【私たち地方移住して子育てしてます!】3人目の子供の誕生をきっかけに、横浜から南足柄へプチ移住。豊かな自然を満喫し、地元の人たちとふれあう充実の日々

建築家の島崎衛さん(50歳)は、3人目のお子さんの誕生をきっかけに‶プチ移住〟を決意。横浜から神奈川南部に位置する南足柄市で土地を購入し、自ら設計した高性能住宅を建てて2022年4月から移住しました。移住をするまでに至った経緯と、移住後の生活について伺いました。

3人目が生まれることがわかり移住を決意。ライフクライシスも理由のひとつでした

南足柄市に“プチ移住”した建築家の島崎衛さん

地方移住をしようと思ったのは、次女が生まれることになったのが大きなきっかけでした。それまでは横浜郊外の約18坪の狭小住宅に、妻と私、長男、長女の4人で暮らしていたのですが、子どもが3人になり家族5人で暮らすのは、さすがに無理があるのではないかと思ったのです。ちょうどコロナ禍がはじまりまして、家にいるのが多くなったことも影響したと思います。いまの場所より環境のよいところで子育てをしたいという思いもありました。

また、じつを言うと、その当時、私はライフクライシスにも陥っていまして、このままこれまでと同じ仕事のしかたをしていていいのか悩んでもいたんです。仕事自体は面白かったのですが、先々のことや仕事の責任の重圧などを考えてしまい、東京にあるオフィスから距離をおきたいという思いがありました。

ただ、横浜で関わっている建築コンサルティングの仕事は継続したかったので、仕事をしていく上で「引っ越しをしました」と言わなくてもいいエリアに移り住みたいと思ったんです。

 

それで、見ず知らずの場所ではなく、多少土地勘のある神奈川の三浦半島や鎌倉、茅ケ崎、また、小田原や三島など、新幹線で大体1時間前後で、仕事場に通えるエリアをピックアップして、家族みんなで訪れて引っ越し先を探しました。それが、わが家の移住を私が‶プチ移住〟と呼んでいる理由です(笑)。

左から島崎さん、上の娘さんと二番目の息子さん

‶人の縁〟を感じ、妻と娘が気に入った場所が「南足柄」でした

 そんな中で、2021年に訪れた小田原市の移住担当者の方との出会いが、南足柄へ足を運ぶことになったきっかけでした。

小田原市は、神奈川県の中でも個人の移住促進に早くから力を入れている自治体で、私が問い合わせをしたときも「おためし移住」など、さまざまな移住への支援制度が設置されていて、心魅かれた場所でした。ただ、交通の便もよく人気エリアなので、土地の値段が思い描いていたものより少々高かった。もう少し広い土地がいいなと思っていたら、対応してくださっていたのが小田原お試し移住企画をされているゲストハウスオーナーをされている方だったのですが、その方が南足柄に住まれていることを聞き、ふと「南足柄はどうだろう?」と興味を持ったのでした。

聞けば「いいところ」だというので、その流れで南足柄を訪れてみると、市内中心を流れる狩川と大雄山最乗寺方面の山が美しく望めるこの景色を妻と娘がとても気に入りました。その中で建築条件やさまざまなことを勘案した結果、目の前が休耕田で広々としている土地に決めました。現在は、自宅前の休耕田を土地の持ち主の方からご厚意でお借りして自家菜園にしています。

妻と娘が気に入った南足柄の自然豊かな風景
妻と娘が気に入った南足柄の自然豊かな風景
家の前に広がる休耕田
家の前に広がる休耕田

自然豊かな地での子育てには大満足。ただし子どもの教育には課題が

 購入した土地は約50坪、そこへ関東圏ではまだ実績の少ない「高性能住宅」を建築しました。高性能住宅自体は以前から手掛けてきたものの生活体験がなかったので、自分自身で体験することにより説得力を持ちたいと考えて自邸に取り入れました。実際に暮らしてみると思っていた通り夏涼しくて冬場は温かくとても快適です。

ご近所同士で四季折々のイベントをして楽しみます
ご近所同士、四季折々の催しを楽しみます

妻に関しては、知り合いがゼロだったこの土地での暮らしに最初は不安もあったようですが、ご近所の方とスムーズに打ち解けることができ、現在は自然が多いところを気に入っています。

