ファシリテーターとは何か
ファシリテーターは、主に「ミーティング」「ワークショップ」「話し合い」のような場面で、活躍する人を指します。具体的な概要と、似た用語との違いを見ていきましょう。
主にミーティングの進行役を指す
ファシリテーターは、ミーティングの進行役を指すことが多い言葉です。学級会などの話し合いでも、周囲をまとめる役割の人がいます。その人を「ファシリテーター」と呼ぶのです。
しかし、なぜミーティングの進行役を「ファシリテーター」と呼ぶのでしょうか?
「ファシリテーター」について知るには、まずこの用語の元になっている「ファシリテート(facilitate)」を知る必要があります。
ファシリテートは、「何らかの物事を容易に進める」「促進する」などの意味を持つ英語です。このファシリテートに接尾辞 -er (~する人)を加え名詞化したのが「ファシリテーター」であり、「物事を容易に進めるための人」「促進する人」を指すことになります。
そこから、話し合いの進行をスムーズに進め、調整する役割の人を主に「ファシリテーター」と呼ぶようになったのです。
似た用語との違い
「ミーティングの進行役」というと、似た用語がいくつもあります。例えば、司会・リーダー・モデレーターも、進行役として使われやすい言葉です。
厳密に言葉の使い方が明確に分かれているわけではありませんが、言葉の意味に違いはあります。
ファシリテーターはミーティングを「容易に進める」「促進させる」ための存在です。
司会は「あらかじめ決められた設定に沿って会議を進める人」を指します。台本や原稿が設けられていることが多いため、ややファシリテーターとは役割が異なるでしょう。
リーダーは「周囲をまとめて先導する人」を指します。ミーティングでは最終決定権を持ち、周囲の意見をまとめる役割もあるでしょう。ファシリテーターには、決定権があるとは限りません。
モデレーターは、ミーティングやプレゼンテーションの場で参加者の仲裁・調停を担う存在です。ファシリテーターと似た立場であり明確な使い分けはされていませんが、モデレーターは動画投稿サイトで配信者のサポートを行う人を指すことが多くなっています。
出典:モデレーター(moderator)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 – goo国語辞書
ファシリテーターの持つ役割
ファシリテーターはミーティングの場で、どのような役割を担うのでしょうか? ファシリテーターとして任命されたとき、何をすべきなのか基本的なポイントを解説します。
ミーティングの目的を明確にする
話し合いを円滑に進めるため、進行役として任命された場合、ミーティングの開催時に「目的」や「構成」を説明する役割を担います。開催前に、いったい何を目的としてミーティングを行うのか、自身が把握しておく必要があるでしょう。
学級会のような話し合いの場であれば、「今日の議題は何か」「クラスの生徒が何に悩んで会を開催することになったのか」など、参加者に対して分かりやすく説明します。
進行役が説明することで、参加者に意図が伝わり、ミーティングがスムーズに進むようになるはずです。
参加者が話しやすい雰囲気をつくる
ファシリテーターは、会場の雰囲気づくりを行います。ミーティングの内容によって範囲は異なりますが、会場選びや机・椅子の配置、チームの分け方など環境の整備も主な役割です。
学級会のケースでは、生徒が話しやすいように中立の立場で意見を聞き、多くの意見が集まるように質問することも雰囲気づくりに含まれます。
ミーティングの場では、意見が出なければ議論が進みません。ファシリテーターは、議論を活性化させるため、さまざまな方向から話しやすい雰囲気をつくっていきます。
ミーティングの結論を導き出す
ミーティングを行うからには、何らかの結論や成果を出すことが最終的な目標です。ファシリテーターは、集まった意見を取りまとめ、結論を出す役割も持っています。
ただし、ファシリテーターが最終決定権を持っているわけではありません。対立する意見や、異なる意見の落としどころを考え、参加者が納得するように話をまとめていくことが主な役割となるでしょう。
学級会の議論では、参加者の投票や先生が結論を出す前に、どのような意見が出ているのか、意見の方向性がいくつあるのかなど、大まかな内容をまとめていきます。
ファシリテーターに必要な能力・スキル
ファシリテーターには、必要とされる能力・スキルがあります。多くの人の意見を聞き、最終的な結論の方向性をまとめるには、どのような能力が求められるのでしょうか? 基本的なポイントを紹介します。
