【学童の壁】子どもが嫌がる、3年生でも地域によっては入れない…子育ての“壁”を乗り越えて、共に育む喜びを

自分が子どもだった頃に比べて、働く母が多くなったことを実感するシーンが増えてきていますよね。厚生労働省「2021年(令和3年)国民生活基礎調査」で、18歳未満の子どもがいる世帯の母親が仕事をしている割合が75.9%となり、過去最高を更新したことを公表しました。 実に4人に3人が、18歳未満の子どもを抱えながら仕事をしていることになります。
母親の就業率が上がっている中で、問題となるのが子どもの預け先。この問題と向き合っている方は多いのではないでしょうか。

働くママパパと子どもの学童問題「小4の壁」

ニュースでもよく取り上げられてきた「待機児童」という言葉は、子どもを保育園や学童に預けられない現象から生まれた言葉です。待機児童は以前に比べて減少傾向にありますが、こども家庭庁はその理由を保育の受け皿の拡大や、就学前の子どもの数が想定以上に減少し申込者数が見込みを下回ったことなどが要因だとしています。 一方で、特定の地域で申し込みが集中するなど需要に偏りがあることや、保育士が確保できず定員が減少し待機児童が増加した地域もあるということです。

その中で、今回注目をしたのが「学童」について。これまで、小学校入学時に入所困難と言われる小1の「壁」、多くの学童で退所せざるをえなくなる小4の「壁」が学童の悩みとして話題に上がってきました。子ども自身の心身の成長速度や家庭の方針、学童状況、地域性によっても悩みは様々。

そこで今回は、共働きの家庭が通常となってきた昨今、「学童」とどう向き合ってきたのか、リアルな声を3つご紹介します。

Hugラボメンバー Aさん(お子さん:小5男子、小3男子、年長女子)

-Aさんは、朝早くから、かつ土曜も仕事でやりくりが大変だったそうですね。

「はい、それはもう(笑)。保育園時代は朝7時からMAX20時まで預けられていましたが、学童は預かり時間が朝7時30分からで、これだと仕事に間に合わなく…。また土曜日に預ける人は数える程度しかいないことが判明! 保育園と学童の預かりの時間の差や、周りとの差があることを知り、困ってしまいました」

-保育園と学童の差、という壁に直面したのですね。

「それでも長男は学童に比較的なじんでくれましたが、次男が小学校に入学してからは、学童から脱走をしたり、『土曜日行きたくない!』と言うようになり、いよいよ本格的に対策を考えないといけなくなりました」

【対処法:転職をする/最新のアイテムの導入】

-それで転職を決意されたんですね。

「はい。これまでは夫の協力や近所の同じ境遇のママ友と力を合わせて何とか乗り切ってきましたが、いよいよ限界を感じ、仕事を替えることを決意したんです。リモート、6時間勤務など、朝の時間も対応が出来て、今の子どもの成長に沿った働き方が出来る会社に転職をしました」

-長期休みはどうされていますか?

「夏休み中は、希望をすると午前中のみ学童の利用が可能な地域に住んでいるため、午前中は出社をして午後のみリモートにするなど柔軟に対応をしています。また、近くに住んでいる祖父母に協力をお願いする、水泳など送迎ありの習い事を入れる、家のWi-fiを感知すると保護者の携帯に通知がくるシステムの導入や見守りカメラを設置して子どもの様子を見る、など留守番もスタートするようにして対応しています」

見守りカメラを天井に設置

-会社の制度、ご家族、デジタル機器と様々なものを駆使していますね。

「また、あらかじめ近所の方に共働きであることを伝えていることで、優しく見守って頂いてまして…困ったことがあった際には助けてくれるので、大変頼り甲斐のある存在になっています。感謝ですね」

  • HugKum読者 Nさん(お子さん:中1女子、小5女子、小1男子)

-Nさんは真ん中のお子さんが学童を利用されていたとのことですね。

「以前は出社が必須の会社で働いていましたが、第3子の妊娠を機に退職。それからしばらく専業主婦をしていましたが、次女が小2の時に、リモートが可能な仕事に就くことになりました。その際に、次女のみ学童利用を開始したんです」

-学童の入所状況はどのような感じですか?

「うちの地域は、住所によって入れる学童が固定で決まっており、その代わり希望した人は誰でも入れます。希望をすれば小6まで預けられますが、大体が小4で抜けていきますね。次女からも、4年生になったときに学童を辞めて長女と一緒に留守番をしたいと言われました」

姉妹で留守番したいと言われるように

【対処法: 姉妹で過ごし、乗り切る/近所の友達に助けてもらう】

-大体3~4年生頃から下校時間も遅くなり、友だちづきあいもあって学童を嫌がるようになるパターンが多いようです。

「そうですね。長女は最初から学童を希望せず、習い事(塾など)をすることで留守番時間を減らして乗りきりました。次女が小4になって学童を辞めてからは、2人で同じ習い事に行ったり、留守番が出来るようになったので助かっています。2人でいることの安心感もあります」

-長期休みはどうされていますか?

