ペアレンタルコントロールとは何?
子どもがインターネットを安全に利用するためには、大人の見守りが欠かせません。総務省や文部科学省などでは、保護者に対して「ペアレンタルコントロール」の適切な活用を呼び掛けています。
情報通信機器の利用を親が管理すること
ペアレンタルコントロールとは、子どものスマートフォンやゲーム機などの情報通信機器の利用を、親が管理することです。ペアレンタル(Parental)は「親としての」、コントロール(Controls)は「制御・管理する」という意味があります。
インターネットが普及した現代、自分専用のスマートフォンやタブレットを持つ子どもは少なくありません。専用機器を持たない子どもも、テレビやゲーム機、親の端末などから、簡単にインターネットにアクセスできます。
インターネットは便利な反面、子どもがさまざまな犯罪に巻き込まれるリスクを高めます。ペアレンタルコントロールを活用し、トラブルを未然に防ぎましょう。
ペアレンタルコントロール機能が使えるもの
ペアレンタルコントロール機能は、以下のようなもので使えます。
●パソコン・スマートフォン・タブレットなどのOS機器
●Nintendo Switchなどのゲーム機器
●InstagramなどのSNS
●Wi-Fiルーター
一部のゲーム機器には、ゲームのプレー時間や他人とのコミュニケーションを制限できる機能が搭載されています。
時間帯による接続制限やウェブフィルタリング機能を搭載した家庭用Wi-Fiルーターを導入すれば、在宅時のネットの使い過ぎや有害サイトへのアクセスを防げるでしょう。近年は、ペアレンタルコントロール専用のアプリやサービスも登場しています。
ペアレンタルコントロールは必要?
ペアレンタルコントロールを活用すると、子どものネット依存を防止できると同時に、ネット犯罪に巻き込まれるリスクが低減します。子どもを取り巻くトラブルの現状と、ペアレンタルコントロールの必要性について見ていきましょう。
子どものネット犯罪被害は増加傾向
こども家庭庁の「令和5年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、低年齢層の子どものうち、74.9%がインターネットを利用しています。通園中の0~6歳児では68.0%、6~9歳の小学生では90.0%が利用しており、インターネット利用の低年齢化が進んでいるのが現状です。
子ども専用の機器を利用する割合が最も高いのは「スマートフォン」で、小学生(10歳以上)の70.4%が子ども専用の機器を使っていると回答しました。
インターネット利用の低年齢化により、子どもが以下のようなトラブルに巻き込まれるケースが増えています。
●SNSでの誹謗中傷やいじめ
●SNSを通じた個人情報の流出
●誘い出しによる性的被害
●闇バイトへの加担
●有料サービスの利用による高額請求
出典:令和5年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)|こども家庭庁
社会経験が少ない子どもはだまされやすい
最近の子どもは、生まれたときからデジタル機器と暮らしている「デジタルネイティブ」です。このため「扱い方に慣れているから大丈夫だろう」と思われがちですが、子どもがネット犯罪の被害者になる事件は後を絶ちません。
子どものネットトラブルはなぜ深刻化しやすいのでしょうか? その理由に「経験の少なさ」が挙げられます。社会経験や人生経験が少ないと、大人であれば不審に思うことでも、子どもはすぐに信じてしまうでしょう。
近年はだます側のテクニックや仕掛けが巧妙で、大人でさえも見抜けないケースが少なくありません。また好奇心が旺盛な子どもは「ちょっと試してみよう」という軽い気持ちで、危険なサイトにアクセスしてしまう可能性があるのです。
ペアレンタルコントロールで何ができる?
