子供がかかりやすい中耳炎。実は2種類あり、「急性中耳炎」か「滲出性中耳炎」かによって対処法や治療が異なります。子供の症状にも差があるため、見極めることが重要。東京都八王子市・金井内科医院の金井正樹先生に伺いました。
子供の中耳炎、種類はどんなものがある?
人の耳は、耳の穴に近い側から「外耳」「中耳」「内耳」という3つの部位に分けられます。中耳の病気である中耳炎には、「急性中耳炎」と「滲出性中耳炎」の2種類があります。
かぜの後などに起こる痛みの強い 「急性中耳炎」
「急性中耳炎」の原因
子どもに多い急性中耳炎のほとんどは、かぜをひいた後に見られます。中耳の粘膜がウイルスや細菌などに感染し、炎症を起こすことが原因です。中耳の奥は、「耳管」という管で鼻やのどとつながっていて、子どもの場合、大人に比べて耳管が太く、短くなっているため、鼻やのどについたかぜなどのウイルスが、耳管を通って中耳にまで入り込んでしまいやすいのです。
子供の中耳炎の際の「熱」や「痛み」にはどう対処すればいい?
急性中耳炎が起こると、高熱が出て、耳が強く痛みます。さらに、黄色っぽくて粘りけのある「耳だれ」が出ることもあります。耳だれは、中耳にたまった膿が、自然に鼓膜を破って出てくるもの。耳だれが出てしまえば痛みは治まり、熱も下がります。
中耳炎の症状に気付いたら早めに病院へ
中耳炎かな? と思われる症状に気づいたら、早めに耳鼻科か小児科を受診します。軽症なら抗生剤の飲み薬で治すことができます。重症の場合は、飲み薬に加えて、鼓膜に穴を開けて膿を出す治療も行うことがあります。穴はとても小さなものなので、鼓膜は2~3日で再生し、聴力に影響はありません。また、穴を開けるときの痛みも、一瞬チクッとする程度です。 家庭では、熱がある間は静かに過ごし、こまめに水分補給をします。耳の痛みが強い場合、冷やすと少し楽になることもあります。
うちの子もかかった!ママの口コミ
3歳の娘がしばらく耳が痛いと言うので小児科に行ってみたところ、中耳炎の診断。風邪をひき、鼻水の菌が耳に入ったのかもしれないとの診断でした。保育園は3日休ませ、抗生物質を飲んでようすをみました。少し微熱もありましたが本人は元気そうでした。一度発症すると繰り返しやすいようなので、気をつけてあげたいと思います。(東京都・3歳女の子のママ)
子どもはつらさを感じないが、耳が聞こえにくくなる 「滲出性中耳炎」
滲出性中耳炎は、粘膜からしみ出した液が中耳にたまる病気。たまった液体のせいで鼓膜がふるえにくくなるため、聞こえが悪くなったり、耳がつまる感じがしたりします。痛みや発熱などは見られず、子ども自身がつらさを感じないため、発症を見逃してしまうこともあります。日頃から身近な大人が、声をかけても反応しない、テレビなどの音を大きくしたがる、やたらと耳をさわる、などのサインに気を配ることが大切です。
滲出性中耳炎は、抗生剤や空気を送り込む治療法
軽症なら、抗生剤の飲み薬や、鼻から耳に空気を送りこむ治療などを行います。症状がある程度進んでいるときは急性中耳炎と同様に鼓膜に穴を開け、たまった滲出液を取り除きます。
滲出性中耳炎を繰り返す場合は、切開手術も
適切な治療をしても治りにくかったり、再発をくり返したりする場合は、手術を行うこともあります。鼓膜に開けた穴に小さなチューブ(直径約1ミリ、長さ2ミリ程度)を固定し、滲出液をたまりにくくするものです。チューブは、症状に応じて数か月~2年ほどそのままにしておきますが、チューブを入れている間も聞こえに問題はなく、取り除けば(自然に外れるものも多い)鼓膜の穴は自然にふさがります。ただし、チューブを入れている間は、入浴などの際に耳に水が入らないように注意が必要です。滲出性中耳炎は、急性中耳炎に続いて起こるほか、アデノイド肥大や副鼻腔炎など、のどや鼻の病気が関係していることもあります。耳の治療に加え、原因となる病気を治すことも大切です。
お話を伺ったのは…
健康担当
金井正樹先生
東京都八王子市・金井内科医院
院長 国立小児病院、米国の小児病院などで小児外科の臨床・研究を行い、2008年より現職。診療科目は内科、小児科、小児外科、外科。保育園の園医、小・中学校の校医も務める。
イラスト/小泉直子 再構成/HugKum編集部
出典:『めばえ』2017年12月号