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風邪などの病気が原因でない「一次性頭痛」は、小6年以降になると女児に多い傾向が
頭痛には体や脳に原因となる病気がないのに、慢性的に頭痛を繰り返す「一次性頭痛」と、脳腫瘍や副鼻腔炎、風邪、起立性調節障害などの病気によって起こる「二次性頭痛」に分けられます。二次性頭痛は、原因となる病気が治れば頭痛はおさまります。
しかし一次性頭痛は、処方薬による治療と生活改善などが必要になります。小学校低・中学年ぐらいまでは一次性頭痛の発症に男女差はありませんが、6年生以降になるとホルモンの影響で女児のほうが2~3倍ぐらい多くなることがわかっています。
子どもの一次性頭痛で多いのは「緊張型頭痛」
子どもの主な一次性頭痛は緊張型頭痛と片頭痛です。最も多いのは緊張型頭痛で、特徴は次の通りです。
- 1) 頭の両側が締め付けられるように痛むが、痛みの程度は軽度。
- 2)痛みの持続は30分程度~数日間と幅がある。なかには1週間ぐらい痛みが続くこともある。
- 3)頭が痛くても、体を動かすことはできる。
- 4)吐き気・嘔吐はほぼない。
- 5)光や音は、あまり気にならない。
緊張型頭痛は、痛みがそれほど強くないためガマンでき、ママ・パパに「頭が痛い」と言わない子もいます。
「片頭痛」は、動けないほど痛いのが特徴
子どもの片頭痛の特徴は、次の通りです。
- 1)頭の両側やおでこが痛み、痛みの程度は中程度以上。
- 2)痛みはだんだん強くなり、動くと悪化する。横になって休まないといけないぐらい痛むこともある。
- 3)痛みのピークは1~2時間ぐらいでおさまることが多い。
- 4)吐き気・嘔吐を伴いやすい。
- 5)まぶしい光や大きな音など、光や音によって悪化しやすい。
- 片頭痛は動くと痛みが悪化しやすいため、座り込んで動かなかったり、寝込んでしまう子が多いです。
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「頭が痛い」と言うときは、念のためかかりつけの小児科へ
- 子どもが「頭が痛い」と訴えるのは、一般的には4~5歳ごろからです。3歳以下でも頭痛はありますが、ママ・パパに「頭が痛い」と言うよりも、急に話さなくなったり、食欲がなくなったり、元気に動き回らなくなったりするなど様子がおかしくなることのほうが多いです。もし子どもが「頭が痛い」と言うときは、念のためかかりつけの小児科を受診しましょう。痛みがおさまってから受診しても構いません。
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至急、受診が必要な頭痛のサイン
- ただし「頭が痛い」と言って、次の様子があるときは至急、受診してください。
- □けいれんがある
- □手足の動きがおかしい
- □ふらつく
- □いつもより言葉が出にくい・言葉が出ない
- □顔色が悪い
- □吐き気・嘔吐がある
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ママ・パパに慢性的な頭痛があると、子どもも頭痛持ちになることが
- ママ・パパに慢性的な頭痛があると、子どもも慢性的な頭痛を発症することがあります。なかには自身の経験から子どもに「少し横になっていると頭痛はおさまるから、ベッドで寝ていなさい」などと言うママ・パパもいますが、自己判断はNGです。
頭痛のたびに、市販の鎮痛薬を服用し続けるのは避けて
- またママ・パパの自己判断で、市販の鎮痛薬を服用させ続けるのもやめましょう。頭が痛くなるとすぐに市販の鎮痛薬を服用する習慣がつくと、かえって頭痛が慢性化することがあります。
- 子どもが「頭が痛い」と言うときは、一度、かかりつけの小児科を受診してください。頭痛は早期に適切な治療をすると、改善しやすいことがわかっています。
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子どもの頭痛の治療には、生活改善が必要
- 小児の頭痛薬は、イブプロフェンやアセトアミノフェンの成分が入った薬が処方されることが多いです。医師の指示に従って服用しましょう。また薬による治療だけでなく、生活改善が要になります。主な生活改善のポイントは、次の通りです。
- 1)適度に運動する
- 2)3食しっかり食べる
- 3)寝不足・寝過ぎを防ぐ(睡眠時間の目安は、小学生は約9時間)
- 4)低血糖や脱水にならないようにおやつを食べ、水分をしっかり摂るようにする
- 5)長時間の読書やスマホ・ゲームの画面を見続けるなどして、同じ姿勢をとり続けない
- 6)就寝1時間前にはゲームやスマホはやめる
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光、音、ストレスなど頭痛の原因を見つけて、取り除く工夫を
- 一次性頭痛には、痛みを誘発する原因があります。原因は1つとは限らず、いくつかの原因が重なって頭痛を誘発することもあります。主な原因は光、音、ストレス、緊張、天候の変化、温度差、月経、睡眠の質などです。原因は子どもによって異なるので、どのようなときに頭痛が起こりやすいか、症状が悪化しやすいかチェックして、痛みを誘発する原因をできるだけ取り除いてあげましょう。天候など変えられないものもありますが、室内に直射日光が入らないようにレースのカーテンを閉めたり、睡眠不足や寝過ぎないように注意することは、家庭でもできると思います。
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ランドセルの重みが原因で、頭痛を発症する子も
- また頭痛は、子どもでも首や肩まわりの血行不良から起こることもあります。なかにはランドセルの重みで血液循環が悪くなり、頭痛を発症する子もいます。そのため程度な運動を日課にしましょう。体を冷やさないことも大切です。
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「本当に痛いの?」と思っても、頭ごなしに否定するのはNG
- 子どもは一度、頭痛を経験すると不安感から、頻繁に「頭が痛い」と言う子もいます。なかには毎日のように「頭が痛い」と訴える子もいます。そのようなときは子どもの様子をよく見てください。「頭が痛い」と言っても、何かに夢中になっているうちに痛みを忘れているようならば気にしなくて大丈夫です。ママ・パパも「学校や塾を休みたくて、頭が痛いと言っているのでは?」と疑うこともあるかもしれませんが、痛みは本人にしかわかりません。頭ごなしに否定はしないでください。子どもへの対応に困ったときは、かかりつけの小児科医に相談しましょう。
- 取材・構成/麻生珠恵
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山中岳(やまなか・がく)|東京医科大学病院 小児科・思春期科 主任教授専門は、けいれん性疾患や頭痛などの小児神経疾患。日本小児科学会認定 小児科専門医・指導医、日本小児神経学会専門医・指導医ほか。代々木上原こどもクリニック(東京都渋谷区)の頭痛外来も担当する。