山形名産「もってのほか」って何? 食べ方や保存方法、彩り映えるおすすめレシピもご紹介

山形名産の「もってのほか」をご存じですか? その名前からイメージできないかもしれませんが、食用菊のことなんです。山形では秋を感じる味覚として知られています。
本記事では、そんな気になる「もってのほか」とはどんなものなのか、名前の由来や食べ方などを紹介していきます。

「もってのほか」って何?

「もってのほか」は、山形で栽培出荷されている食用菊のことです。日本には昔から菊を食べる文化があり、食用に改良された品種がいくつかあります。その中でも「もってのほか」は、食用菊の王様とも呼ばれるものです。

そんな「もってのほか」とは、どんなものなのか、なぜ「もってのほか」という名前になったのか、などについて見ていきましょう。

紫色が美しい「もってのほか」

「もってのほか」は食用菊の王様

食用菊には、いくつかの種類があります。実はそのほとんどが山形で栽培されているのだそう。その食用菊の中の1つ、「もってのほか」は、正式名「延命楽(えんめいらく)」といい、薄紫色をした長く細い花びらが特徴です。美しい外見と、香りが良く味わい豊かなため「食用菊の王様」「食用菊の横綱」などといわれています。

なぜ「もってのほか」という名前なの?

「もってのほか」は、「もって菊」とも呼ばれています。なぜそのようなネーミングになったのでしょうか?

「もってのほか」という名前がつけられた由来には、いくつかの説があります。その1つは「天皇家の御紋である菊を食べるなんでけしからん!」ということが由来だという説。そのほかには「もってのほか美味しい」や「〇〇に食べさせるなんてもってのほか」など、諸説あるようです。

出回っている時期が少ない

「もってのほか」は、秋にしか出回りません。収穫時期は10月下旬ごろから始まって、11月上旬で終わりを迎えます。

「もってのほか」の特徴は? ほかの食用菊とどう違うの?

食用菊にはどんな種類があるのか、「もってのほか」との違いなどを見ていきましょう。

小菊

刺身などに彩りとして添えられている黄色い小ぶりの菊は、「小菊」という品種です。食べずに捨てがちですが、実は食べられます。醤油につけて刺身と一緒に食べたり、花びらをちぎって刺身の上に散らして食べるとこが可能です。

阿房宮

小菊と同じ鮮やかな黄色をしていますが、小菊よりも長く、しっかりとした花びらを持つ「阿房宮(あぼうきゅう)」。青森県八戸市で栽培生産されています。香りがよく、苦味がないのが特徴です。

食用菊「阿房宮」。阿房宮は中国の秦の時代、始皇帝が美女三千人を置き、日夜遊楽にふけったという宮殿にちなむ。
食用菊「阿房宮」。阿房宮は中国の秦の時代、始皇帝が美女三千人を置き、日夜遊楽にふけったという宮殿にちなむ。

「もってのほか」の特徴は?

「もってのほか」の特徴である、シャキシャキとした歯ごたえの秘密は、花びらにあるんです。

菊の花は一般的な平たい形の花びら(舌状花)と、筒状になった花びら(筒状花)からなっていますが、「もってのほか」は筒状花だけでできているため、茹でたり加熱しても形が保たれやすく、独特の食感を楽しむことができるんです。

筒状花からなる「もってのほか」

「もってのほか」はどうやって食べる?

「もってのほか」は、花びらを摘んで生のままでも食べることが可能です。しかし、おひたしや和え物にする場合は茹でてから味付けをします。

「もってのほか」を茹でる際のポイントは、花のガクは苦いので取り除くこと、茹でる際は塩ではなく酢を入れてサッと茹でること。これは発色をよくするためです。では、「もってのほか」の茹で方を見ていきましょう。

1、花びらを摘む

ガクから花びらを摘み、ザルに入れてサッと水で洗います。

2、酢を入れた湯で茹でる

鍋にたっぷりの湯を沸かし、そこに酢を入れます(水1リットルに対して酢大さじ1程度)。そこに、「もってのほか」の花びらを入れ、茹でます。浮き上がってきたら箸などで沈めながら、1分くらい茹でましょう。茹ですぎに注意です。

3、冷水にさらす

茹でた「もってのほか」の花びらは、ザルにあげ、10分ほど冷水にさらします。最後にザルにあげ、手で水気を軽く絞れば完了です。

使い切れなかった「もってのほか」は冷凍保存がおすすめ

使い切れなかった「もってのほか」の保存方法は、下茹でして冷凍保存がおすすめです。冷凍保存で約1か月間保存することができます。

「もってのほか」の冷凍保存方法、解凍方法を見ていきましょう。

冷凍保存方法

茹でた「もってのほか」は使いやすい量に小分けし、ラップで包んでさらにフリーザーバッグに入れて冷凍庫で保存します。

解凍方法

使う前日に冷蔵庫に移して冷蔵解凍するか、時間がない場合は電子レンジで解凍することもできます。また、味噌汁など加熱調理に使う場合は、凍ったまま使うことも可能です。

定番「もってのほか」のおひたしの作り方

「もってのほか」は、おひたしにして食べられることが多いです。副菜としておかずに添えると食卓を華やかにしてくれるでしょう。

本記事ではポン酢を使った簡単おひたしの作り方を紹介していきます。

材料

・もってのほか… 100g
・ポン酢… 適量
・削り節… 適量

作り方

1、もってのほかの花びらを摘み、ザルに入れて水で洗います。

2、鍋に湯を沸かし、酢を入れて、もってのほかを茹でます。

3、ザルにあげ、粗熱をとって水気を絞ります。

4、ボウルに絞った、もってのほか、ポン酢を入れ、最後に削り節を入れて混ぜ合わせます。

5、器に盛り付けて完成です。

「もってのほか」を使ったおすすめレシピ「もってのほかいなり寿司」

薄紫色をした「もってのほか」は、料理に彩りを与えてくれますし、シャキシャキとした食感は料理のアクセントになります。

「もってのほか」を使った見た目も可愛い、いなり寿司のレシピを紹介です。

もってのほかいなり寿司

【材料】

<すし飯>
・もってのほか… 100g
・米… 1合
・昆布… 適量
・水… 適量
・米酢… 大さじ2
・砂糖… 大さじ1
・塩… 小さじ1

<あげ>

・油揚げ… 4枚
・水… 250ml
・醤油… 大さじ2
・みりん… 大さじ2
・砂糖… 大さじ1
・だしの素… 小さじ1

【作り方】

1、といだ米に水をと昆布を入れ、浸水させてから炊飯します。

2、米酢、砂糖、塩を混ぜ、すし酢を作っておきましょう。

3、油揚げを半分にカットし、熱湯で1分ほど茹で、ザルにあげ、水気を切ります。

4、鍋に水、だしの素、醤油、砂糖、みりんを入れ、煮立たせます。

5、4に油揚げを入れ、中火で2分ほど味が染みるまで煮ます。

6、もってのほかを茹で、水気を絞っておきます。

7、米が炊き上がったら、すし飯を作り、もってのほかを混ぜます。

8、甘辛く煮た油揚げの中に7を詰めて完成です。

山形、秋の味覚「もってのほか」

山形名産の「もってのほか」。シャキシャキとした食感が楽しく、口に入れるとほんのり菊の香りを感じます。色鮮やかな「もってのほか」は、食卓を彩り、目でも楽しませてくれるでしょう。秋にしか食べることができない「もってのほか」をぜひ楽しんでみてください。

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構成・文・写真(一部を除く)/松田慶子(京都メディアライン)

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