意見を引き出すコミュニケーション能力
話し合いを円滑に進めるには、参加者の意見を引き出すためにコミュニケーション能力を発揮する必要があります。
ミーティングの場で求められるコミュニケーション能力は、相手に質問をして議論を活性化させることだけではありません。
全員の状況を見渡して、発言したい人がいるか、参加者同士の話し合いがうまくいっているか確認し、必要なところに助け舟を出すなど、さまざまな配慮も求められます。
議論の方向性を整理する論理的思考力
議論の方向性を整理するには、さまざまな人の意見を聞き、状況や意見の本質を理解しなければなりません。論理的思考力は、方向性を整理する上で重要な能力です。
多くの人の意見を集めることが重要とはいえ、バラバラの意見を聞いているだけでは結論がまとまらなくなってしまいます。
進行を担う存在が「参加者がそれぞれ、どのような意見を持っているのか」「意見の種類にはどのようなものがあるのか」を把握し、全員が分かるように整理できれば、議論が進みやすくなります。
論理的に考える力は、周囲を納得・説得する上でも役立つでしょう。
結論をまとめるための問題解決能力
多くの人が参加するミーティングでは、結論をまとめるまでに時間がかかります。ファシリテーターは率先して結論をまとめるために、問題解決能力を発揮しなければなりません。
どのような話し合いでも、完全に同じ方向性の意見ばかりが出ることは少ないためです。反対意見や、少数派の意見もあります。
意見を出した人同士が直接話をすると感情的になり、うまく話がまとまらない可能性もあるでしょう。どのような意見を持っている人も納得できるよう、双方の意見を取りまとめながら最終的な方向性を探っていくには、問題を解決に導く力が求められるでしょう。
出典:ファシリテーションとは – FAJ:特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会
ファシリテーションを行うメリット
ファシリテーションによって、いくつかのメリットがあります。話し合いの場に中立の立場で話を聞く進行役が存在する主なメリットを見ていきましょう。
多くの人が意見を出しやすい環境がつくれる
ファシリテーターの主な役割として、「雰囲気づくり」「環境づくり」があります。良い環境をつくるには、事前の準備が欠かせません。
良い環境を用意できれば、参加者が思ったことをはっきり伝えやすくなります。多くの人が意見を出すことで場が盛り上がり、より良い方向に進むこともあるでしょう。
ファシリテーターは、多くの意見をまとめる役割も果たします。全員が好きなように話すだけでなく、結論や問題解決に向けて話し合えるはずです。
多くのアイデアを集められる
中立の立場を守るファシリテーターがミーティングの場にいることで、参加者はどのような意見であっても話しやすくなります。
結果として、意見が集まりやすくなり、新しいアイデアも生まれやすくなるでしょう。多くのアイデアの中から、画期的な解決方法が導き出されるかもしれません。
できるだけ多くの人から意見を聞き出したいときや、気軽に話せる環境をつくりたいときは、ファシリテーターの存在が役立つはずです。
効率的に話し合いが進められる
進行を担う立場の存在がいると、話し合いは効率的に進みます。各自が自由に意見を出したとしても、取りまとめる存在がいなければ話がまとまりにくいことも考えられるでしょう。
短時間で話し合いを進めたいときや、何らかの結論を出さなければならないときは、進行役としてファシリテーターを任命するのがおすすめです。
特に、多くの参加者から率直な意見を聞きたい場合は、話しやすい雰囲気をつくれる存在が活躍します。
出典:①ファシリテーターの心得 ②ファシリテーターの役割とスキル|奈良県
ファシリテーターになって場の進行を担おう
ミーティングの場にファシリテーターがいると、話し合いが円滑に進みます。学級会やワークショップ、仕事の会議などで、進行役を担ってみましょう。
参加者の様子を見ながら意見を聞き、結論をまとめる役割をこなせるようになれば、さまざまな場面で活躍できるようになるはずです。論理的思考や問題解決能力など、周囲とのコミュニケーションやビジネスに必要なスキルを磨くきっかけにもなるでしょう。
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構成・文/HugKum編集部