自転車で世界中を旅するパッシュファミリーが今、日本に!母 セリーヌさんに聞く、旅を通して子ども達に伝えたいこととは?

世界中を自転車で旅するパッシュファミリーは、現在日本を縦断中。2010年に二人で始まった旅は、旅の途上で生まれたナイラちゃんとフィビーちゃんが加わり、4人となって13年。どうやって旅のなかで子育てを行い、教育を行っているのでしょうか?
東京で行われた講演後、母親であるセリーヌさんにお話を伺いました。


始まりはスイスからニュージーランドへの2人旅

グザヴィエさんとセリーヌさんのパッシュ夫妻の旅の始まりは、2010年。当時グザヴィエさんは建築家、セリーヌさんは人類学者でした。グザヴィエさんがスイスからニュージーランドへ自転車で旅をする計画を持っていることを知り、セリーヌさんは同行を決意。そこから13年間、世界各地を巡ってきました。

「元々山に登ったり、アウトドアを楽しむ方だったので自転車の旅もそれほど過酷には感じないだろうと思っていました」と語るセリーヌさん。

セリーヌ・パッシュさん。

「グザヴィエはいまは建築家ではなく、写真家として私たちの旅の映像や写真を撮るのを生業にしています。そして私の人類学者としての仕事は各地の文化やその長所を学ぶことなので、今は旅をしながら日々探究しています」

13年前に旅を始めましたが、一つの目標を達成したり何か予定があればスイスに戻り、原稿の執筆や講演活動などしてしばらく過ごし、また旅に出るという形でこの活動を継続してきました。

パッシュファミリーの自転車。この自転車で隊列を組み、日本を縦断中です。
自転車に接続されたカートには洗濯ものを干せるようにしているなど、長年の旅での工夫も。

 

旅先で生まれた2人の娘も一緒に世界を巡る日々

その後、2013年にマレーシアで長女ナイラちゃんが、2017年には次女フィビーちゃんが誕生。2人が加わり、現在は4人で世界中を講演活動をしながら自転車で巡っています。今回東京で行われた講演では、自転車旅の様子を映像でも紹介。そのなかにはモンゴルのゴビ砂漠を横断し、現地の家族と交流する娘たちの姿も紹介されました。

子どもの場合、まだ自転車に乗れないうちは接続したベビーカーやカート、少し乗れるようになってくると小さな自転車を連結。そこから徐々に自転車の大きさを変えてきました。13年間の旅を通して、使い続けているものはハンドルだけなぐらい、両親の自転車も含めて最適化を繰り返し、最小限の荷物で旅を続けています。

まだ2人が小さい頃、ナイラちゃんの自転車は大人のものと連結し、フィービーちゃんはベビーカーに乗せて牽引して移動。 提供:パッシュファミリー
長女ナイラちゃんが現在乗っている自転車。
ナイラちゃんの自転車にも荷物がたくさん積まれています。
ナイラちゃんの自転車のポーチには、地図や拾った羽、一緒に撮った思い出の写真などが入っていました。

旅先で多様な価値観・人々がいることを体験を通して家族で学ぶ

長く旅をするなかでも、彼女たちは日々学んでいます。文字の読み書きなどはときには両親が引くカートのなかでノートを開くこともあります。そして何よりも学びとなっているのが、旅先での様々な出会い。

「全て体験を通じて物事を学んでいます。地図を自分で広げどんな場所なのかを想像し、その地図で見た場所を通ったときに体験を得る。まずは彼女たちの興味のあることについて、フォローするようにしています」(セリーヌさん)

旅するなかで気温-45℃も+53℃も経験する。その地の生き物たちが主役の場所に訪問者として訪れ、その生き生きとした調和を乱さないように注意しながら、体感する。それは「文化は現実を照らす嘘のようなものだから」だとセリーヌさんは講演でも語りかけています。感じる文化を変えれば、違った見方ができるようになる。世界中に、多くの真実があると。

講演後の質問に答えるナイラちゃんを始めとするパッシュファミリー。

「私たち家族は本当のチームです。お父さんが料理をして、お父さんが地図を見て、お父さんが全部直してくれる。写真もビデオも全部撮ってくれる。ママは私たちに読書と瞑想を教えてくれます。時々は家を持ち、学校に通うことを望むかどうか聞かれるけれど、私はこの生活が大好きなんです」(フィビーちゃん)

最も大切なことは、家族が一緒にいることだと考えているセリーヌさん。学校の教室で学んでいない分、子どもたちは別の学びの機会を得られているといいます。

「海洋生物学者のダニーからつきっきりで3日間海の生き物について教えてもらえる機会もありました。また、一般的には子どもの友人というのは同世代だと思いますが、この子たちには幼児から90代まで幅広く友人がいます。東京に来る前に訪れた千葉県の大学では、学生のお兄さんお姉さん方と仲良く遊んでいました。また、娘の希望で目的地をポーランドにし、友人の誕生日にかけつけたこともあります」(セリーヌさん)

生活費は1人1か月3万円 目的地ではなくその過程に価値を見出す

世界中を自転車で旅をし、時にはテント、時には地元の宿や招待してくれた方の家を訪問しながら続けてきた生活。気になる生活費は、地域の物価にもよりますが、だいたい1人当たり月額3万円程度。

「私たちは旅をしても、レストランに入ったり、美術館や博物館には立ち寄りません。例えばこれから大阪に向かいますが、大阪に行っても街中では観光はしません。それよりもその道中で出会う人々、見つけた景色や文化などに出会うことを大切にしています。現代の世界で最も遅い移動手段である自転車を選び、旅しているのも、点と点を結ぶ移動ではなく、各地での小さな発見や出会いがあるからです」(セリーヌさん)

旅の記録を書籍化した「パッシュファミリー自転車冒険記」は全国のモンベルショップで販売中。

2023年10月現在、パッシュファミリーは人力による移動手段で旅をするジャパンエコトラック公式アンバサダーとして全国を自転車で縦断中。2023年11月まで長野県・三重県・奈良県・大阪府と講演をしながら自転車で移動したあとの計画は未定。もし彼らを見かけたら、ぜひ声をかけてほしいそうです。

 

イベントの予定

長野県 10/14(土) 14:00 中野市防災広場 信越自然郷エリア
SEA TO SUMMIT千曲川・高社山大会 環境シンポジウム

三重県 10/30(月) 18:00 奥伊勢フォレストピア 伊勢 熊野エリア

奈良県 11/3(金・祝) 15:30 モンベルアウトドアヴィレッジ奈良
※事前参加申込が必要

大阪府 11/6(月) 18:30 モンベル本社
※事前参加申込が必要

参加費は無料です。

ミニイベント詳細
https://www.japanecotrack.net/special/8

パッシュファミリー公式ホームページ

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文・構成/ 北本祐子

 

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