痩せたい、背が低い、脱毛したい…ルッキズムに悩み、保健室に駆け込む十代の子どもたち。外見に関する悩みに「親はこう向き合って」

今どきの子どもたち(α世代)は、どんなことに悩んでいる? 親が接するときのポイントは? 養護教諭として25年、思春期の子どもたちを見守り続けてきた東京都公立中学校養護教諭の熊谷雅子先生が、そんな悩みに寄り添い、アドバイスしてくれました。今回は特に子どもたちが抱える「からだ」の悩みにフォーカスします。

悩みの声①  やせ願望

娘がダイエットに夢中で、心配です。太っているわけではないのに、「やせたい」と言って、食事を残します。朝食もあまり食べず、給食も残しているみたい。でも、おなかはすくようで、スナック菓子やドーナツなどの間食は食べます。「このままじゃ、健康に悪いよ」と言っているのに、聞く耳を持ちません。(東京都/KKさん お子さんは小6)

今も昔も、スタイルを気にする子は多いもの。特に女子は、「やせたい」という思いから過剰なダイエットをするケースがあるようですが、男子でも悩む子はいるとか。

「男女ともに、本人は『やせなくちゃ』と思い込んでいるようですが、実際には必要ない場合が多いです。『どうして、やせたいの?』と聞くと、最近は『何となく』と答える子が増えているのが気になります」

そういう場合、熊谷先生は発達曲線のグラフなどできるだけ客観的な、科学的な資料を見せて、身長と体重のバランスを一緒に確認して、本当にやせる必要があるのかを本人に考えてもらうそうです。

それでも、「やせたほうが(異性に)モテるから」と答える子には、「自分に似合う服を着たら、素敵に見えるんじゃない」「部活や体育で活躍したほうが、モテるんじゃない?」など、さまざまな方面からアドバイスすることもあるとか。

最近は、親に対してあからさまに反発する子は減っているとはいえ、親の言うことを素直に聞かないケースはやはり多いようです。そんなときは、親よりも客観的に悩みを受け止めてくれる養護教諭に相談してみるのも一つの手かもしれません。

「本来、体が大きくなる成長期に『やせる』というのは危険な兆候です。顔色が悪い、元気がないなどのサインがあれば、親御さんもぜひ相談してください」

悩みの声②  外見を変えたい

息子は、自分が毛深いのが我慢できないらしく、「脱毛したい」と言い出しました。親から見ると、特に毛深いタイプではなく、すね毛が生えてくるのも当たり前だと思うのですが、本人は「とにかく脱毛したい」と言い張ります。(千葉県/RSさん お子さんは中1)

「女子だけでなく、毛深いのがイヤだと悩む男子もいます」

と熊谷先生。確かに、思春期は男女ともに第二次性徴で体が変わっていくことに戸惑ったり、体のことがあれこれ気になったりする時期。そのため、脱毛以外にも「眉毛を整えたい」「まぶたを二重にしたい」など、さまざまな悩みが保健室でも聞かれるそうです。

「“中学生はありのままが一番。化粧や美容は大人になってから”という価値観は変容しつつあるようです。公立中学校の多くが登校時の化粧を禁止していますが、こっそり眉毛を整えたり、化粧品を使って二重まぶたにしたりする中学生も見受けられます。保護者から『うちの子の眉毛は本当に太くてかわいそうだから、眉毛を整えることを許可してほしい』と相談されるケースもあります」

まずは、体のことが気になるといいう子どもの気持ちに寄り添い、受け止めることが大切です。そのうえで、今できること、すべきこと、しなくてもよいことなどを話し合いたいものです。

悩みの声③  身長を伸ばしたい

息子は、背が低いことに悩んでいます。「男の子は、これから伸びるよ」と言っても、浮かない顔。親としてどうサポートしたらいいでしょうか。(静岡県/KSさん お子さんは中1)

最近は、男子だけでなく、女子も「背を伸ばしたい」と願う子も多いようです。

「身長を伸ばすために、睡眠や食事などさまざまな研究がなされていますが、親からの遺伝で決まっている部分もあります。一般的には、中1の男子なら、これからぐっと身長が伸びるでしょう」

身長が伸びる時期には、個人差があります。男子の場合、「中学3年生で、1年に10㎝伸びた」「高校1年生が伸び盛りだった」という声も聞かれます。

女子については、「小6~中1がピーク」「中3でも3㎝伸びた」など、やはり個人差が大きいようです。

男子の場合は、お父さんの出番かも。お父さんの体験を話したり、一緒に生活リズムを整える相談をしたりすると、親子の距離がグッと縮まるでしょう。

体と心の成長を見守ろう

思春期は、体の変化が大きく、大人が思う以上に子どもは不安や悩みを抱えているかもしれません。とはいえ、少しずつ心も成長しており、無邪気に親に相談したり甘えたりすることに抵抗を感じる子もいるでしょう。そんな微妙な時期の子どもに寄り添うには、親のほうもそれなりに配慮する必要がありそうです。

熊谷先生が勧めるのは、「片目をつぶって見守る」方法だとか。

「幼児の頃は目も手を放さず、小学生になったら、少しずつ手を放しても目は離さない…のがよいと言われています。思春期は、『片目』をつぶって見守るのがよいのではないかと思います」

親は自分自身の心配な気持ちを抑えて、あえて「片目をつぶる」ことで、本人の気持ちや自主性を重んじること。それが、子どもの自立につながっていくでしょう。

▼思春期の悩み「心編」はこちら

【保健室のリアル】現役養護教諭に訊く、思春期の子どもたちの実態。友達とのSNSトラブルや親ともLINEで会話…我が子にも心当たりありませんか
反抗する子は減少⁉  ぶつかり合いを避ける傾向あり 子どもから大人への通り道である「思春期」。心や体が大きく成長する時期であり、「昔は自分...

お話を伺ったのは…

熊谷雅子先生 | 東京都公立中学校養護教諭
養護教諭25年のベテラン先生。多くの子どもたちを保健室で見守ってきた経験から、「子どもはみんな、成長する力があるから、多少寄り道しても大丈夫!」と、子育てママ&パパにエールを送る。

取材・文/ひだいますみ

 

編集部おすすめ

関連記事