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小児の急性呼吸器感染症は約10%が原因不明。ヒトメタニューモウイルスの発見で、その一因が判明
ヒトメタニューモウイルスは、2001年にオランダで急性呼吸器感染症の子どもから発見されたウイルスです。それまでは、小児の急性呼吸器感染症は10%ぐらいが原因不明でした。このウイルスが発見されたことで、原因不明とされていた一因がわかりました。
またヒトメタニューモウイルスを発見した研究グループは、1958年に収集した複数の血清の抗体を調べています。その結果、ヒトメタニューモウイルスの抗体がすべてから検出されました。そうしたことから、突然変異などで急に現れたウイルスではないこともわかっています。
主な症状は咳、鼻水、発熱、息苦しさなど
ヒトメタニューモウイルス感染症の流行時期は3~6月といわれていますが、流行期でなくても感染することがあります。
主な症状は咳、鼻水、発熱、息苦しさ、嘔吐、下痢です。
5歳以上は、ほとんどの子がヒトメタニューモウイルスの抗体を持っている
ヒトメタニューモウイルスは、1~2歳代では50%。5歳以上ではほとんどの子が抗体を持っています。風邪と思っていたら、実はヒトメタニューモウイルスに感染していたということが多いです。とくに2~3歳以上の健康な子どもは感染しても、軽い風邪のような症状のため、ヒトメタニューモウイルスに感染したとは気づきません。
しかし、なかには重症化するケースもあるので注意が必要です。特に注意が必要な子は、次の通りです。
【重症化リスクがある子ども】
- ・0~1歳代
- ・小さく生まれた赤ちゃん
- ・基礎疾患がある乳幼児
顔色が悪い、呼吸がおかしいときは至急受診
「顔色が悪い」「授乳しても飲まない」「機嫌が悪い」「呼吸が苦しそう」(いつもより呼吸が早い、呼吸するたびに胸やのどの下がへこむ、ゼーゼーする、肩で息をしているなど)「熱性けいれんが起きた」というときは、診察時間外でも至急受診してください。
熱があっても元気で、おっぱい・ミルクが飲めていれば、診察時間内の受診で構いません。
ただしヒトメタニューモウイルス感染症には、特効薬はありません。基本的な治療は、対症療法です。
軽い風邪症状だと検査しないことも
ヒトメタニューモウイルス感染症は前述の通り、2~3歳以上の健康な子どもが感染しても、軽い風邪のような症状です。そのような子が小児科を受診しても、地域でこのウイルスが流行していたり、気になる症状がなければ検査はしないでしょう。またヒトメタニューモウイルスの検査が保険適応で受けられるのは6歳未満です。
こうしたことから上の子がヒトメタニューモウイルスに感染していても気づかずに、下の子にうつしてしまうということもあります。RSウイルス感染症のきょうだい間の感染も、同じような状況で起きることが多いです。
子どもが通っている園でヒトメタニューモウイルス感染症が流行しているときは、医師に伝えて
ヒトメタニューモウイルス感染症か判断するには、ママ・パパからの情報がカギです。
子どもが通っている保育園や幼稚園などでヒトメタニューモウイルス感染症が流行している場合は、必ず受診したときに医師に伝えてください。診断の助けになります。
感染経路は飛沫と接触。重症化リスクのある子がいる家庭は、感染対策を
前述の通り、0~1歳代や基礎疾患があるなど重症化リスクのある子がいる家庭は、家族に軽い風邪のような症状がみられたときは、念のため感染対策をしましょう。
ヒトメタニューモウイルスの感染経路は、飛沫と接触です。感染対策の主なポイントは次の通りです。
【家族感染を防ぐポイント】
●風邪症状がある大人は、家の中でもマスクを着用する。
●子どものマスクの着用は2歳以上から。2歳以上でも、正しく着用できない場合は、無理に着用させる必要はなし。その代わり咳やくしゃみをするときは、なるべく重症化リスクのある子と距離をとらせる。距離をとるのが難しいときは、咳エチケットを教える。
●窓を開けて、こまめに換気をする。
●ママ・パパは、重症化リスクのある子のお世話をする前に、必ずハンドソープを使って手を洗う。
●口に入れたり、手で触ったりするもの(おもちゃなど)は、風邪症状がある子とは共有しない。
●手を拭くタオルなども、家族で共有しない。
また感染予防は、手洗いとうがいが基本です。ヒトメタニューモウイルスは、アルコール消毒も有効です。
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記事監修
勝田友博先生 | 聖マリアンナ医科大学病院 聖マリアンナ医科大学 小児科 准教授- 専門は小児感染症。日本小児科学会専門医・指導医、日本感染症学会専門医・指導医、日本小児感染症学会暫定指導医。
- 取材・構成/麻生珠恵