ちゃお編集長にイマドキ小学生のリアルを聞いた!「α世代の3つの特徴は【デジタルネイティブ】【タイパ重視】【社会課題に関心が高い】」

1977年の創刊以来、全国の女子小学生、通称JSから愛されてきた漫画雑誌「ちゃお」。読者の中心である小学生女子を長く定点観測している編集部も、令和の女子小学生に少しずつ変化が見られると感じているそうです。今回はちゃおの萩原綾乃編集長に、イマドキの小学生について話を聞きました。

「ちゃお」編集長から見たα世代って?

耳なじみのある「Z世代」の次の世代、2010年ごろ~2020年代中盤に生まれた世代は「α世代」と呼ばれており、まさに現在の小学1~6年生はこの世代に当てはまります。その世代の女子小学生がこぞって愛読している漫画雑誌「ちゃお」。その編集長である萩原さんは入社以来、女子向け漫画一筋! 読者から寄せられた生の声や、イベントなどで実際に読者に会う機会も多く、イマドキ小学生のリアルを知り尽くしています。そんな萩原さんから見たイマドキ小学生には、どのような特徴があるのでしょうか?

イマドキ小学生はひと言でいうと〇〇〇!

―α世代の特徴を教えてください

萩原さん(以下:萩原) 世間でもよく言われていますが、α世代の特徴は、【デジタルネイティブ】【タイムパフォーマンス重視】【SDGsなど社会課題に関心が高い】ちゃお読者を見ていてもこの3つの特徴は「まさにそうだな」と感じています。ひとことで言うなら、真面目な子が多いという印象です。そのような特徴は常に意識しつつ、記述式の細かいアンケートやモニター会などを行って、読者の声を細かく拾っています。あとは、「ちゃおフェス」などのイベントをやることもあるので、そこに来てくれた読者に直接話を聞くこともあります。

過去の「ちゃおフェス」のイベント風景

―萩原さんが小学生に話しかけるということですか?

萩原 はい、そうです! 私だけでなく、ちゃお編集部みんながそうしています。コロナ禍でイベントがなかなかできなくて、生の小学生と触れ合うことができなかったので、イベントで実際に会うことができるのは、とても貴重な機会だと思っています。なので、お話をさせてもらうのはもちろん、列に並んでくれているみなさんのヘアメイクや持ち物もじっくりチェックさせてもらっています。「このバッグみんな持ってる」「あの漫画家さんのサインの列に並んでいる子は、みんなヘアアレンジが上手」みたいな特徴が見えてくることもあって、とても参考になるんです。ちゃおで漫画を描いてくださっている作家さんもリアルな読者を知るために、読者イベントやモニター会に参加することもあるんですよ。

どんな漫画家さんの列にどんな子が並んでいるのかもチェック。写真は過去のイベント時のものです

―実際に会ったり、生の声を聞いたりすることから見えてきたことはありますか?

萩原 女の子って、好きなものや欲しいものが千差万別なので、直接話を聞いたり記述式アンケートを読んだりしていると、みんな意見が細かく分かれているんです。例えば、なりたい職業も2位に「その他」がランクインするので、記述式の部分をじっくり読むようにしています。女の子は平均を捉えるのが難しいと感じますね。

―その場合は、なんとなくの中間を読み取って誌面に反映していくのですか?

萩原 これも女の子の特徴なんですが、「平均は知りたいけど、平均にはなりたくない」というのが心情なんですよね。

なので、「私はかわいい系が得意」「メイクのHow toならこの先生」「ツンデレ系漫画も入れたい」といった漫画家さんや編集者の様々な意見を反映して、一冊の中でバランスを取っている感じです。中間を取りにいくと、内容がかぶってしまうこともあるので。編集長は、自分の「これは絶対に人気が出る」という直感を信じて、最終的には独断になることが多いんです。だからこそ、生の声をできるだけ多く聞いたり、アンケートには細かく目を通すようにしています。

ちゃおのライバルは同じ雑誌ではなくYouTube

―ちゃお読者は、他にどんなものに興味がありますか?

