目次
食品による窒息死は0~5歳が90%以上。しかし小学生、中学生でも亡くなる子が
2021年 消費者庁が発表したニュースリリース「食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!」によると、気道閉塞を生じた食品の誤嚥による年齢別死亡者数は
0歳 26件
1歳 18件
2歳 15件
3歳 5件
4歳 5件
5歳 4件
で、5歳以下で全体の90%以上を占めます(n=80、厚生労働省の人口動態調査<2014年から6年間>をもとに消費者庁で独自に分析した結果)
過去には、中学生がパンをのどに詰まらせる事故も発生
6歳以上でも食品の窒息事故は起きています。2024年2月に福岡県の小学校で起きた、うずらの卵による窒息事故は記憶に新しいところですが、過去には中学生が給食の時間に友だちと早食い競争をしてパンをのどに詰まらせて窒息死する痛ましい事故も起きています。そのため就学後も食品による窒息事故には、十分注意が必要です。
食品などを詰まらせると、わずか数分で呼吸は止まる
子どもの食品などによる窒息事故を防ぐには、予防が第一です。もし食品などを詰まらせて窒息した場合、わずか数分で呼吸は止まり、心停止する危険性があります。まわりにいる大人がすぐに気付いて対処しても、詰まらせたものをすぐに吐き出させないと命を救うのは困難です。一命を取り留めても、重い後遺症が残ることもあります。そのため窒息事故が起きないように予防を心がけてください。
窒息を起こしやすい食品の3つの特徴
窒息を起こす原因の1つは、食品の形状・特性です。窒息のリスクが高い食品は、次の3つです。
<丸くてつるっとしているもの> ブドウ、ミニトマト、さくらんぼ、ピーナッツ、うずらの卵、 ソーセージ、こんにゃく、白玉団子など
表面がつるっとしている食品は、うまく噛めなかったり、口の中で滑りやすく、ちょっとした拍子に丸飲みしてしまうことも。とくに丸い形状は、のどにはまり込んで気道を塞ぎやすいため、窒息につながる危険性が高いです。
<粘着性が高く、唾液を吸収して飲み込みづらいもの> 餅、ごはん、パン類など
粘着性が高い食品は、一口にたくさん詰め込んだり、よく噛まずに飲み込んだりすると、口の中に貼り付いて取れにくくなり、気道を塞ぐ危険性があります。餅は詰まりやすいことは知られていますが、パンやごはんも口の中で唾液を吸収すると粘着性が高まるので注意が必要です。
<固くて噛み切りにくいもの>りんご、生のにんじん、水菜、イカなど
十分に噛まずに飲み込むと、窒息につながるリスクがあります。
ミニトマトなどは、4歳以下は1/4に切って与えて
日本小児科学会では、たとえば「1 丸くてつるっとしているもの」は、4歳以下の子どもには1/4に切って与えるように。ピーナッツなどの豆類は未就学児には与えないように推奨しています。
また年齢と併せて、子ども自身の噛む力や飲み込む力を見て判断することも大切です。
食事中は立ち歩いたり、ふざけないことを根気よく教える
窒息事故を起こすもう1つの原因は、食事のときの子どもの行動です。食事の最中に歩き回ったり、ふざけたり、1度に多くの量をほおばったりするのは大変危険です。「よく噛む」「水分をとって、のどを潤してから食べる」ことを、子どもに根気よく伝えていきましょう。
チョークサインなどが見られたら窒息を疑う
万一、食品などが詰まって窒息した場合、5~6歳以上だとのどを手でおさえるチョークサインが見られます。
また乳幼児の場合は、チョークサインはしません。よだれを垂らして苦しそうな表情をする、動かないなどいつもと違う様子が見られます。
窒息したら、救急車を呼ぶと同時にすぐに対処を
上記のような様子が見られたら、すぐに次の手順で詰まったものを吐かせます。異物が取り除けないと数分で呼吸は止まり、心停止してしまいます。とにかく早く吐かせることが大切です。同時に救急車も呼んでください。
もしママ(パパ)1人しかいないときに、子どもが窒息したら、スマートフォンをそばに置き、スピーカーモードで119番をして救急車を呼びながら、次の手順に従って、詰まったものを取り除いてください。
詰まったものが取り除けた後も、ゼーゼーしたり、咳込むときはすぐに小児科を受診しましょう。
<1歳未満の対処法>
1~3の順に従って、のどに詰まったものを取り除きます。
1 口の中を確認する~指を入れる、水を飲ませるはNG!
すぐに口の中を確認します。口の中に、詰まったものがはっきり見える場合は指で取り除きましょう。ただし詰まったものが見えなかったり、少しだけ見える場合は、指を入れて取り出そうとするとかえって奥に詰めてしまうので、絶対に指を入れないでください。水を飲ませるのも絶対NG。異物が取り除けない場合は、背部叩打法をすぐに行います。
2 背部叩打法
片方の手で子どものあごを支えて、腕やひざの上でうつぶせにします。子どもの頭は体よりも低い位置にします。もう片方の手の付け根で、子どもの背中の肩甲骨の間を強く5回叩きます。口の中を確認して異物が見えたら取り除きます。異物が取り除けない場合は、すぐに胸部突き上げ法を行います。
3 胸部突き上げ法
片方の手に乳児の背中をのせて、手のひら全体で子どもの首を支え、頭が体よりも低い位置になるようにします。左右の乳頭の真ん中よりやや下に人差し指と中指を置き、胸の真ん中を5回強く押します。口の中を確認して異物が見えたら取り除きます。
異物が取り除けない場合は、背部叩打法と胸部突き上げ法を繰り返します。
<1歳以上の対処法>
1歳未満同様に「1 口の中を確認する」「2 背部叩打法」を行います。それでも異物が取り除けない場合は、腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)を行います。
腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)
子どもに「大丈夫だよ。今から出してあげるからね」と声をかけます。子どもの後ろから腕を回して片手で握りこぶしを作り、親指側をへそ側にしてみぞ落ちの下に当てます。もう片方の手を添えて、素早く手前上方に向かって、強く押して5回突き上げます。
異物が取り除けない場合は、背部叩打法と腹部突き上げ法を繰り返します。
背部叩打法、胸部突き上げ法、腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)の仕方は、日本小児科学会のサイト内「食品による窒息 子どもを守るためにできること」の後半 対応編の中で動画を紹介しています。
食品による窒息 子どもを守るためにできること|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY (jpeds.or.jp)
脱力や意識がないときは、すぐに心肺蘇生を開始
詰まったものが取り除けず、子どもの力が抜けたり、呼びかけても意識がない場合は心停止が疑われます。すぐに心肺蘇生を行いましょう。
心肺蘇生の方法は、東京消防庁のサイトで動画を紹介しています。
心肺蘇生はコツが必要なので、講習会に参加して実際に人形を使って練習するといいでしょう。子育てで忙しいとは思いますが、大切な子どもの命を守るためにも1~2年に1回は講習会に参加することを勧めます。
記事監修
竹井寛和先生
日本小児科学会専門医、指導医。日本救急医学会専門医。日本小児救急医学会代議員。
取材・構成/麻生珠恵