日本はほぼ100%が海上貿易。戦闘によって迂回ルートになり、物価高に直結!海上貿易の現状を知ろう【親子で語る国際問題】

いま知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、私たちの生活に直結する貿易について、日本の海上輸送の現在の懸念も合わせて解説します。

船を利用する海上貿易がほぼ100%の日本 航空機での貿易はほとんどない

 皆さんが知っているように、日本は島国で、日本は貿易のほぼ100%を海に頼っています。日本は経済的に発展し、治安も良く、四季を味わえる非常に魅力的な国ですが、石油や天然ガスなど資源は乏しく、食物を含めその多くを外国からの輸入に頼っています。日本独自で自給自足を進めることはできません。

海上貿易のメリットは?

日本は石油や天然ガス、バナナやカカオ、牛肉や魚介類など多くの輸入し、車の製造に必要な部品を輸入し、完成した車を輸出していますが、それらはほぼ全てが船による輸送です。車など重いものは飛行機で運ぶことはできませんし、重量のあるものをたくさん輸入、輸出できること、これが海上貿易の大きな利点です。

飛行機による輸送は早いというメリットがありますが、離発着できる回数は限られ、船に比べて重量に限界があります。車100台を飛行機1機で運ぶのは難しいでしょう。

海上輸送がなければ、石油が日本へ運べず、皆さんのマイカーや日頃日常的に使うバスは走ることができず、日常生活を送ることができません。また、コーヒー豆が日本へ届かないとスターバックスやドトールコーヒーなどカフェも営業ができないか、値段が跳ね上がるでしょう。
それほど海上輸送は私たちの生活にとってとても重要なのです。

今日の海上貿易に影響を及ぼす可能性がある出来事とは?

一方、今日の世界情勢を見渡せば、私たちの生活に影響を及ぼしそうな出来事がいくつか見られます。

 まず、中東地域ですが、昨年10月以降、イスラエル軍とイスラム主義組織ハマスとの間で戦闘が激しくなり、ハマスの本拠地であるパレスチナ自治区・ガザ地区では犠牲者数が2万5000人を超えていますが、イスラエルから南東に2000km離れたイエメンでは、ハマスの味方である「フーシ派」という武装組織が、イエメン沖の紅海を航行する船舶への攻撃を激化させています。イエメン沖の紅海はスエズ運河への入り口となり、世界中の船舶がここを通ります。日本と欧州を結ぶ船舶もここを通過します。


 しかし、フーシ派が外国船舶への攻撃を続けるので、日本郵船や商船三井、川崎汽船の日本の大手海運3社は1月、それぞれの船舶が紅海〜スエズ運河ルートを航行するのを停止しました。それによってアフリカ大陸の最南端、喜望峰を通るルートに変更となったのですが、日本と欧州を結ぶにしても日数が大幅に増え、輸送コストも跳ね上がるなどしており、同3社は大きな悩みに直面しています。たとえば、イタリアやフランス、スペインなどからはワインやチーズが日本へ運ばれますが、それらもスエズ運河や紅海を通ってきたので、今後値段が上がることなどが懸念されます。

台湾情勢も懸念されている

また、日本周辺ではやはり台湾情勢が心配されます。台湾では1月に次の指導者を選ぶ総統選挙が行われ、これまでと同じく米国との関係を重視し、中国の圧力には屈しない姿勢を堅持する候補者が勝利しました。今後も中国と台湾の関係は冷え込んだ状態が続くでしょう。しかし、すぐに台湾で戦争が始まるわけではありませんが、その前に中国の軍隊が台湾の東側の海や南側の海で軍事訓練を活発化させ、台湾周辺の海域が通れなくなる可能性が指摘されています。

 実は、欧州や中東、東南アジアなどから日本へ向かう船舶は、台湾の南側と東側の海を航行するのですが、中国の軍隊がそこを陣取るようになると、インドネシアからフィリピンなどもっと東側のルートを航行することになるかもしれません。この際も、輸送コストは跳ね上がり、到着への日数も大幅に増えることになります。

 私たちは普通にバナナやパイナップル、チョコレートを食べていますが、それらは全て海上輸送によって運ばれてきます。それを私たちは当たり前のように思っていますが、今日、その海上輸送を脅かす問題が浮上しているのです。

この記事のPOINT

①日本は島国で、ほぼ100%海上貿易。

②世界の情勢により、航路が変わることで、運輸コストや、輸送にかかる日数に影響が出る。

③現在は、紅海~スエズ運河ルートでの輸送が難しいため、ヨーロッパとの貿易が南アフリカの喜望峰を通るルートに。

記事執筆/国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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構成/HugKum編集部

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