『匙を投げる』は、なぜ匙？語源や意味、使い方、類語、対義語、英語表現までをまるっと解説！

「匙を投げる」とは？
語源は江戸時代における薬の調合から
使い方を例文でチェック！
類語や言い換え表現は？
対義語は？
英語表現は？
語源を正しく把握しておけば、意味や使い方も忘れにくい表現

「匙を投げる」とは？

まずは、『匙を投げる』の読み方と意味を確認しておきましょう。

読み方と意味

この言葉は『匙を投げる』と書いて「さじをなげる」と読みます。｢成功する見込みがなく、諦めること｣を意味します。

語源は江戸時代における薬の調合から

『匙を投げる』の「匙」とは「スプーン」のことですが、このことわざにおいては、かつて薬の調合に使われていた「薬匙」を指します。

江戸時代には、医師が自ら薬の調合を行なっていましたが、時には適当な薬が見つからないこともあったようです。そのような時に、医師が治療の見込みを持てず諦めてしまう様子を比喩して『匙を投げる』という言い回しが生まれたと考えられています。

使い方を例文でチェック！

では、『匙を投げる』はどのように使うことができるのでしょうか。具体的な例文とともにチェックしていきましょう。

1：どうしてもスマートフォンの使い方を理解できなかった祖母は、ついに【匙を投げて】しまった。

どんなに懇切丁寧に教わっても、どうしても上達しないことってありますよね。このような、なにかが上手くなる見込みが見出せず諦めてしまった場面などで『匙を投げる』を使うことができます。

2：彼は何度注意しても変わらないので、【匙を投げて】しまいたくなる。

お子さんに何度同じことを注意しても変わらない時など、誰かに対して「諦め」の感情を抱く瞬間もありますよね。そのような場面でも『匙を投げる』を用いることが可能です。

3：相手チームにリードされて、彼は早々に【匙を投げた】様子だった。

試合などで「これはもう勝てない」と見切りをつけてしまう場面でも『匙を投げる』が使われることがあります。「匙を投げた様子」といった使い方も一般的です。

類語や言い換え表現は？

そんな『匙を投げる』が持つ意味は、別の言葉で言い表すこともできるのでしょうか。ここでは『匙を投げる』の言い換えに使えそうな類語をご紹介します。

1：放棄する（ほうきする）

『放棄する』とは、「人や物事を捨て去って顧みない」「自分の権利や資格を実行することなく棄てる」といった意味を持つ言葉です。

『匙を投げる』が持つ「成功する見込みがなく」のニュアンスは薄まってしまいますが、「諦めること」を言い表せる点においては類語と言えます。

2：万策尽きる（ばんさくつきる）

「できるかぎりのあらゆる手段・方法」を意味する『万策』と『尽きる』を組み合わせた『万策尽きる』という言葉は、「あらゆる手段を試したものの効果がなく、それ以上は術がない、どうしようもない様子」を指します。

『万策尽きる』のほうがある程度の努力をしたことが前提となりますが、「それ以上為す術がなく、諦めざるを得ない様子」を言い表せる点は、『匙を投げる』と共通しています。

3：投げやりになる（なげやりになる）

『投げやりになる』とは、「物事をいいかげんに行うこと」「成り行き任せにしてしまうこと」を意味します。この言葉単体では少々意味が異なる印象ですが、上手くいく見込みがない場面などでよく使われることから、類語として覚えておきたい言葉です。

対義語は？

『匙を投げる』には明確に対となる対義語が存在しません。ここでは、『匙を投げる』の反対に近い言葉をご紹介します。

1：不撓不屈（ふとうふくつ）

『不撓不屈』とは、「どんな困難や試練にも屈せず、強い意志とともに立ち向かうこと」を意味する四字熟語です。成功の見込みがないことで諦めてしまう『匙を投げる』とは異なって、粘り強さや執念深さが表現できる点において、反対に近い言葉と言えます。

2：七転八起（しちてんはっき）

「どんなに失敗してもくじけることなく、立ち上がって努力を続けること」を意味する『七転八起』。たとえうまくいく見込みがなくても諦めることなく奮闘し続けられることを言い表しているため、『匙を投げる』とは反対の言葉と言えそうです。

英語表現は？

では、『匙を投げる』は英語ではどのように言い表すことができるのでしょうか。最後に『匙を投げる』の英語表現をご紹介します。

1：Throw in the towel

“Throw in the towel”とは、「成功・勝利の見込みがなく、諦めること」＝『匙を投げる』を意味する英語の慣用句です。ボクシングで敗北を認めるしるしとして、リングの外にいるトレーナーがタオルを投げ入れることに由来しているようです。投げる道具は異なるものの、日本語と英語で似たような言い回しがあるなんて興味深いですね。