地域の未来をつくる取り組みを

さらに青豆ハウスでは、コロナ禍を機に、8住戸のうちの1戸をシェアルームにして、新たな取り組みを始めたそうです。

「3階をみんなの子ども部屋に、2階を住人みんなの共用リビングに、そして1階には“街のキオスク”という位置づけで、「まめスク」という名の、街とシェアする空間を設けました

このまめスクも、住人たちの声から生まれたアイデアなのだと青木さん。

「このスペースで私設図書館や写真展をやってみたり、子どもデイをやってもいい。夏祭りのような大きなイベント以外に、地域と日常的につながれるようなことができたらいいなと思っています」

また、住人以外の人がこうした取り組みに参画できる、“シェアビレッジ”というサービスも始めているそう。

「まめスクを、“青豆ハウスの日常と街の日常の湯加減を整える場所”にしたいと思っているのです。地域の人も参画可能な余白、関わり合いを通じて、地域との距離をもっと近づけられないかなと。今は、近所の大学生が、番台として入ってくれています」

“住む人と集まる人が一緒に育てる共同住宅”というコンセプトの幹が、どんどん太くなっている青豆ハウス。青木さんは、大家という立場から、今後の展望をこう語ります。

地域の価値を100年後に送り届けられるよう、青豆ハウスに住む人、集まる人と共に、地域の未来をつくる取り組みをどんどん広げていきたい。またそれを、子どもたちにも受け継いでいきたいです。そのためにも、青豆ハウスのような住宅が、もっともっと増えていくといいなと思っています」

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文・構成/鈴木友紀

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