春日大社の伝統行事「春日祭」と「春日若宮おん祭」「節分万燈籠」の歴史や見どころを紹介【HugKumお祭りガイド】

春日祭(かすがさい)は、奈良県の春日大社で行われる祭礼です。起源は平安時代にさかのぼるといわれ、祭礼日は毎年3月13日と決められています。春日祭の歴史や春日大社で行われるその他の行事、京都府の西院春日神社で行われる春日祭について紹介します。
<上画像:春日祭 御戸開之儀(Photo by あきはゆうぐれ, Wikimedia Commons>

春日祭とはどんな行事?

奈良県奈良市の春日大社は、全国に約3,000社ある「春日神社」の総本社です。768(神護景雲2)年に創建されたと伝わる神社で、世界遺産にも選ばれています。

春日大社 中門・御廊(重要文化財)

春日大社の祭礼・春日祭について詳しく見ていきましょう。

「日本三大勅祭」の一つ

春日大社で毎年3月13日に行われる春日祭は、京都の下鴨神社・上賀茂神社の「葵祭(あおいまつり)」、石清水八幡宮の「石清水祭(いわしみずさい)」と並ぶ「日本三大勅祭」の一つです。

勅祭(ちょくさい)とは、天皇の使いである「勅使(ちょくし)」が派遣される祭礼を意味しており、天下泰平(てんかたいへい)や五穀豊穣(ごごくほうじょう)を祈ります。勅使が派遣される神社は、春日大社を含めて全国に16しかありません。

春日祭では、勅使が祭文を奏上(そうじょう)したり、神撰(しんせん・神様の食事)を供えたりします。伝統を守る目的から、春日祭の儀式は古代からのしきたりに沿って行われるそうです。

出典:日本三大勅祭のひとつ、春日祭を知ろう! | 奈良市生涯学習財団

1,000年以上の歴史を持つ

春日祭は、849(嘉祥2)年に始まったといわれています。当初は、身を清めた斎女(いつきめ)が、約2,000人もの行列を引き連れて春日大社へ渡ったそうです。斎女とは、神様に仕えるために選ばれた未婚の女性のことです。

勅祭は旧暦2月と11月の申(さる)の日に行われたことから、「申祭(さるまつり)」とも呼ばれました。明治時代に入り、暦が現在の太陽暦に改められたのを機に、3月13日に定められています。

出典:3月の行事 | 春日大社

神事の観覧は認められていない

春日祭の神事は天皇からの使者を招いて行われるため、一般客は観覧できません。3月13日の午前9~12時ごろに実施される神事のうち、観覧できるのは春日大社の二の鳥居付近に限られています。

午前10時ごろになると、平安時代の装束を身に着けた神職や勅使が二の鳥居をくぐります。鳥居の近くにある祓戸(はらえど)神社で儀式をした後、神職たちは回廊内に入って残りの儀式を続ける流れです。

二の鳥居をくぐる神職や勅使 Photo byあきはゆうぐれ, Wikimedia Commons

【春日祭以外】春日大社の代表的な行事

春日大社には、一般客の観覧が認められる行事もあります。春日大社を代表する二つの行事を見ていきましょう。

春日若宮おん祭

1136(保延2)年に始まったとされる、五穀豊穣・国民安寧(こくみんあんねい)などを祈願する祭礼です。祭礼は7月から始まり、例年12月15~18日の4日間で中心的な神事が行われます。12月の大きな祭りであることから、奈良では「1年を締めくくる行事」としても知られているそうです。

見どころとしては、湯立巫女(ゆたてみこ)が観覧客に神聖な湯を振りまく15日の「御湯立(みゆたて)神事」や、約1,000人の奉仕者と約50頭の騎馬が練り歩く17日の「お渡り式」などが挙げられます。

なお、17日はお渡り式以外にも「お旅所祭(おたびしょさい)」と呼ばれる行列や競馬、伝統芸能の奉納などがあります。2024年も例年通りに開催される見込みですが、変更の可能性もあるため詳細は公式サイトでチェックしましょう。

お渡り式の後、一の鳥居そばの影向の松(ようごうのまつ)で行われる松の下式。猿楽座、田楽座による舞が披露される。Photo by Lovelin6th, Wikimedia Commons

出典:
12月の行事 | 春日大社
世界遺産 春日大社/春日若宮おん祭

節分万燈籠(せつぶんまんとうろう)

春日大社の境内にある灯籠に火を灯し、人々の願いがかなうよう祈願する行事です。毎年2月3日の節分になると、境内にある約2,000基の石灯籠(いしどうろう)と、約1,000基の釣灯籠(つりどうろう)の全てに火が灯されます。

春日大社の灯籠は、時代ごとの有力者や一般庶民によって寄進されたものです。なお、日本に残されている室町時代の灯籠のうち、7割近くは春日大社にあるといわれています。

2024年の節分万燈籠も例年と変わりなく、2月3日(土)に開催される予定です。午後6時ごろ灯籠に火が灯り、午後8時30分ごろまでゆっくりと風情豊かな炎の明かりを楽しめるそうです。

幻想的な節分万燈籠

出典:
約3,000基の燈籠に火が灯される。節分万燈籠/春日大社 | 奈良市観光協会サイト

京都「西院春日神社」の春日祭もチェック

京都市右京区にある西院春日神社(さいいんかすがじんじゃ)でも、春日祭が行われます。京都屈指のにぎやかな祭りともいわれる、西院春日神社の春日祭を紹介します。

西院春日神社本殿 Photo by Ritsuka, Wikimedia Commons

毎年10月の第2土曜日・日曜日に開催

西院春日神社の春日祭は、毎年10月の第2土曜日と日曜日に開催されるのが習わしです。2024年は、10月12~13日に開催の予定です。詳細な情報については、公式サイトを確認しましょう。

無病息災・五穀豊穣を祈願して始まったとされる祭りは、神社の氏子たちによって行われます。開催中の2日間は、四条通から三条通にかけて歩行者天国が設けられます。道の両側には多くの露店も立ち並び、にぎやかな雰囲気が特徴です。

春日祭では、祭り行列を従えた神輿(みこし)や剣鉾(けんぼこ)が登場します。氏子たちが担ぐ神輿はいずれも江戸時代に造られたもので、約1.6~2tの重さがあります。

見どころは1,000人規模の神輿渡御

春日祭の見どころは、氏子たちが行う神輿渡御(みこしとぎょ)です。祭り当日になると、東西の組それぞれの氏子たちが神輿を担ぎながら市内を巡行します。重く大きな神輿や剣鉾は扱いが難しく、操縦には高度な技術が求められます。

西大路四条交差点をぐるりと回る「巴周り(ともえまわり)」や、巡行を終えた神輿が拝殿を3度回る「西院の拝殿周り」では、観衆から大きな歓声が上がるそうです。

西院春日神社の神輿 Photo by Ritsuka, Wikimedia Commons

出典:春日祭 | 年中行事 | 春日神社 | 京都市右京区西院

春日大社の伝統行事に歴史を感じる

春日祭は奈良県奈良市の春日大社で行われる勅祭です。例年3月13日と決められていますが、祭礼の細部は観覧できません。春日大社の行事を楽しむなら、春日若宮おん祭や節分万燈籠もおすすめです。

また、京都府右京区の西院春日神社でも、毎年10月の第2土曜日・日曜日に春日祭が行われます。こちらは氏子が主催する華やかな秋祭りで、見ごたえのある神輿や剣鉾が登場します。露店も多くにぎやかな雰囲気なので、家族で楽しめるでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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