広島の「尾道ラーメン」をキッチンで再現! あっさりなのにコクがある、その不思議を解明

広島県尾道市の名物として知られる尾道ラーメン。魚介からとった風味豊かなスープと、こってりとした背脂の絶妙な組み合わせは、多くのラーメンファンを魅了してやみません。今回は、市販のお土産用セットを使って、本場の味を自宅で再現する方法をご紹介します。

瀬戸内海が育んだ味、尾道ラーメン。その透き通った魚介スープと、濃厚な背脂が織りなす絶妙なハーモニーは、多くのラーメン通の心を掴んできました。広島県尾道市が誇るこの名物は、戦後から親しまれてきたラーメンの味と、海の恵みが融合した、尾道ならではの逸品。本場の味を自宅で楽しむ工程をご覧ください。

尾道ラーメンの特徴

尾道ラーメンの魅力は、麺・背脂・スープの3つの要素にあります。それぞれの特徴を詳しく見ていきます。

麺の特徴

地元尾道では、中細の平打麺を使用するところが多い特徴があります。この麺は、尾道ラーメンが全国に広まった当初、西日本で珍しいスタイルだったそうです。

スープによく絡み、小麦の風味が豊かに感じられる麺です。
スープによく絡み、小麦の風味が豊かに感じられる麺です。

背脂

尾道ラーメンの顔ともいえるのが、スープの表面に浮かぶ背脂のミンチです。これこそがスープに濃厚な味わいをもたらす秘訣です。

豚の背ロースの脂身をミンチにしたもの。大粒でプルプルとした食感が特徴です。
豚の背ロースの脂身をミンチにしたもの。大粒でプルプルとした食感が特徴です。

各店舗で独自の工夫が凝らされており、揚げたものや、ネギで香り付けしたものなど、店の個性が光る要素となっています。

スープの特徴

「澄んだスープ」は尾道ラーメンの真骨頂。隠し味に使われる小魚は瀬戸内の特産品です。このあっさりとした味わいに、背脂のミンチが強烈なインパクトを加え、味も見た目も特徴的な一杯に仕上がっています。

尾道ラーメンの歴史と由来

じつは、尾道ラーメンのルーツとされる店のスープには小魚が使われていません。これは後に、瀬戸内の特徴を取り入れるアイデアとして採用されたものです。このスタイルは広く普及し、尾道の食文化として認知されるようにまで成長しました。

ここからは、その興味深い歴史を詳しく見ていきましょう。

尾道ラーメンの起源

尾道ラーメンの起源は、昭和3年頃にさかのぼります。福建省出身の張さんが屋台で「支那そば」を提供したのが始まりとされています。

当時は、青竹で生地を打ち、手回し機械で麺線を作製。チャルメラを吹きながら売り歩くという風情でした。スープは牛骨と豚骨からとり、白く濁った味わいだったそうです。

この頃の尾道は、造船業に従事する中国系の人々が多く住む街でした。戦後、造船業が衰退する中で、中華そばの屋台を引く人々が現れたのです。「朱華園」の創業者、朱阿俊氏もその一人です。昭和22年に屋台で創業し、のちに人気店へと発展しました。

尾道の風景
尾道の風景

現在普及している尾道ラーメン店には、戦前からの伝統を受け継ぐ店がある一方で、それをベースに新たな展開を遂げた店が共存しています。そして、尾道ラーメンが全国的に広まるきっかけとなった、ある出来事がありました。

尾道ラーメンの発展

平成5年、福山市の珍味メーカー「阿藻珍味(あもちんみ)」が「お土産用 尾道ラーメン」の販売を開始しました。

鶏ガラスープに平子いわしからとった出汁を使用したこのラーメンは、コクがありながらもあっさりとした独特な味わいが生みだし、爆発的な人気を博しました。これをきっかけに、尾道ラーメンは全国的な人気へと駆け上がっていきます。

いりこの出汁は、甘みのあるやさしい味わいです。
いりこの出汁は、甘みのあるやさしい味わいです。

このヒットにより、瀬戸内の魚介類からとれる透き通ったスープが「尾道ラーメン」の欠かせない特徴として定着しました。地元製麺所の尽力も相まって、この系統のラーメンを提供する店舗は急速に増加していきました。

尾道ラーメンの定義

これまで見てきたとおり、尾道ラーメンには朱華園と阿藻珍味をそれぞれのルーツとする、二つの系統があります。朱華園は地元で長年「中華そば」を扱う店として営業を続けてきましたが、メディアに取り上げられたことで「ご当地ラーメン」として広く知られるようになりました。しかし、その認知の広まりに対して「朱華園のラーメンは中華そばであって、尾道ラーメンではない」と明確に断言されています。

この経緯から、尾道ラーメンは一般的に「背脂入り、しょうゆベースのスープと、コシの強い平打ち麺」が特徴とされていますが、実際には店ごとの個性が際立っています。海産物・鶏がら・牛豚骨・野菜・昆布など、さまざまな食材からスープをとる店があり、多様な味わいを楽しめます。

地元を訪れる際には、この多様性を念頭に置いて、お好みの味を探してみてください。

お家で作る尾道ラーメン

さあ、ここからはお家で尾道ラーメンを作っていきましょう。

阿藻珍味 尾道ラーメン しょうゆ味 生麺 スープ付 4人前 2箱セット

小魚を隠し味に使ったことで大ヒットのきっかけを作った「阿藻珍味 尾道ラーメン」は、通販で購入できます。こだわりは背脂の量とカットの大きさ。スープとの絶妙なバランスを味わえます。

材料

阿藻珍味 尾道ラーメンセット 2人分

【トッピング】
チャーシュー(市販品) 2枚
メンマ 10本
半熟卵 1個
薬味ネギ 適量

作り方

【1】まずトッピングを用意します。チャーシューはお子さんが食べやすいよう、適当な大きさに切ってください。

半熟卵は皮をむいて、半分にカットします。

薬味用のネギを刻みます。ネギが苦手なお子さんには、茹でた小松菜や刻んだ水菜などでも代用できます。

尾道ラーメンのトッピングは比較的シンプルなのが主流で、ネギ、チャーシュー、メンマといったオーソドックスな具材が一般的です。
尾道ラーメンのトッピングは比較的シンプルなのが主流で、ネギ・チャーシュー・メンマといったオーソドックスな具材が一般的です。

【2】麺を茹でるため、お湯をたっぷり用意します。また、スープ用のお湯も必要です。

【3】器を用意し、スープの素を入れてお湯で溶かします。

麺を茹で始めたらあっという間に出来上がるので、スープは先に用意しておきます。

【4】沸騰したお湯で麺を茹でます。

麺の茹で時間は2~3分。
麺の茹で時間は2~3分。

【5】時間が来たら、しっかりとお湯をきり、スープが入った器に麺を盛り付けます。

【6】最後に、お好きなトッピングを盛り付けて完成です。

麺がのびないよう、サッと盛り付けて。
麺がのびないよう、サッと盛り付けて。

広島県が誇る伝統と文化の味

尾道ラーメンは、その独特な味わいと歴史的背景により、広島県を代表する名物料理となっています。尾道を散策しながら各店舗の味を堪能するのもいいですし、自宅で市販セットを使って再現するのも楽しめます。尾道の食文化を凝縮した一杯をぜひお試しください。

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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)

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