彼岸花をお墓に供えても問題ない? 特徴・花言葉や言い伝えもチェック

秋の彼岸に合わせて、墓参りに持参する花を探している人も多いのではないでしょうか。一見すると墓参りに適していそうな彼岸花には、知っておきたい注意点があります。彼岸花の特徴・花言葉などの基本情報とともに、言い伝え・マナーも紹介します。

彼岸花(ひがんばな)の特徴

「彼岸花」について、まずは植物としての分類や、名前の由来・別名といった特徴を解説します。

秋ごろに咲く球根植物

彼岸花は、ヒガンバナ科・ヒガンバナ属の球根植物で、日当たりのよい田んぼ・あぜ道などに多く生息しています。秋ごろに開花する多年草で、花と葉を同時に見られないのが特徴です。

一般的な植物は春に芽を出して茎が伸び、夏ごろに葉を茂らせて花を咲かせます。一方で彼岸花は、球根から花が出てくるため、高さ約30~50cmの茎の上に大きな花が咲きます。花が枯れた後に葉が成長することから、昔の人は「葉見ず花見ず」と恐れたそうです。

名前の由来・別名

彼岸花という名前は、秋分の前後3日間を指す「秋の彼岸」ごろに花が咲くという特徴に由来しています。また、葉がない状態で花を咲かせる様子が「この世のものとは思えない」ことから、あの世の花を表す「彼岸花」とされたようです。

彼岸花には以下を含め、1,000以上の別名があります。

●曼珠沙華(まんじゅしゃげ)
●死人花(しびとばな)
●捨て子花
●幽霊花(ゆうれいばな)

曼珠沙華は、古代インドで使われた仏教用語で「天上の花」を意味する言葉です。

葉がなく、まっすぐ伸びた茎の上に花を咲かせる。

【色別】彼岸花の花言葉

彼岸花の原種は赤のみですが、交配や品種改良などでつくられた白・黄色などの彼岸花が存在します。色ごとの特徴や花言葉と併せて、青い彼岸花が実在するのかもチェックしましょう。

赤は別れを連想する花言葉が主流

赤い彼岸花の花言葉には「再会」「諦め」といった別れを連想させる単語が並びます。昔は墓地に彼岸花を植えるケースも多かったため、「悲しい思い出」のように亡くなった人をしのぶ花言葉もあります。赤い見た目からくる「情熱」以外は、全体的に孤独・寂しさを感じさせる言葉が多いのが特徴です。

日本で見かける赤い彼岸花は「リコリス・ラディアータ」と呼ばれる品種が主流です。リコリスはギリシャ神話に登場する海の女神「リュコリス」に由来し、開花の様子から「放射線状」を意味する「ラディアータ」がついたといわれています。

白は一途な思いを表す花言葉

白い彼岸花の「また会う日を楽しみに」や「思うのはあなた一人」といった花言葉からは、相手をひたむきに慕う一途な気持ちが伝わってきます。白い彼岸花は、原種の赤と黄色の彼岸花を交配した品種です。

白い彼岸花。赤との対比が美しい。

全国的に生息する赤い彼岸花とは異なり、白い彼岸花は関東地方ではほとんど見られません。学名は「リコリス・アルビフローラ」で「白花曼珠沙華(しろばなまんじゅしゃげ)」「白花彼岸花(しろばなひがんばな)」とも呼ばれます。

黄色には前向きな花言葉もある

黄色の彼岸花に込められた花言葉は「悲しい思い出」「追想(ついそう)」などです。ビタミンカラーの見た目から「陽気」「元気」といった明るい印象の花言葉もあります。

華やかな印象の黄色い彼岸花。

黄色の彼岸花の代表的な品種は、ヒガンバナ科の「ショウキズイセン」です。四国・九州・沖縄や、台湾などに生息し、9~10月ごろに鮮やかな黄色い花を咲かせます。その他の品種は「カチューシャ」「喝采(かっさい)」「リコリスオーレア」です。

その他の色と花言葉

赤・白・黄以外に、品種改良によって誕生したピンク・オレンジの彼岸花もあります。ピンクの彼岸花は「快い楽しさ」「深い思いやり」「あなたのために何でもします」など、温かみのある花言葉が並びます。

一方で、オレンジの彼岸花は「妖艶(ようえん)」と、美しい見た目を連想する花言葉が特徴です。なお、漫画・アニメで取り上げられた青い彼岸花は、現状では存在しないことが分かっています。

彼岸花に関する言い伝え・マナー

「あの世の花」とも呼ばれる彼岸花を、墓に供えるのは問題ないのでしょうか。言い伝え・マナーなど、彼岸花の扱いに役立つ知識を確認しましょう。

「食べるとあの世へ行く」

彼岸花の「食べるとあの世(彼岸)へ行く」という不吉な言い伝えは、毒性植物という特徴に由来します。彼岸花を含むヒガンバナ科の植物には、以下のような「ヒガンバナアルカロイド」と呼ばれる有毒成分が含まれているのです。

●リコリン
●ガランタミン
●タゼチン
●シュウ酸カルシウム

これらの成分は球根部分に多いので、子どもやペットの誤食に注意が必要です。「食べるとあの世へ行く」という言い伝えには、子どもが彼岸花を口にするのを防ぐ目的があったと考えられます。

参考:自然毒のリスクプロファイル 高等植物 スイセン類|厚生労働省

仏花・供花にするのはマナー違反

「彼岸花」という名称から、墓参りに適していると思うのは無理もありません。しかし、毒性のある彼岸花を仏壇や墓に供えるのは、マナー上よいことではありません。

故人を埋葬していた時代は、モグラ・ネズミなどの害獣から遺体を守るために、毒性のある彼岸花が植えられていたといわれています。現代は火葬が主流のため、彼岸花を植える必要はありません。むしろ、毒性の強い花を供えるのは不謹慎という見方もあるため、墓参りに彼岸花を持参するのは控えましょう。

墓参りで彼岸花を供えるのは控えよう

ヒガンバナ科の「彼岸花」は一般的な植物とは異なり、秋の彼岸ごろに開花を迎えます。なお、2023年における秋の彼岸は、9月20(水)~26日(火)の7日間です。

彼岸花は毒性の強い花のため、墓参りの仏花・供花には適していません。彼岸には季節を代表する花を供えるのが一般的で、秋には菊の花が選ばれる傾向にあります。墓参りに持参する花が分からない場合は、店の人に相談するのも一つの方法です。彼岸の墓参りに出向く際には、彼岸花以外の花を用意するようにしましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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