子どもに「根拠のない自信」をはぐくむ事の大切さ【子育ての道を照らす佐々木正美さんの教え】

児童精神科医として半世紀以上、子どもの育ちを見続け、お母さんたちの悩みに寄り添ってきた佐々木正美先生。今も、先生の残された子育てのについての著作や言葉は私たちの支えとなっています。佐々木先生が残してくれた子育てにまつわる珠玉のメッセージをご紹介します。

子どもに自信をつけさせるにはどうしたらいい?

子どものプライドや自尊心を守れる親になりましょう。「子どもの想いに耳を傾ける」と、子どもに「根拠のない自信」がついて、人生を幸せに生きていくことができます。

子どもに自信をつけさせるにはどうしたらいいのかといえば、それは「子どもの気持ちを思いやり、こころをかける」ことです。

親に自分の想いを繰り返し聞いてもらった子どもは、親に対して安心感や信頼感を抱くと同時に、家庭が居心地のいい場に感じます。

すると、子どもは自分に自信を持つことができ、他者を傷つけるといった反社会的な行為は起こしません。また、その自信と居心地のよい家庭をよりどころにして、未知の社会へ飛び出して、社会生活を営んでいくことができるようになるのです。

ところで、「子どもの気持ちを思いやり、こころを聞く」というのは、子どもの要求を単純に叶えるということではありません。

乳幼児や学童期の子どもというのは、まだ判断力が低いので、間違ったことや危険なことをしようとすることもあります。そんな場合は、注意することも必要です。

また、「オモチャがほしい」とか「ケーキが食べたい」などといった物理的な要求も、すべて受け入れる必要はありません。できないことは「ごめんね。それは無理なの」と言って、応えればいいのです。

何が重要なのかといえば、それは「子どもの想いを伝える場があること」です。

「今日はこんなことがあったんだ」というような子どもの日常のちょっとした出来事を聞いて、「そうなんだ」と相づちを打つだけで充分。親とそうした会話をするだけで、子どもの気持ちはやわらいで、少しずつ解放されていき、自信を持つことができるようになるのです。

ほんの少しの希望がかなえられる体験が、子どもの自信に

毎日の食事で子どもの願いを聞いてあげましょう。小さな願いが叶う積み重ねが、子どもの自信につながります

「今日はごはんがいい? それともパンがいい?」

「卵は目玉焼きがいい? それともオムレツがいい?」

たとえば、朝食でこのような希望を聞いて、臨んだものをできる範囲で作ってあげる。そんなわずかなことでいいのです。ほんの少しの希望がかなえられる体験が、日々積み重なっていくことで、子どもの心に少しずつ自信が蓄えられていきます。

子どもにとって家庭というのは、生きていくうえでもっとも根幹となる場所です。家庭が居心地のよい場所になっていることが、子どもの育ちにはとても大切で欠かせない要素なのです。

 

教えてくれたのは

佐々木正美|児童精神科医

1935年、群馬県生まれ。新潟大学医学部卒業後、東京大学で精神医学を学び、ブリティッシュ・コロンビア大学で児童精神医学の臨床訓練を受ける。帰国後、国立秩父学園や東京女子医科大学などで多数の臨床に携わる傍ら、全国の保育園、幼稚園、学校、児童相談所などで勉強会、講演会を40年以上続けた。『子どもへのまなざし』(福音館書店)、『育てたように子は育つ——相田みつをいのちのことば』『ひとり親でも子どもは健全に育ちます』(小学館)など著書多数。2017年逝去。半世紀にわたる臨床経験から著したこれら数多くの育児書は、今も多くの母親たちの厚い信頼と支持を得ている。

構成/山津京子 写真/山本彩乃

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