ペアレンタルコントロールと聞くと、子どもを監視するイメージを持つ人もいるかもしれませんが、情報通信機器の機能の一部を管理・制限することで、健全なインターネット利用を促す目的があります。具体的に、どのようなことができるのかをチェックしましょう。
アクセスの制限
ネット犯罪の予防措置として高い効果を発揮するのが、「アクセスの制限」です。スマートフォンやタブレットは、指先が触れただけで広告をクリックしてしまうこともあり、子どもにとって有害なサイトや不適切なサイトは、あらかじめ排除しておきたいものです。
例えばiPhoneやiPadには、ウェブサイトのコンテンツに自動的にフィルターをかけて、不適切な成人向けサイトにアクセスできないようにする機能が搭載されています。
フィルタリングサービスの中には、「小学生モード」や「中学生モード」といったモード設定が可能なものもあり、対象年齢に合ったインターネット環境の整備が容易に行えます。
利用時間の制限
子ども家庭庁が2023年に実施した調査では、インターネットを利用すると回答した子どもの平均利用時間(1日当たり)は約4時間57分でした。小学生(10歳以上)は約3時間46分、中学生は約4時間42分で、年齢が上がるにつれて利用時間が長くなることが分かります。
近年は大人のみならず、子どもの間でも「ネット依存(スマホ依存)」が増えているため、場合によっては親が利用を制限する必要があるでしょう。ペアレンタルコントロール機能を使えば、1日当たりの利用時間を曜日ごとに細かく設定できます。
出典:令和5年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)|こども家庭庁
アプリのダウンロードや課金の制限
スマートフォンに登録された親のクレジットカードを使って、子どもがゲームなどに課金し、請求額が高額になったというトラブルは少なくありません。子どもに使わせたくないアプリを勝手にダウンロードされ、困惑するケースもあるでしょう。
ペアレンタルコントロールには、アプリのダウンロードや課金を制限する機能もあります。例えばAndroidの場合、Google Playストアでアプリをダウンロードしたり購入したりする際に、「保護者の承認」を求める設定があります。
なお課金する際の支払い方法は「クレジットカード」「電話代合算請求(キャリア決済)」「プリペイドカードによる先払い」の三つが基本です。子どものスマートフォンにクレジットカード情報を入力しない、キャリア決済を使えなくするなど、事前に適切な設定をしておけば、高額請求のトラブルは未然に防げるでしょう。
閲覧履歴や使用状況の把握
端末には、閲覧履歴や使用状況をチェックできる機能が搭載されています。iPhoneやiPadの場合は「スクリーンタイムのレポート」を設定すると、デバイスの利用時間やよく使われたアプリ、訪れたウェブサイトなどがレポート形式で表示されます。
インターネットの使用状況を24時間体制で監視できるアプリを導入すれば、怪しいコンテンツへのアクセスや、悪意のあるメッセージの受信などに早く気付けて、より適切に対応できるでしょう。
ただし閲覧履歴やメッセージ内容が分かる機能を子どもに無断で使うと、親からの一方的なプライバシー侵害と受け取られ、親子関係に亀裂を生じさせる恐れもあります。子どもに理由を説明して、納得してもらってから使いましょう。
ペアレンタルコントロールだけで十分?
ペアレンタルコントロールは有効とはいえ、いつまでも親が管理しているわけにはいきません。ペアレンタルコントロールを利用する以外に、家庭でやるべきことを見ていきましょう。
ネットに潜むリスクをきちんと伝えよう
デジタルネイティブである子どもたちは、ネット関連の機器やサービスを器用に使いこなします。しかし、マナーやモラルをきちんと守っているとは限りません。
ネットの世界は匿名性が高い分、悪質な誹謗中傷やいじめ・不正行為などが起きやすい傾向があります。被害者になるだけでなく、意図せず加害者になってしまうケースもあることを、よく理解させる必要があるでしょう。
また理由を説明しないままアクセスの制限やモニタリングを行うと、子どもは親から信用されていないと感じます。SNSによるトラブルやネット依存症のリスクなどについて、丁寧に説明することが大切です。
親子でネット利用のルールを決めよう
インターネットの利用は、自己責任が原則です。ペアレンタルコントロールに頼らなくても、自分で利用をコントロールできるように、家庭内のルールを決めましょう。
利用目的・利用場所・時間帯については、「どんな内容にしたらいいと思う?」と子どもに意見を求めるのがポイントです。親が一方的に決めたルールはすぐに破られてしまいますが、自分で決めたルールは守られる確率が高いでしょう。
子どもは成長に伴い、行動範囲や交友関係が広がります。必要な機能や利用したいアプリも変わってくるため、子どもの実態に合わせてルールの見直しを行いましょう。入園・進級・進学は、ルールを見直すよいタイミングです。
ペアレンタルコントロールでリスクを回避
ペアレンタルコントロールをうまく活用すれば、子どもをインターネット上のトラブルや犯罪から守れる可能性が高くなります。特に自分のスマートフォンを手にしたばかりの小中学生は、インターネットのルールやマナーが身に付いていないため、親が見守る必要があるでしょう。
親がどこまで管理・制限するのかについて、子どもに説明し、理解してもらう姿勢も重要です。一緒に利用上のルールを話し合うのはもちろん、成長に応じてルールを変えるなど、子どもの自主性を尊重しながら向き合っていきましょう。
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構成・文/HugKum編集部