2024年の葵祭の開催が決定
京都の葵祭(あおいまつり)は、新型コロナウィルス感染の予防対策として、2020年より関係者のみでの開催となっていました。しかし、2024年はほぼ通常通りの開催が決定しています。イベントの日程や観覧ポイントを見ていきましょう。
開催日は5月15日
葵祭では、5月の初旬より大小さまざまな神事が行われます。なかでも観光客に人気のイベントが、平安時代の王朝文化を体感できる行列「路頭の儀(ろとうのぎ)」です。
2024年は5月15日(水)に開催されることが決まりました。なお、雨天の場合は順延となり、前日に判断されます。
路頭の儀を観覧する際のおすすめスポットは、以下の2カ所です。見学したい人は、早めに行って場所を確保するとよいでしょう。
●京都御所の堺町御門を入って左側の、正面に建礼門が見える場所
●上賀茂神社(かみがもじんじゃ)近辺の加茂街道沿い
ゆったり見たいなら有料観覧席がおすすめ
路頭の儀をゆっくり見たい人には、有料観覧席の利用がおすすめです。椅子に座ってくつろぎながら、総勢500人以上の大行列を見学できます。
有料観覧席が設置される場所は、行列のスタート地点の京都御苑と、下鴨神社参道の2カ所です。なお、チケットの一般販売は4月上旬に始まる予定です。詳細は3月下旬に発表されるので、早めにチェックしましょう。
5月の京都は気温が高く、日差しも強いことが予想されます。さらに、当日は混雑が激しく、トイレや休憩もままならないかもしれません。お子さん連れの場合は特に、必要な持ち物や施設の場所、観覧における注意点をあらかじめチェックし、気持ちにゆとりを持って訪れるようにしましょう。
参考:葵祭「有料観覧席のご案内」|【京都市公式】京都観光Navi
外せない!葵祭の見どころをチェック
葵祭に行くなら、路頭の儀をはじめとする神事は見逃せません。現在開催予定とされている、主な見どころを紹介します。
圧巻の行列「路頭の儀」
路頭の儀は、天皇の使者である「勅使(ちょくし)」らが、下鴨・上賀茂両神社に参向する行列を再現した儀式です。平安時代の貴族の装束を身に着けた人々や馬・牛・牛車・輿などが行列を成し、約8kmの道のりを進みます。
路頭の儀当日のスケジュールは以下の通りです。
●10:30 京都御所出発
●11:40 下鴨神社到着・社頭の儀(しゃとうのぎ)
●14:20 下鴨神社出発
●15:30 上賀茂神社到着・社頭の儀
社頭の儀とは、行列が神社に到着した際に行われる儀式です。勅使役による御祭文(ごさいもん)の奏上や、御幣物(ごへいもつ・神様への捧げ物)の奉納があるほか、神馬の引き回しや「東游(あずまあそび)」の舞の奉奏が行われます。
参考:葵祭「行ってみよう!」|【京都市公式】京都観光Navi
「路頭の儀」までの神事
路頭の儀までに行われる神事のなかで、見ごたえのあるイベントとして知られているのが「賀茂競馬(かもくらべうま)」です。賀茂競馬は1093(寛治7)年から上賀茂神社で行われている神事で、現在の日本競馬の起源ともいわれています。
賀茂競馬では、2頭の馬を1馬身差で走らせ、差が広がると前の馬が、縮まれば後ろの馬の勝ちとなるルールです。さらに、この神事の数日前には、実際に馬を走らせて組み合わせを決める「賀茂競馬足汰式(かもくらべうまあしぞろえしき)」が開催されます。
こちらもあわせて観覧しておくと、競馬をより楽しめるでしょう。2024年のそれぞれのスケジュールは下記の通りです。
●賀茂競馬足汰式:5月1日(水)13:00頃
●賀茂競馬:5月5日(日)14:00~
5月5日は13:00より競馬会(くらべうまえ)の儀が行われ、14:00から競馬が始まります。
参考:
賀茂競馬足汰式(かもくらべうまあしぞろえしき)【上賀茂神社】|【京都市公式】京都観光Navi
賀茂競馬(くらべうま)【上賀茂神社】|【京都市公式】京都観光Navi
長い歴史を持つ葵祭の起源とは
長い歴史を持つ葵祭は、祇園祭(ぎおんまつり)・時代祭とともに京都の三大祭の一つにも数えられています。祭の起源や名前の由来を見ていきましょう。
正式名称は「賀茂祭」という京都の祭
葵祭は賀茂神社の例祭で、正式には「賀茂祭(かもまつり)」といいます。賀茂神社とは「賀茂別雷(かもわけいかづち)神社・上賀茂神社」と「賀茂御祖(かもみおや)神社・下鴨神社」のことです。
葵祭の始まりは、6世紀中頃といわれています。当時の欽明(きんめい)天皇が凶作の原因を占わせたところ、賀茂神の祟りだと分かります。そこで天皇は祟りを鎮めるために、盛大な祭を催しました。すると天候は回復し、五穀豊穣となったそうです。
祭は室町時代後期の「応仁の乱」によって一時中断しましたが、江戸時代に再興されます。このときから路頭の儀で葵の葉を飾るようになったのが、「葵祭」の名前の由来です。
なお、明治時代と第二次世界大戦中にも、葵祭が中断した時期がありました。しかし、その都度復興が繰り返されて現在まで伝わっています。
源氏物語でも語られている
11世紀初めに書かれた「源氏物語」の「葵」の巻で、斎王の御禊の儀式に随行する光源氏を見るためにやってきた、正妻と元恋人による車争いのエピソードが描かれています。
光源氏の正妻「葵の上(あおいのうえ)」が立派な御所車に乗って見物に出向いたところ、すでによい見物場所は人や車で埋まっていました。そこで家来たちは主の権力に物を言わせ、粗末な車を無理矢理立ち退かせます。割り込まれた車の主は、偶然にも光源氏の元恋人「六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)」でした。
六条御息所は相手が恋敵の葵の上であることを知り、恨みをつのらせます。間もなく葵の上は、六条御息所の生霊によって命を落としてしまいました。
長い歴史がある祭を楽しんで
葵祭は今から1,500年ほど前に、天皇の命令で始まった祭です。皇女が斎王として派遣されるなど宮中とのゆかりも深く、平安時代には有名な物語に登場するほど、都の人々にとって身近な祭事でした。
数々の神事を通して当時の様子をしのべる葵祭を、この機会にじっくりと堪能しましょう。
※記事は2024年3月時点の情報です
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構成・文/HugKum編集部