「子どもロコモ」にご用心!5歳で腰痛、平らな道で転んで骨折。体を使えない子どもが増加中!【専門医監修】

「ロコモ」とは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の略。加齢により足腰など運動機能が衰えて移動機能が低下した状態を言い、一般的には中高年以降に多く見られます。しかし「ロコモ」のような運動機能の低下が今、子どもたちの間でも広がっており、とくにコロナ禍以降増えています。「子どもロコモ」の原因や特徴、改善方法について、子どもたちのロコモ予防対策に取り組む、「全国ストップザロコモ協議会」理事長であり、林整形外科院長の林承弘先生に教えてもらいました。

「子どもロコモ」とは、健康なのに著しく運動機能が低下している状態

「子どもロコモ」とは、明らかな運動器疾患はないが、姿勢不良や運動機能異常により、子どもなのに肩こりや腰痛を訴えたり、ちょっとした運動をしただけで転倒して骨折したりするなど、運動機能の低下をきたした状態を言います。

子どもロコモの主な原因は、携帯ゲームやスマホを見続けることによる姿勢の悪さ

代表的な姿勢不良。提供/全国ストップザロコモ協議会

子どもロコモの主な原因は、姿勢不良です。とくに携帯ゲームやスマホを長時間見続けていると姿勢が悪くなって、腰痛や肩こりを発症したり、運動機能の低下が見られやすくなります。

子どもの頭の重さを3Kgとすると、60度首を曲げて携帯ゲームやスマホなどを見続けていると、1520Kgの負担が肩にかかり、姿勢が悪くなることがわかっています。首を前に傾けるほど、肩への負担は増します。

また体が硬い子も、子どもロコモに注意が必要です。

5歳の男子が、1日約3時間のスマホ使用で腰痛を発症

子どもロコモは、早い子では幼児から兆候が見られます。以前、5歳の男の子が腰痛を訴えて整形外科を受診しました。その子は、1日約3時間スマホを使用していました。猫背で姿勢が悪く、前屈(上体を前に倒して床に手をつく)をしても、体が硬くて手が床につかない状態でした。この子の腰痛の原因は、姿勢不良と体が硬いことでした。

コロナの自粛期間、都内のある小学校では、46月の2カ月半で骨折が8件にも

コロナで子どもの活動が自粛されていた20212022年度は、都内のある小学校ではケガをした子が急増しました。

2021年度、小学校でケガをして受診したのは28件。そのうち骨折は5件。脱臼は1件でした。

2022年度は4月~616日のわずか2カ月半で、小学校でケガをして受診したのは15件。そのうち骨折は8件でした。

なかには人と接触したりしていないのに、平らな地面で突然転んでケガをした子もいました。通常では考えられないケガです。

10歳以降は距離感覚は養いづらい。幼児期から鬼ごっこやボール遊びを積極的に

子どもロコモを防ぐために大切なのは、幼児期からの運動です。子どもロコモには、瞬時に遠近感をつかむのが苦手という傾向があります。そのため鬼ごっこで走っていて人とぶつかってけがをしたり、ボールをうまくキャッチできずに顔に当たってしまうというケガも少なくありません。

瞬時に人や物との距離感をつかんだりするのは、幼児期から友だちと鬼ごっこをしたり、ボール投げをしたりして遊ぶことで身についていきます。幼児と小学生は、鬼ごっこやドッジボールなどの遊びをたっぷりさせてください。小学生には、休み時間はなるべく校庭で体を動かして遊ぶように言いましょう。

10歳以降では、距離感などの感覚は養いづらくなります。

家庭でチェックできる「子どもロコモ」の兆候 

なかには「うちの子は、野球を習っているから大丈夫」「うちの子は、サッカーをしているから大丈夫」と言うママ・パパもいるかもしれませんが、スポーツ系の習い事をしていても安心はできません。日ごろからスポーツをしていても、体が硬かったり、バランスをとるのが苦手な子もいます。

「うちの子も、子どもロコモ?」と思ったときは、次の5項目をチェックしてみましょう。1つでもできないときは、子どもロコモを疑いましょう。

【子どもロコモチェックポイント】

チェック1 片足立ち

両手を広げたまま、片足立ちをする。目は開けたままでOK。左右行い、5秒以上ふらつかずに立てるか確認する。

チェック2 しゃがみ込み

両手を前に伸ばしたまま、ひざを曲げてしっかりしゃがみこむ。よろめいたり、尻もちをついたり、途中で止まったり、かかとが上がるのはNG

チェック3 肩挙上

両手を垂直に高く上げて、耳の後ろまでしっかり上がるか。両手が垂直に上げられなかったらNG。

チェック4 前屈

前屈をして床に両手をつける。膝を曲げたり、両手が床につかないのはNG。

チェック5 グーパー動作

両手を水平に伸ばし、パーにして前に突き出して、グーにして肘を引く。パーにしたとき手首・指が反っていない、スムーズに行えないのはNG

*「子どもロコモ」チェックポイント写真提供/林承弘先生

コロナ禍以降、中学生では縄跳びの練習中に骨折したケースも

ある中学校では県の運動器検診モデル事業として、上記の【子どもロコモチェックポイント】を継続して行っていますが、20102013年度と202122年度を比較すると、

チェック3 肩挙上ができない 10%弱→約25

できない項目が1つ以上ある 約40%→約50

に増えていました。コロナ禍の運動制限が影響していると思われます。

コロナ禍以降、中学1年生の男子は、縄跳びの練習中に右の足の甲を骨折したり、高校1年生の女子は、バスケ部に入っていてウォーミングアップ中に足首をひねって右足関節じん帯損傷のけがをした報告もあります。

「子どもロコモチェックポイント」の継続指導で子どもの体が改善された

 

上の図は都内A小学校で実施した子どもロコモ検診の結果です。できない子にはできるようになるまで集団指導を行い、3回目の検診で大幅に改善しました。さらに個別指導後、4回目の最終検診では約9割の子どもが改善していました。

子どもロコモは、早期発見・予防が第一! おすすめは「子どもロコモ体操」

子どもロコモは、早期発見・早期予防が大切です。成長とともに体がますます硬くなったりすると、大きなけがにつながりやすくなります。

前述の通り幼児では、1日約3時間のスマホ使用で腰痛を訴えています。そのためスマホや携帯ゲーム機の使用時間を親子で相談して見直しましょう。

NPO法人全国ストップ・ザ・ロコモ 協議会がYouTubeで公開している「子どもロコモ体操」もおすすめです。短時間でよいので、正しい動きを真似しながら、毎日続けることがポイントです。

また、子どもの姿勢を正してあげることを習慣にしましょう。ママ・パパが子どもの腰に後ろから手を当てて、前方にグイっと押してやると骨盤が立って姿勢がまっすぐになり、子どもは正しい姿勢の感覚がつかみやすいです。

こちらの記事もおすすめ

小学生でも起こるスポーツ障害。「やりすぎ」で子どもの成長を阻害していませんか?【スポーツドクター監修】
子どもの体には骨が伸びる「成長軟骨層」があります 「子どもの体は大人のミニチュアではない」と小児科の教科書に書いてあるように、子どもの体は...

 

記事監修

林承弘先生|全国ストップザロコモ協議会理事長・整形外科医
林整形外科(埼玉県さいたま市岩槻区)院長。日体協公認スポーツドクター。スポーツ選手個々のレベル、競技特性に合わせた治療、リハビリ、マンツーマントレーニング、予防対策の指導なども行う。NPO法人 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会理事長も務める。

取材・構成/麻生珠恵

編集部おすすめ

関連記事