桜餅は長命寺と道明寺の2種類
「長命寺(ちょうめいじ)」「道明寺(どうみょうじ)」は、どちらも桜餅を指す言葉です。桜餅の特徴と名前の由来、食べられている地域などを紹介します。
ひな祭りに食べる桜餅
桜餅は、春に食べる伝統的な和菓子の一種です。小麦粉やもち米、小豆餡、桜の葉の塩漬けなどを使用して作ります。
生地が桜色なので、春らしさを感じられるのが特徴です。2月ごろから4月上旬ごろまで、和菓子店やスーパーの和菓子売り場などに並んでいるのを見かけるでしょう。
販売時期がひな祭りに近いことから、雛菓子としても食べられます。見た目が春らしく、華やかなところが魅力です。
関東風の長命寺
桜餅の起源は関東といわれています。関東風の桜餅は、別名を「長命寺」「長命寺餅」といい、東京都墨田区にある長命寺が由来です。
江戸時代に、桜の名所にある長命寺の門番をしていた男性が、桜の落ち葉を掃除していた際に思いつき、門前で売り始めたとされています。
花見に訪れた人々が喜んで食べたことで、大ヒットしました。関東風の長命寺は関東地方全域だけでなく、青森県や岩手県などの東北地方や、山陰地方の島根県と鳥取県でも食べられています。
関西風の道明寺
関西風の桜餅である道明寺は、江戸で人気のあった長命寺を参考にしたものが起源だといわれています。もち米を原料にした「道明寺粉」を使っているため、道明寺と呼ばれるようになりました。
登場した時期や場所には、明治時代に入ってから桜の名所・京都の嵯峨(さが)で売り出された、1800年代前半に大阪で売られていたなどの説があります。
道明寺は関西だけでなく、北海道・九州・沖縄などでも食べられています。北海道は日本海を経由して西日本と交易をしていたため、関西風の桜餅が伝わりました。東日本の中でも日本海側にある地域では、関西風の桜餅が広まったケースもあります。
関東風の長命寺の特徴や作り方
同じ桜餅でも、関東風と関西風には大きな違いがあり、見た目も食感も違います。関東風の長命寺の特徴や作り方を見ていきましょう。
長命寺はクレープ状の桜餅
関東風桜餅の長命寺は、小麦粉などを使用したクレープ状の生地で餡子(あんこ)を巻き、桜の葉の塩漬けで包んだスタイルです。丸く焼いた生地でくるっと包むので、筒型の形状になります。
関東風の桜餅に使用する桜の葉は、大きめのものが好まれる傾向です。市販の桜の葉の塩漬けは、ほとんどが大島桜の葉を原料としています。
また、桜餅といえば独特の香りが特徴です。桜の葉を塩漬けにすると、桜餅独特の芳香成分である「クマリン」が生まれます。
長命寺の作り方
長命寺は市販の練り餡を購入すれば、意外と簡単に作れます。材料と作り方を見ていきましょう。
◆材料
(約8個分)
小麦粉:70g
白玉粉:15g
砂糖:20~25g
塩:少々
水:170mL
食紅:少々●練り餡:200g程度
桜の葉の塩漬け:8枚
◆作り方
【1】桜の葉の塩漬けを水洗いし、水を張った容器に入れて10分程度塩抜きをする
【2】俵型に丸めた餡子を8個作る
【3】白玉粉に少量の水を加え、ふるった小麦粉・砂糖・塩を入れてよく混ぜる
【4】少量ずつ食紅を入れて生地を桜色にする
【5】熱したフライパンに油を薄くひき、楕円形になるように生地を焼く
【6】粗熱を取った生地の端に2の餡子を乗せて巻く
【7】葉脈が表になるように、水気を切った桜の葉を巻いて完成
関西風の道明寺の特徴や作り方
関西風の桜餅は、関東風とは生地に使用する材料が違います。関西風の道明寺の特徴や、作り方を紹介します。
道明寺はつぶつぶとした食感の桜餅
関東風との大きな違いは、生地の材料や形状です。関西では関東とは違い、小さめの桜の葉が好まれるといわれています。
名前の由来ともなっている道明寺粉は、もち米を蒸して乾燥させ粗挽きしたもので、つぶつぶした食感が特徴です。饅頭のように生地で餡子を包むので、丸い形になります。
道明寺粉は、大粒や中粒など粒の大きさに種類があります。滑らかな食感が好みの場合は、より細かい粒のものを選ぶとよいでしょう。桜餅以外にもおはぎや団子作りに使用でき、シュウマイの皮代わりなどにしてもおいしく食べられます。
道明寺の作り方
道明寺粉はもち米を粗く砕いたものなので、火が通りやすく家庭でも比較的簡単に調理できます。材料と作り方を見ていきましょう。
◆材料
(8個分)
道明寺粉:100g
砂糖:25g
水:200mL
食紅:少々
練り餡:200g程度
桜の葉の塩漬け:8枚
◆作り方
【1】 桜の葉の塩漬けを水洗いし、水を張った容器に入れて10分程度塩抜きをする
【2】丸めた餡子を8個作る
【3】鍋に水を入れて沸騰させ、道明寺粉・砂糖・食紅を入れてよく混ぜる
【4】再び沸騰したら弱火にし約6分間煮る
【5】ふたをした状態で、10分程度蒸らす
【6】手水(分量外)を使って生地を円形に伸ばし、2の餡子を包む
【7】【6】が冷めたら、葉脈が表になるように桜の葉を巻く
長命寺と道明寺を食べ比べてみよう
長命寺と道明寺は形状や食感が異なりますが、どちらも桜餅と呼ばれ、主にひな祭りの時期に食べられる和菓子です。両者の違いを知るには、家庭で手作りするのもおすすめです。材料さえ手に入れば、作るのはそれほど難しくありません。
餡子を皮で包む作業や桜の葉を巻く作業は、子どもに手伝ってもらってもよいでしょう。ひな祭りやお花見のデザートに、長命寺と道明寺を手作りし、食べ比べてみてはいかがでしょうか。
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構成・文/HugKum編集部