子どもの学習ノートを見ると「学校や塾での教え方(問題の解き方)と保護者が子どもだった頃に習った教え方(解き方)が違う」ということがあるのではないでしょうか。
そんなとき、学校や塾での教え方に合わせて子どもに解かせないといけないのか、親が昔に習ったやり方で子どもに解かせてもいいのか、迷う方もいらっしゃるかもしれません。私自身の体験を踏まえ、どうすれば良いのかをお伝え致します。
学校や塾の先生の教え方に「合わせる」のが原則
結論としては、原則として先生の教え方、解き方に「合わせる」べきです。「必ず、この方法で解きなさい」と、子どもに言う先生がいます。そのような先生は、子どもが教えた通りに解いていないと「〇」をくれません。たとえ、問題の答えが合っていたとしても、〇にしてもらえないことがあります。
問題に正解していてもやり方が担任と違うと、子どもは〇をもらえません。したがって「合わせる」のがいいのです。
実は、私も「この方法でノートに書きなさい」とよく言っていました。特に、教科書と異なったやり方をさせるときなどに、そう指示していました。私が教えたやり方でやっていない場合には、「教えた通りに書いて来なさい」と×にはしないまでも、〇にはしませんでした。
子どもにしてみれば、正解しているのだから「〇」にしてもらいたいところでしょう。
保護者の方でも、問題に正解しているのだから「〇」でいいではないかと、思われる方もいらっしゃるかと思います。子どもでも、そのように言います。
では、子どもはきちんと正解を出しているのに、先生のやり方通りでないと、どうして、先生は「〇」にしてくれなのでしょうか。
答えが合っていても、〇にしない理由は?
授業で、先生が教えた方法で解いていないと〇にしないのは、子どもが先生の言うことを聞かなくなる可能性があるためです。子どもは、そういう細かなところから「先生の言う通りにしなくても大丈夫だ」と思うようになるものです。
このように思う子どもが一人、二人と多くなってくると「学級崩壊」を起こします。これは、実際に私が体験したことです。先生の言うことを聞かせられなくなると学級崩壊に至ることは、他の先生でも同じことです。
そのような理由から、子どもには「答えは合っているけど、教わったやり方で書いてきなさい」と言って、やり直させます。とにかく、指示した通りにできるまで、〇にはしません。
教師は一度、子どもの前で指示したことを変えることができません。これは、教師にとっては、子どもを指導する上での基本中の基本なのです。だから、指示通りに解いていないと、×にはしないまでも〇をあげないのです。
一度、子どもの前で指示したやり方を変えてしまうと、教師自身が、自ら約束を破っていることになります。そうなると、子どもは混乱してしまい、結果的には教師の言うことを聞かなくなります。
子どもが理解できていなければ、別のやり方でOK!!
学校や塾での教え方と違う方法で解かせていい場合
よほどのことがない限り、学校や塾の先生の教え方・やり方で子どもにやらせるのが原則であることは、今まで述べてきた通りです。
そうは言っても、先生のやりかたはよく分からない、まるで分かっていないという子どもが出てくることもあります。授業を上手にできずに、子どもに学習内容を理解させられないという先生もいます。
教師同士で、先生方の授業を見る機会があります。教師が見ても、「よく分からない、これでは子どもが何をどうしていいのかわからないだろうなあ」と思うことがあります。明らかに子どもが混乱し、私語が多くなっている授業、騒がしくなっている授業も残念ながら、あります。
そのような時には、先生のやり方には合わせなくても構いません。というより、その先生のやり方では、そもそも何をどうすればいいのか、どう解いていいのか分からないでしょう。
学校や塾の先生が教えないかもしれない解き方の例
学校の先生とは違う問題の解き方の例として、たとえば HugKumでの過去記事も参考にできます。「四捨五入」であれば、下記の記事のように解かせることができます。
▼参考記事
他にも少しだけ解かせ方の例を示しておきます。いずれも、私が先輩教師から教えていただいた解かせ方です。ほとんどの子どもが、理解できた方法です。
1)繰り上がりのある筆算では…
繰り上がった1を書く場所を図のように線の上に書くと、繰り上がりがすぐに目に入るため、見落としを防ぐことができる。
一般的には「4」を書いてから「1」を書くが「14」と順序良く書かせることで、5+9が14になることも理解できる。
2)繰り下がりのある引き算では…
101ー3のような場合、1-3ができないので十の位から10もらいたいが、10の位は0でもらえないので百の位から10もらい(百の位の上に0、十の位の上に10と書く)そこからさらに一の位に10をもらう(一の位の上に10と書く)。
10-3=7 7+1(←もともとの一の位の数字)で8とする。
以上は、学校の授業や通常の教科書に書かれているものとは違う解き方かもしれませんが、通常の方法で理解しづらい子どもには、こういった「別のやり方」を教える意味はあると思います。
ただし、先生の教え方と異なる方法で解かせるときに、知っておいたほうが良い、しておいたほうが良いことがあります。
学校や塾と違う教え方で解かせたければ「連絡」する
学校や塾での習い方と違う方法で子どもに解かせたいときには、先生に「連絡」を入れておいたほうが良いでしょう。その際には「子どもが全く理解できていないから」ということは、必ず伝えましょう。そうでないと「いや、みんなに指示したことだから認めるわけにはいかない」と言われかねません。
子どもが「理解できていない」のに、そのままの教え方を継続する先生はいないとは思いますが、もし、いたときには、学年主任の先生にお話しておくと良いでしょう。
知らせ方としては、連絡帳で知らせることができます。個人面談や家庭訪問のときでもかまいません。電話ではしないようにしましょう。電話をさけたほうがいい理由は、先生に伝わりにくいからです。また、文字が見えたほうが伝わりやすくなります。先生方は、会議などに追われて常に忙しくしているので、電話ではゆくっりと聞いてくれない可能性があります。
きちんとした方法で連絡をすれば「特例」として、その子だけにはそのやり方を認めてくれることもあるかもしれません。私もそうしていたときがありました。学校の先生も塾の先生も、子どもにできるようになってほしいことは、同じでしょうから、少なくとも「検討」はしてくるのではないでしょうか。
ただし、教師は、クラスのなかで公に皆に「これでやってもいいよ」とは言えません。理由は先に書いた通り、学級崩壊を起こしかねないからです。保護者から連絡を受けたその子にだけ、そっと、やらせることになります。
何度も書いてきていますが、特例としてその子だけに違うやり方をOKされたとしても、「教師は、一度子どもに指示したことは変えられない」ということは分かっておいていただきたいことです。
基本は、学校・塾の「教え方」「解き方」に合わせるべきですが、特例を認めてくれることもあるかもしれません。ただし、習ったやり方と違う方法で解かせたいときには、先生に連絡を入れておくことが大切です。
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文/須貝 誠(すがいまこと)
塾国語科講師。教育・旅行ライター。現代ビジネス・マネー、コエテコサイト・ソクラテスのたまご、子ども学びラボに執筆あり。著者に「若手教師の働き方」(東洋館出版)がある。教育以外では年間100公演観劇したこともある劇団四季鑑賞マニア。斎藤一人の愛弟子でもある。