夏場のシャワーは暑さに弱い体に!? 外遊びや運動後にさせたい入浴による「暑熱トレーニング」のすすめ【専門家直伝】

暑い日々が始まります。子どもたちの熱中症が心配な季節になってきました。特に今は、暑さに体が慣れていない要注意の時期。
そこで今回は、ちょっとした入浴の工夫で、わが子を暑さに強い子にする方法を、立命館大学スポーツ健康科学部・教授の後藤一成さんに聞きました。

湯船にお湯を張り肩までじっくり漬からせる

放課後に公園で遊んだ帰り、あるいは運動の習い事の後で、帰宅したわが子に何をさせていますか?

家庭によっては、夜ごはんをすぐに食べさせるかもしれません。夕飯の支度がある家では、その間ゲームや宿題などをさせているかもしれません。

もちろん、シャワーを浴びさせて汗を流させる家も少なくないと思いますが、暑さに強い体づくりという意味では入浴を選びたいと、立命館大学スポーツ健康科学部・教授の後藤一成さんは言います。しかも、シャワーで済ませるのではなく、湯船にお湯を張り、じっくり肩まで毎日つからせるといいそう。

その理由は、外遊びや運動の習い事で、体の深部体温が高まった状態を入浴によって延長したいからなのだとか。

入浴には暑さへの耐性を育む効果が。

後藤さんは、スポーツ健康科学の視点から、暑さ対策を通じたアスリートのパフォーマンス向上を研究している専門家です。その大人向け暑熱順化トレーニングと似たような効果が毎日の温浴にもあると言います。

「乳幼児、子どもは、暑さへの適応力が低いです。

暑い日に、子どものほっぺたが赤くなる理由は、大人と比べて発汗能力が発達しておらず、体内に熱がこもりやすいためで、皮膚の血管を拡張させ、熱を放出させようとしているからです。

その意味で、大人向けの暑熱順化トレーニングは適していませんが、夏場でも毎日、肩までお風呂に入る、それだけで子どもは、暑さに強い体になれます」

お風呂に入る際にも、お風呂場から5分で出てくるような「カラスの行水」はやめる、38〜40℃程度に10〜20分程度浸かるのが良い、とのことです。

熱中症が本格的に増える7月に向けて、その前から暑さに体を慣らしておくことが大事。
総務省「2023年の熱中症による救急搬送」 図表作成:立命館大学スポーツ健康科学研究科

お風呂上りにコップ1杯の牛乳を

暑さに強い体をつくるためには他にも、ちょっとした工夫があります。お風呂上がりの水分補給は牛乳がおすすめ。

暑さに強い体をつくるためには水分補給に加えて、たんぱく質の摂取が極めて重要だからなのだとか。

「体温が上昇し、大量の汗をかくと、血管の中の血液量が減ります。血液の量が減れば、血液に粘り気が出て、血液を全身に送り出す心臓にも負担が掛かります。

また、少なくなった血液を運動中の筋肉へ優先的に配分する必要が出てくるので、腸などの内臓、脳の血液量が減り、内臓が酸欠状態になって、ダメージが生じます。

しかし、水分にプラスしてたんぱく質を摂取すると、筋肉量に加えて血しょう量(※血そのものの量)も増えると過去の研究で明らかになっています。

運動時の深部温度の増加も実験では抑えられていますので、お風呂上りにたんぱく質を速やかに摂取させてあげてください」(後藤さん)

暑い環境での運動後の「糖質+たんぱく質摂取」の効果。
図表作成:立命館大学スポーツ健康科学研究科/後藤一成

一般的に、牛乳200ミリリットルには7グラムのたんぱく質が含まれています。

たんぱく質の理想的な摂取量は、体重あたり0.18~0.36グラムだと後藤さんは言います。体重20キロの子どもであれば3.6~7.2グラムになります。

汗びっしょりになって帰ってきた子どもをお風呂にすぐ入らせ、ゆっくり肩まで毎日つからせる、お風呂上りには速やかにコップ1杯の牛乳を飲ませる。

その習慣を今から続ければ、暑さに強い体づくりが夏本番に向けて可能になります。ぜひ、今日から試してみてください。

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取材・文/坂本正敬 協力/立命館大学

【取材協力】

後藤一成さん
立命館大学スポーツ健康科学部・教授。日本学術振興会 特別研究員、早稲田大学スポーツ科学学術院助教、立命館大学スポーツ健康科学部准教授を経て、2017年より現職。

岡本紗弥さん
立命館大学スポーツ健康科学研究科在学中。アスリートを対象に、体温の日内変動を用いたコンディション評価に取り組む。実験室での基礎研究に加え、トップレベルのアスリートに対する科学的サポートでも活躍中。

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