領土問題とは何か?
世界には、「領土問題」に頭を抱える国が多くあります。日本は他国と陸地で接していない海洋国ですが、領土を巡る対立が生じています。そもそも、日本の領土とはどこを指すのでしょうか?
他国との領有権を巡る争いのこと
領土問題とは、他国との領有権を巡る争いのことです。領有権とは、特定の陸地・水域・空域を自国のものとする権利です。国が国として成り立つには、「政府」「国民」「領土」が欠かせません。領土内では、その国の法律が適用されます。
もし領土が他国に奪われれば、自分のふるさとを追われる人が増えるでしょう。場合によっては国の滅亡につながるため、どの国も領土を奪われないように必死で守っているのです。
現在の日本の領土は戦後に確定
日本の領土は、1952年4月発効の「サンフランシスコ平和条約」によって確定しました。日本は第2次世界大戦後、GHQ(連合国最高司令官総司令部)に統治されていましたが、条約の発効によって主権が回復し、独立を果たします。
日本と条約を調印した国は、ロシア・ポーランド・チェコスロバキアを除く48カ国です。領土について、日本は以下のような内容に同意しました。
●朝鮮の独立を承認する
●台湾・澎湖諸島(ほうこしょとう)・千島列島・南樺太を放棄する
●北緯29度線以南の南西諸島や小笠原諸島などをアメリカの施政権下に置く
施政権とは、国連の信託を受けた国が特定の地域を統治する「信託統治」において、立法・司法・行政の三権を行使する権限を指します。
▼「サンフランシスコ平和条約」についてはこちら
北方領土
日本の領土問題というと、ロシアとの「北方領土問題」を思い浮かべる人は多いでしょう。問題の場所や経緯、両国の主張を見ていきましょう。
※ロシアは、1922年にソビエト連邦が成立してから1991年に崩壊するまでは「ソ連」と呼ばれていましたが、ここでは「ロシア」で名称を統一します。
問題の場所と経緯
北方領土とは、北海道の北東に位置する「北方四島」を指します。日本はロシアより先に島々を発見し、19世紀初めには実効支配を確立しました。
●択捉島(えとろふとう)
●国後島(くなしりとう)
●色丹島(しこたんとう)
●歯舞群島(はぼまいぐんとう)
1855年にロシアとの間で締結した「日魯通好条約(にちろつうこうじょうやく)」では、択捉島とウルップ島の間に両国の国境を確認しています。
1875年の「樺太千島交換条約」で、日本は樺太の権利を放棄し、代わりに千島列島をロシアから譲り受けました。日露戦争後の「ポーツマス条約」でも、樺太の北緯50度以南の土地を譲り受けています。
第2次世界大戦に敗北した日本は、1945年8月に連合国側の「ポツダム宣言」を受諾し降伏します。しかし、その直前に対日参戦したロシア(当時はソ連)は日本への攻撃を続け、北方四島を占領しました。
日本の基本的立場とロシアの主張
日本政府によると、北方四島はこれまで一度も他国の占領下に置かれたことのない「日本固有の領土」です。サンフランシスコ平和条約で領土権を放棄した千島列島にも、北方四島は含まれないとしています。
ロシアに占領された当時、島には1万人以上の日本人が暮らしていましたが、ロシア人は1人もいなかったといわれています。日本政府は北方領土の返還を求め、ロシア政府と粘り強く交渉をしていく構えです。
一方ロシアは、「ヤルタ協定」を引き合いにして、自国の領土であることを主張しています。ヤルタ協定とは、1945年2月にアメリカ・イギリス・ロシアの間で締結された秘密協定です。
協定には、「樺太の南部とこれに隣接する一切の諸島はロシアに返還する」「千島列島はロシアに引き渡される」と記載があります。なお、日本はヤルタ協定の当事者ではないため、協定には拘束されません。
▼「ヤルタ協定」についてはこちら
竹島
「韓国が竹島を不法占拠した」というニュースがたびたび流れますが、日本と韓国は日本海にある「竹島」の領有権を巡って対立しています。対立の背景には何があるのでしょうか?
問題の場所と経緯
竹島は、島根県の沿岸より約211km離れた場所にあります。女島(東島)・男島(西島)・数十の小島から構成されており、面積は約0.20平方kmです。
日本は17世紀初めから、航路の目印やアシカ漁獲地として竹島を利用していました。政府は1905年に島根県に編入し、「竹島」と命名します。
韓国との対立が生じたのは、サンフランシスコ平和条約の調印以降です。韓国はアメリカに「日本が放棄する地域に竹島を加えてほしい」と申し出ましたが、竹島は朝鮮の領土ではないため、申し出は却下されました。
1952年、韓国の初代大統領である李承晩(イスンマン)は、日本海上に「李承晩ライン」を設定し竹島を取り込みます。
日本の基本的立場と韓国の主張
日本政府は、「歴史的にも国際法上も明らかに自国の領土である」という姿勢を貫く構えです。1954年・1962年・2012年の3回にわたり、日本は韓国に「国際司法裁判所」への付託を提案しました。
オランダのハーグにある国際司法裁判所は、国際法に基づき国家間の紛争を裁判する唯一の国際法廷です。日本の再三の提案にもかかわらず、韓国は提案を全て拒否しています。
韓国は鬱陵島(うつりょうとう)と竹島が地理的に近いことや、古文献・古地図に竹島の記述があることなどを理由に自国の領土と主張しています。
尖閣諸島
「中国海警局の船舶が日本の領海に侵入した」というニュースを耳にしたことがある人もいるでしょう。中国は尖閣諸島の領有権を主張し、島周辺の領海にたびたび接近しています。
問題の場所と経緯
尖閣諸島は、沖縄県石垣島の北方約170kmに位置する島々の総称です。久場島(くばじま)とその周辺の小島は私有地で、その他は国有地とされています。
現在は無人島ですが、かつては日本のかつお節工場がありました。第2次世界大戦前は、200人以上の住民が住んでいたといわれています。
サンフランシスコ平和条約において、尖閣諸島は日本の一部としてアメリカ軍の施政下に置かれました。この時点では、中国からの異議はありません。中国が初めて尖閣諸島の領有権を主張したのは、1971年です。
日本の基本的立場と中国の主張
日本政府は、中国と日本の間には争うべき領土問題はないとしています。尖閣諸島は、歴史的にも国際法的にも、日本の固有の領土であるという見解です。
一方で中国は、「尖閣諸島を最も早く見つけて利用した」「日清戦争後の下関条約で、台湾の付属島嶼(ふぞくとうしょ)として日本への割譲を強いられた」としています。
中国が領有権を主張し始めたのは、東シナ海における石油埋蔵の可能性が指摘された直後でした。このため日本政府は、海底資源を狙っての主張とみています。
領土問題に対する日本の対応に今後も注目
日本は、ロシア・韓国・中国との間に領土問題を抱えています。互いに主張を一歩も譲らないため、解決には長い時間がかかるかもしれません。
領土問題は、経済活動や民間交流にも大きな影響を及ぼします。歴史的事実と客観的な根拠に基づき、冷静に話し合う姿勢が求められるでしょう。
当事者同士の話し合いが平行線をたどるときは、国際司法裁判所に付託する手段もあります。今後、日本がどのように問題に対処していくかに注目したいところです。
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構成・文/HugKum編集部