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小学2年生になった夏斗くんは、特別支援学校の後、放課後デイへ
夏斗くんがアンジェルマン症候群と診断されたのは、2歳3カ月のときです。アンジェルマン症候群の代表的な症状に言語障害がありますが、夏斗くんも発語がありません。小学2年生になった現在は、特別支援学校に通い、その後放課後等デイサービスに通っています。
「下校時間に合わせて、放課後デイの担当者が学校まで迎えに来てくれて、夏斗はそのまま放課後デイに行っています。帰宅するのは夕方6時ごろです。下の子は、保育園の年長クラスになりだいぶ手がかからなくなりました」(由子さん)
毅さんから『自分の時間を作ったら?』と妻に提案
子育てが少しラクになって、毅さんは由子さんに提案をしました。
「夏斗が歩けるようになったのは5歳になってからです。それまでは家の中をハイハイしたり、抱っこして移動していました。夏斗と下の子のお世話に毎日、追われていて、由子は自分の時間を作る余裕なんてありませんでした。僕は今、現役を引退して湘南ベルマーレのクラブスタッフとして働いています。会社員なので休日以外は、子どもたちのことは由子にほとんど任せている状態なんです。でも夏斗が特別支援学校に通い始めたので由子に『自分の時間を作ったら?』と提案したんです。そしたら『今すぐにでも働きたい』と言われて驚きました」(毅さん)
夏斗くんが帰るまで、由子さんは自宅で仕事を
「私は結婚するまで、ジュエリーの販売スタッフをしていました。結婚して仕事を辞めて、ずっと夫のサポートと子育てをしていました。夫から『自分の時間を作ったら?』と言われたときは、本当にうれしかったです。知人の紹介で、IT関係の会社でアルバイトで働けることになりました。会社は夏斗のことをよく理解してくれています。自宅でリモートワークなので働きやすいです。土曜日は、友だちの飲食店も手伝っています」(由子さん)
汗をかいて体温調整ができるように
アンジェルマン症候群には体温調節が苦手な子もいます。夏斗くんも汗をかけずに体温調節が苦手でした。
「汗をかけずに体温調節が苦手なので、熱を出すことが多かったんです。でも今年になってから、頭を触るとうっすら汗をかいているんです。そのせいだと思うのですが、熱を出すことが減りました。夏斗の体調がよくなったことが、働きたいという気持ちにつながったんだと思います」(由子さん)
下の子の将来の夢は、お医者さんになること
下の子は、保育園の年長クラスになりました。
「以前は『大きくなったら何になりたい?』と聞くと、プリンセスって答えていたんです。でも最近『お医者さんになりたい! お医者さんになれば、夏と会えるから!』と言われて、胸が熱くなりました」(毅さん)
「この間、私が『疲れた~』って言ってソファに座りこむと、下の子が『どうぞ』って水を出してくれたんです。年長さんでこんなことできる?と驚きましたが、優しい子に育ってくれてうれしいです」(由子さん)
自宅以外の環境に慣れてほしくてレスパイトを検討中
夏斗くんが特別支援学校に通ってよかったことの1つに、保護者同士のつながりがあります。先輩ママ・パパたちは、役立つ情報をいろいろ教えてくれるそうです。
「保護者が息抜きするために専用施設に子どもを預ける「レスパイト」というのがあり、先輩ママが『〇〇のレスパイトがいいよ』と教えてくれたりします。夏斗はアンジェルマン症候群の特徴で睡眠障害があり、眠りが浅くて毎朝5時ごろには目を覚まします。幼いころは、夜中に目が覚めると寝ないし3時ごろに起きることもあったのでもっと大変でした。自宅以外では眠れません。この先のことを考えると自宅以外の環境にも慣れてほしくて「レスパイト」について、いろいろ調べているところです」(由子さん)
夏斗がいるから、温かくて素敵な人たちと出会える
毅さんと由子さんは家族で旅行をしたり、遠くに出かけたりするのは、これまで控えていたそうです。家の近くでの外食もお店選びに気を遣うと言います。
「僕や由子の友だちは『夏斗と家に遊びにおいでよ。うちで食事しよう!』と言ってくれたり、『夏斗と旅行に行こうよ!』と誘ってくれたりします。僕たち夫婦は周囲の人に恵まれているなと、つくづく思います。でも人の縁を作ってくれているのは夏斗なんです。温かくて素敵な人たちと出会わせてくれる、夏斗には感謝です」(毅さん)
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撮影/五十嵐美弥 取材・文/麻生珠恵