「午前中は出社、午後はリモートを活用し、同じ習い事に通っている近所のお友だちの助けや夫との協力で乗り切っています」

  • HugKumデスクK(子ども:小4女子、小1女子

-Kさんの地域は、3年生でもう学童に入れなかったのですよね?

「そうなんです。ここ数年、地域で子どもの数が爆増して。 3年生の進級時には学童に入れない状況になってしまい学校内の放課後教室(※学童とは違い誰でも利用可能)を使うことにしたんですが、子どもが『狭いしあまり行きたくない』と言い始めるようになりました」

-となると、お留守番させる形でしょうか。

「ただ初めのうちは1人で留守番をすることもまだ不安そうで。うちの地域では、小3になりたての頃は学校のルールで1人で自転車で出歩くこともNG。遊びや習い事に行くにも親の送迎や付き添いが必要で、どうこの状況と向き合っていくかを考えていくことになりました」

【対処法: 仕事にリモートを取り入れる/長期休暇制度を活用】

-リモートはパパさんと分担して、でしょうか?

「はい。夫と協力をして、お互い週1~2回ずつリモートを取り入れることで対応することにしました。コロナ禍以降、在宅勤務制度が整ったことは救いでしたね。ただ、夏休みが壁でした。我が家は祖父母もあまり頼れないため、自社の長期休暇制度を夏休みに合わせて利用して、2週間私の長期休暇、1週間夫の夏休み、残り1週間は互いにリモートを駆使してなんとか乗り切りました。科学館なども行けたので、結果的に充実していたかなと。

3年生後半からは1人での自転車を使用した外出、留守番も怖がらずできるようになり、いろいろなことがスムーズに回るように。キッズケータイを持たせて、安全面でも気をつけるよう家庭内で話しています」

長期休暇制度を利用し、夏休みにお友だち家族とおでかけ

-下のお子さんは4月から1年生ですね。学童入所でしょうか?

「はい、学童利用です。上の子はもう留守番も慣れたものなので、引き続きリモート勤務も併用しつつ、対応してきたいと思います」

自身の働き方を変えることで、柔軟に対応

3者3様のお話を伺い、学童に対する国や自治体の対応、会社の変化を待つのではなく、自身の働き方を変えることで「壁」に向き合っていることが分かりました。ただ、みんながみんな働き方を変える選択をできるわけではないので、悩んでいる人は多くいることでしょう。

コロナ禍で“リモート”が生まれたことは、まだまだ目や手が離せない年代のお子様を持つ家庭にとっては大きな変化となりました。ただ、コロナ禍後は、リモートを禁ずる会社や出社必須の会社が多くなったとの声もあります。それにより悩みを生み出している側面があることも事実。今後は、会社選びの大事な項目になるかもしれませんね。

学童、習い事、帰宅…親の働き方次第で子どもの選択肢も増える

子どもにも選択肢がある。学童はあくまでその一つ

放課後に学童へ行かせることに、罪悪感をもつ人もいるかと思います。ただ1人だけの力では成し得ないのが子育てであり、お話をお伺いした3名共に、パパや祖父母、近所の方など多くの人に助けられていることがよく分かります。学童も手助けをしてもらうための選択肢として考えると、「子どもを預けること=罪悪感」が薄まるのではないでしょうか。

また、入所が困難になる「壁」問題がクローズアップされがちですが、保護者は学童に預けたくても、子どもが学童を嫌がるといったケースも散見されます。学童のお友だちが必ずしも仲の良いお友だちというわけではないこと、実際に自分のお友だちが遊びのお約束をしていることなどを理解し、なんで自分は遊べないの?と気づくのが小4あたりからなのかもしれません。

特に話を伺った中で印象的だったのは、学童に入るかどうかを悩んでいる時に、“子どもにも選択肢がある”とお子さんから言われたというNさんのエピソード。子どもの預け先の選択肢は親主導で考えるものではありますが、小1と小4のできることが異なるように、年齢によっても選択肢が異なってくることは自然なことです。しかし、親も子どもも安心して預けられる選択肢は、学童か否かしかないのが多くの現状。児童館や放課後教室、こども食堂など、子どもの年齢や興味によって子ども自身が選べる環境が今よりも整ってくれると、子育てがよりしやすくなっていくのではないでしょうか。

「壁」という言葉が減ることを願って

また、こういった現状を「壁」と言われることで、子どもを持つことは大変そうだから子どもはいらない、という風潮が生まれることも。もちろん「育てる」ということは簡単ではありませんが、それでも成長を見つけるたびに喜びを感じ、自分の知らなかったことや世界を教えてくれる日々はとても楽しいです。こんなに誰かに必要とされて無償の愛を与えられていること、愛されているのは親の方だと筆者は思っています。それが何よりもパワーになるからこそ、「壁」と言われるものにも毅然に、そして柔軟に立ち向かっていけるのです。

本質的に子どもを育てやすい世の中になるような政策が生まれて、今よりももっと子育てがしやすい世の中になると「壁」いう言葉も減るかもしれませんね。

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 文・構成/伊藤有佳

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