【保健室のリアル】現役養護教諭に訊く、思春期の子どもたちの実態。友達とのSNSトラブルや親ともLINEで会話…我が子にも心当たりありませんか

今どきの子どもたち(α世代)は、どんなことに悩んでいる? 親が接するときのポイントは?  養護教諭として25年、思春期の子どもたちを見守り続けてきた東京都公立中学校養護教諭の熊谷雅子先生が、そんな親の悩みに寄り添い、アドバイスしてくれました。

反抗する子は減少⁉  ぶつかり合いを避ける傾向あり

子どもから大人への通り道である「思春期」。心や体が大きく成長する時期であり、「昔は自分も親に反抗したな~」と思い返す親も多いはず。しかし、最近は、そういうケースが減少しているようです。

「詳しい統計があるわけではありませんが、親や教師にあからさまに反抗するケースは減っていると思います。ずっと親子仲がよく、いわゆる『反抗期』がないまま過ぎる子も多いですね。それはそれで問題があるわけではないと思いますが、ただし、親に対して反抗的な態度を取るわけではなくても、外であるいは内心イライラしていることはあるかもしれません」

と熊谷雅子先生(東京都公立中学校養護教諭)。

「男女差があまり感じられないのも、今どきの風潮なのかも。オンラインゲームにハマる女子もいれば、SNSも含めたコミュニケーション(友達関係)に悩む男子もいます」

今どきの子どもたちは、どんなことに悩んでいるのでしょうか。心や気持ちに関する悩みについて、実例を紹介しつつ、熊谷先生のアドバイスを紹介します。

悩みの声①  友達関係がまったく把握できない

学校のことを話してくれないので、どんな友達と仲がよいのか、どんな話で盛り上がっているのか、全く把握できていません。「学校、どう?」「誰と仲がいいの?」と聞いても、「ふつう」「別に」として答えてくれなくて…。(神奈川県/NTさん お子さんは中1女子)

子どもの友達関係が気になるのは、親としては当然のこと。そして、思春期の子どもは、親が友達関係に口を出してくるのを好まないのも、昔からよくあることです。

一般的に、女子は対1や少人数のグループでの「濃い」付き合いを好む傾向がありますが、熊谷先生によると、最近の子どもたちには、不思議な交友関係があるそうです。

「SNSが発達したせいでしょうか。学校で一言も話さない、素知らぬ顔で挨拶もしないような子どもたちが、家に帰ったら、SNSなどを通じて、つながっているケースがあります。親世代にとっては理解しづらいのですが、そういう付き合いを好む子もいるようです」

ちなみに、これは女の子だけでなく、男の子にも当てはまる場合もあるそうです。

「親世代も、思春期だったころ、自分の親に何もかも話していたでしょうか?  子どもには、すべてを話さない『自由』もあると思います。子どもが思い悩んだりトラブルでしんどい状況に陥ったりして、暗い顔になったり体調不良になったりしていないのなら、そっと見守っているのがよいと思います」

子どもの友達関係に関しては、親は自分自身の心配な気持ちをできるだけ抑え、そっと見守る距離感が望ましいようです。

悩みの声②  親子の会話がとうとうLINEに

息子は学校から帰ると、部屋に直行。「お帰り。おやつ食べる?」と声をかけても、無視されます。ついに、LINEで「ごはん、出来たよ」と、部屋の中にいる息子に連絡するようになりました…。(東京都/KKさん お子さんは中1男子)

思春期には、イライラする気持ちを抑えられず、ぶっきらぼうになったり、不愛想になったりする子もいます。熊谷先生によると、こういう昔ながらのタイプは、むしろ安心なのだとか。親にイライラをぶつけているのは、親に甘えている(=安心して気持ちの揺れを素直に表現している)証しとも言えるからです。

「今は、親にイライラしている素振りを見せない子のほうが多いと思います。自分なりに外で頑張っている分、おうちでは安心して『素の自分』が出せているのでしょう」

実際、熊谷先生は、保健室に来る子どもたちから「親に悪いから、心配かけたくない」「迷惑をかけたくないから、親には言わないで」という言葉を聞くことが多いとか。親が子どもを心配するように、子どもは子どもで「忙しい親に迷惑をかけたくない」と思い、気持ちがすれ違っているケースも多いようです。

「親御さんは、あなたのことを心配しているから、あれこれ言いたくなるのよ」
「心配しているから? 怒っているからだと思って…」
「心配しているからに、決まっているじゃない!」
「え、そうなの⁉」

これは、実際に交わされた熊谷先生と子どもの会話。スマホやインターネットを通じて多くの情報に接している今どきの子どもたちは、昔よりも大人びているようで、意外に分かっていないことも多いのが実情なのです。

親のほうも、「あなたのことが心配だよ」と、あらためて言葉にして伝えてみるのも良いかもしれません。

悩みの声③  不登校

子どもが「学校に行きたくない」と言い出しました。こんなとき、親はどうすべき?(埼玉県/Ⅿ・Y さん お子さんは小6)

親の世代にとって、学校は行くのが当たり前。でも、今は不登校に対する理解が深まり、「絶対、学校に行かなければならない」という時代ではありません。文科省も「不登校児童生徒への支援は『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく」としており、心理学的にも「人(子ども)は、エネルギー切れという状況に陥ることもある」という認識が浸透している状況です。

活動するエネルギーが足りないなら、少し休んでみる(=充電する)という選択肢を選ぶのも賢明。そもそも、不登校になったからといって、子どもの人生が終わるわけではありません。

「不登校になっても、その後、自分なりにやりたいことや興味あることに出合い、驚くほど成長し、自分の人生を歩んでいる子どもたちを何人も見てきました。心配はいりません」

と熊谷先生。

子どもの成長する力を信じて、待つ。どっしりと構える親の度量が試されるところではありますが、それもまた、親の務めなのかもしれません。

ほどよい距離から見守る姿勢が必要

思春期は、子どもが大人への階段を上るために必要な道。特に心の発達に関しては、どんなに心配だろうと、少しずつ手を放しつつ、ほどよい距離で見守る視点が、親にとって必要でしょう。

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お話を伺ったのは…

熊谷雅子先生 | 東京都公立中学校養護教諭
養護教諭25年のベテラン先生。多くの子どもたちを保健室で見守ってきた経験から、「子どもはみんな、成長する力があるから、多少寄り道しても大丈夫!」と、子育てママ&パパにエールを送る。

取材・文/ひだいますみ

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