萩原 ちゃお読者は小学3~6年生がメインなんですが、意外とスマホの所持率はまだ低く、InstagramやTikTokも知ってはいるけど、利用している子は多くないんです。メインはYouTubeなんですよね。YouTubeって、逆上がりのやり方から勉強法、メイクの仕方までなんでもあって、ものすごい情報量なんですよね。そこと月1発売の雑誌の情報量で戦わなければならないので、とにかくさまざまな情報を盛りだくさんに!ということを意識しています。

―ライバルは雑誌ではなくYouTubeなんですね。

萩原 そうなんです。デジタルネイティブの子たちは、デジタルの世界に違和感を持たないんですよね。昔の漫画は主人公が自分で、感情移入できるストーリーが人気の傾向にありました。もちろん、今もそういう部分はあるんですが、「悪魔の女の子が登場する」みたいなリアルじゃないファンタジックな設定の漫画も人気です。想像の世界に飛躍する力が強くなって、物語の幅もどんどん広がってきていますね。デジタル版の「ちゃおコミ」のほうでは、最近話題の転生ものも取り入れています。

―毎月、どんな漫画を取り上げるかは、どのように決めていますか?

萩原 ちゃおでは月に3回会議があります。1つ目は「漫画会議」。漫画は連載、読み切りの枠がそれぞれ決まっているので、それに対して自分の企画をプレゼンして決めるコンペ形式です。2つ目は「付録会議」。自分がいいと思った付録を持ち寄って、どんな付録をつけるかを話し合います。3つ目が「口絵会議」。口絵というのは巻頭のカラーページなんですが、「この芸人が今人気」「クレーンゲームの企画がやりたい」みたいな感じで、やってみたい企画をみんなで出し合います。自分で提案した企画が通れば自分で担当することができるんですが、「仕事が多くなって嫌だ」という編集部員は一人もいなくて、みんな「自分の企画を通したい!」という一心で雑誌を作っています。

―みなさんのやる気が「ちゃお」に詰まっているんですね。ママ編集部員もいるんですか?

萩原 はい、います!意外と思われるかもしれませんが、男性部員も3人います。男性が作る少女漫画って、とてもかわいくて清純なんですよね。男性ならではの目線で漫画を作ることも、ちゃおの中では欠かせないことだと思っています。

ママやパパが子どもに「見せたい!」と思える漫画雑誌作り

―SDGsなどの社会問題は、子ども達の関心が高いようですね。

萩原 そうなんです。読者アンケートでも、「エコバッグが欲しい」「環境にやさしいものを取り入れて欲しい」というような声があるくらい、小学生のSDGs意識は高くなっています。なので、繰り返し使うことができるものを付録にしたり、フードロス問題にフォーカスしたり、SDGsの問題は積極的に取り入れるようにしています。

―他に心がけていることはありますか?

萩原 コンプライアンスやLGBTQについても、意識しているところですね。漫画の設定においても、読んでいる人が違和感を感じないよう、絵の部分でもネームの部分でも注意しています。ちゃおは、ママやパパが買って来るというご家庭も多いので、親の目線で見た時に「子どもに読ませたい」と思えるような内容にしたいと思っているんですよね。今の小学生のママは、ちゃおが毎号100万部売れていた世代なので、自身も読まれていていた方が多く、懐かしさを感じることも多いと思います。なので、ママが読んでも「あの頃のちゃお」のイメージを崩さないように!というのも意識しているポイントです。

YouTubeに負けない情報量で女子小学生に寄りそう「ちゃお」

萩原 「ちゃおってこんな子が読んでいるだろうな」と想像して作ると、実際はずれていたりするんですよね。だから、直接会える機会や生の声を聞く機会をできるだけたくさん持って、本当に読んでくれているちゃお読者が喜んでくれるものを作りたいと思います。少し前までは「ちゃお」を卒業して、少しお姉さんの雑誌に移行するというパターンも多かったんですよね。でも、今はデジタル時代なので、中学生くらいになると、SNSなどのデジタルコンテンツに移行していくことが多くなっています。なので、ちゃおチャンネルでちゃおの情報を発信したり、ちゃおコミでちゃおの漫画を読めるようにしたり、デジタルでもちゃおを楽しんでもらえるようにしています。

萩原編集長をはじめ、ちゃお編集部のみなさんは、読者からのリクエストにしっかり応えながら、YouTubeに負けない情報量の多さでちゃおを作っていることがわかりました。昔、ちゃおを読んでいたというママ、まだちゃおを読んでいない女子小学生も、ぜひ、手に取ってみてくださいね。

ちゃお編集者・多賀さんに聞いた、もっと詳しいα世代女子のデータはこちら

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取材・文/本間綾

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