私の仕事は、当初の予定通りに、東京で打ち合わせをして南足柄で設計をするというスタイルに変わりました。東京と南足柄を行き来するのは大変ですが、オフィスと距離をおいたことで、仕事とプライベートの切り替えがうまくできるようになりました。南足柄のわが家は、個人の高性能住宅としてはまだ希少性が高いので、建築関連の業者の方々にときどき開放して、見学をしてもらったりもしているのですが、南足柄では時間がゆっくり流れているからでしょうか、仕事をしていても気持ちにゆとりが生まれました。

子どもたちは、最初は学校で、地元で生まれ育った子どもたちの交友関係の中に入っていくのが少々大変だったようですが、学校の先生方に配慮をしていただいたこともあり、現在は3人とも楽しく通学しています。中でも長男は、田んぼでカエルを捕まえたり、夏などはパンツ1枚で遊んでいたり(笑)。自然を満喫しています。そういう意味では、ここへ移り住んでとても良かったと思います。

お庭でランチを楽しみます
お庭でお昼ご飯を食べることも

しかし、移住も3年目となり、今年中学3年生になる長女の高校進学が間近になったことで、新たな悩みが生まれました。
街から近いといっても、田舎なので学校の選択肢が少ないんです。それで、どうせどこも遠いなら場所に捉われずに全国に枠を広げ、面白いことをしている高校を探してもいいよねと話したり、今私たちがしている街興しに興味があるならば、そこに参加しながら地元の学校に通うこともありかと考えるようになったり……。ネガティブに捉えず置かれた状況をポジティブに転換した進路を考え中です。 最後は娘が決めることですが、偏差値だけを見て高校を決めるのもつまらないと思うので、親としていろいろな選択肢を用意してあげたいというところです。

 

移住成功の鍵は、まず自ら動いてみること。そして‶人〟とふれあうことも大切

 ところで、私たちがこの土地にうまく溶け込めたのは、ご近所にキーマンとなったご家族がいたからなんです。わが家の並びに住んでいるご家族だったのですが、私たちより1年前に横浜から引っ越しをされていて、お子さんも3人。うちの息子とそちらの息子さんが同世代で、その関係で自然に親交が生まれました。妻同士もウマが合い、仲良くお付き合いをさせていただいています。

ご近所ハロウィンパーティーでの記念撮影
ご近所ハロウィンパーティーでの記念撮影

また、ご主人は、私が移住する数年前に移住されて、南足柄市とも連携しながら、市産木材の利活用の促進と林業第6次産業化を目指す会社の代表でした。彼の会社が開催している「林業の担い手・初心者研修」に私も参加させていただいたことで、より親交が深まって仕事上のつながりもできたのです。

こういったキーマンがいるか、いないかが、移住をする際にはとても重要だと思います。思えば、移住先を決めるときも、人がつないでくれました。小田原市の職員さんがとてもいい方で、その方が勧めてくださったからこそ南足柄へ行ってみようと思ったんですよね。

移住先に求める条件というのは人によって異なると思いますが、誰かひとりでもそういったキーマンがいれば、多少の課題は乗り越えられるんじゃないでしょうか。

現在、南足柄市では移住者への支援制度が徐々に整いつつありますが、3年前に私たちが移住を決意した当時は、南足柄市ではそういった支援制度はほとんどなかったんですよね。でも、移住先で出会った人たちに魅力を感じたから、現在まで楽しく暮らせているのだと思います。

これから移住を考えている方へアドバイスをするとしたら、まずは動いてみることをお勧めします。動いてみないと、どんな移住場所があるかわかりませんから。見学を重ねていくうちに、最初はわからなくても、自分にとってピンとくる場所と出会えるんじゃないかと。大事なのは人とふれあうことですね。それが結構、ポイントになるような気がします。

コロナ禍が明けた昨年には、私も自治会の組長を担当して、地元の方々とふれあう機会も多くなりました。今後は首都圏に“近い田舎=ちかいなか”というコンテンツを使って、南足柄のよさをPRしつつ、都会と田舎の人たちを繋ぐような事柄に携われたらと思っています。具体的には南足柄の古民家を借りて、その拠点を作ることを考えています。

じつは、南足柄市の行政が推進するプロジェクトにも現在関わっているんです。市の面積の7割が森林という南足柄ならではの木質化プロジェクトで、「みんなの森の会議」というのですが、私の建築家としての知見が活かせるプロジェクトです。その詳細は、また別の機会に話をさせていただけたら幸いです。

 

 南足柄の木質化プロジェクト「みんなの森の会議」について紹介した【後編】はこちら

南足柄市シティプロモーションサイト

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取材・構成/山津京子 撮影/五十嵐美弥

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