妻が突然ステージ4の癌と宣告された日、余命は1ヶ月……【シングルファーザー奮闘記】vol.1

癌が見つかり、約1ヶ月で天国へ旅立った妻。僕は、残された3歳の娘を男手一つで育てることになりました。現在、娘は中学3年生になり、僕もようやくこの経験を振り返ることができるように。そこで、誰かの勇気や役に立てればと【シングルファーザー奮闘記】をつづります。1話は、約1ヶ月で他界してしまった妻の闘病時の話を……。

「最近、お腹が痛いし、なんか調子悪いんだよね」

妻が緊急搬送される約一週間前のこと。

「最近、お腹が痛いし、なんか調子悪いんだよね」

と妻が言い出しました。

「じゃあ、病院に行こうよ?」

と勧めると……。

「実は、先月、病院に行って診察してもらったの。そうしたら先生から特に問題ないって言われたんだよね」

1年前と半年前も病院の結果は「問題なし」

妻は以前から、調子が悪いと早めに病院に行く人だったので、1年前と半年前に調子が悪かった際にも同じ検査を受けていました。この時の結果も両方とも「問題なし」。

評判の良い病院だから

妻は信頼している病院のかかりつけ医だったので、今回も調子は悪いが問題などあるはずがないと思っていたのでしょう。

「それに、その時に精密検査もしてもらっているから、その結果を待つわ。あと2週間くらいで届くはずなの。今行っても診てもらう内容は変わらないだろうしね」

とニッコリ笑う妻。

調子悪いと言いながらも、掃除・洗濯・料理などの家事及び、娘を自転車で幼稚園へ送迎、それらをいつもと変わらずやってくれました。

また、その病院の評判も良かったので、私も丈夫なのだろうと思ってしまいました

渋る妻を病院へ連れて行くと

ところが、ある日、職場から妻へ電話をすると、明らかに調子が悪そうな声。

僕は仕事を調整して、急いで家へ帰りました。

「とりあえず緊急で病院へ行こう。診察内容が同じだったとしても、痛み止めかなんかで今の痛みが和らげればいいじゃないか!」

と妻を病院へ連れて行きました。

念のため、入院に

19時位に病院へ着き、妻は割と早く診察に呼ばれましたが、なかなか戻ってきません。

ようやく21時あたりに看護婦さんと一緒に妻が戻ってきました。

妻は家にいた時のような辛い顔ではなく、笑顔を見せてくれていましたが、看護婦さんに

「この後に痛くなるかもしれないので、念のために奥さんは今夜病院に泊まってもらいます」

と言われました。

夜、医師から電話が

僕と娘は、妻と離れるのを惜しみながら、2人だけで帰宅しました。

帰宅すると娘は

「どうして3人で帰って来られないの? 私はママとパパと3人で寝たい!」

と言いながら大泣き。

僕は一生懸命に娘をなだめていたら、突然電話が鳴り響きました。

その電話は、先程まででいた病院から。

「明日の朝、お話があるので奥さんの親御さんと一緒に病院へ来てください。奥さんは病室にいますが、まずは先生のところへ直接来てください」

「分かりました」

僕は「何の話ですか?」と聞こうとしましたが、妻のお母さんへ連絡し明朝に病院へ行くことにしました。今振り返ると、この時は悪い予感がして、怖すぎて何も聞けなかったのだと思います。

ステージ4の癌が見つかる

朝から娘を幼稚園へ送迎し、妻のお母さんと合流し病院へ向かうと、先生は落ち着いた様子で、妻の容態の説明を始めました。

耳を疑いたくなる説明でしたが、僕は最後まで黙って聴きました。

診断結果は「大腸癌」

しかも他の臓器へも転移していて、妻の癌は「ステージ4」とのこと。隣に座っていた妻のお母さんは泣いていましたが、僕は泣くことも感情的になることもありませんでした。

先生へ何かを伺うこともしませんでした。いや、しなかったというより、頭の中が真っ白になり、感情と思考が止まってしまって何も出来なかったのでしょうね。

妻へ癌であることを伝えるべきか?

そんな中、先生は私たちに非常に難しい質問をしてきました。

「手術の前に奥さんへ癌のことを全て伝えますか?」

というのです。

妻のお母さんと顔を見合わせましたが、お母さんは僕に決めて欲しいと感じたので、

「今すぐには伝えないで欲しい。良いタイミングが来た時が良いと思います」

と答えると、隣にいたお母さんは大きく頷きながら納得していました。

それを確認した先生も安心した様子で、

「それでは、奥さんの手術は検査のための手術ということで進めて行きますね。その後の治療については、手術後にまた考えていきましょう」

と言い、その日の話は終わりました。

僕とお母さんは、妻の病室へ向かうために、平静を装うために何度も気持ちを落ち着かせようとしていたのを今でも覚えています。

セカンドオピニオンを求めなかった後悔

気持ちが少しずつ落ち着いてきた頃、我々はある疑問が浮かびました。

「(妻の)かかりつけの病院で1年前と半年前、そして先月にも受けた検査で、なぜ何も分からなかったのだろうか?」ということ。

後で分かったのですが、かかりつけの病院での検査も癌が見つかった病院と同じ検査内容だったというのです。

それゆえ、癌を発見した病院の先生も以前の検査でなぜ発見されなかったのか不思議がっていました。

病院に対する怒りも

やるせなさというか、かかりつけの病院に対する怒りというか、そんな感情が入り交じり、何とも言えない気持ちで一杯になったこともあります。

「1年前の検査で発見されていれば、まだ十分治る可能性がある癌だったのでは……」などと考えるのは、その時だけではなく今でもあります。

その病院を訴たえるよう助言してくれた方もいました。でも、これはどうしようもないんですよね。

間違った治療ではなく、発見できなかったということだけですから。

極端な例えで言えば、健康診断で悪い病気が見つからなかったのと同じことなのです。

だからこそ、僕は癌が検査で見つからなかったことではなく、セカンドオピニオンを求めに行かせなかったことに後悔をしています。はじめの検査が妻の信頼していた病院での結果だったとしても。

原因不明の体調不良が続くときは

今、僕からいえることは、原因不明の体調不良が続くときは、一つの病院だけでは判断せずに病院を変えて調べてほしいということです。

いわゆる、セカンドオピニオン。当たり前かもしれませんが、これは本当に大事なことだと身に沁みました。

次回は、妻のかかりつけの病院の先生に書いた手紙やステージ4の癌を妻にどう伝えたかをお伝えします。

続きはこちら>>「自分が癌であることを知った妻…抗がん剤治療から旅立ちまで【シングルファーザー奮闘記】vol.2」

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。すべての親子が幸せになりますように!

文・構成/ひまわりひであき ※写真はイメージです。

編集部おすすめ

関連記事