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「そろばん」を始めるのはハードルが高い?
- 筆者の実家が自営業で、祖父母の代から食卓で「そろばん」を弾いているのを見ていて、身近ではあったので、ぜひ娘には「そろばん」を習わせたいと思っていました。しかし、自分自身は電卓世代で、「そろばん」を使うことができず、娘が1年生の時にそろばんを買ったものの2年生の今になるまで放置してしまっています…。
ちょうど我が家が受験を意識するタイミングで、先日、公益社団法人全国珠算教育連盟の研修学教委員長の前田珠樹さんによる「令和のそろばん事情 習い事に珠算を選ぶ親の意識調査」発表があり、「そろばん」についてお話を聞く機会がありました。
「タブレット時代にそろばんは必要なの?」「いつ始めたらいいの?」「受験に有利って本当?」「計算以外にも身つくスキルは?」など、「そろばん」に関して気になる点を聞いてきましたので、レポートします。
そもそもスマホやタブレットが普及した今、「そろばん」は必要?
電子機器が普及し、職場で「そろばん」を使うことは殆どなくなりました。だからといって、「そろばん」を学ぶ必要はないという訳ではありません。
全国珠算教育連盟の前田さんは「実務珠算から能力珠算に変わりながら、(そろばんの技術が)生き続けてきたことがそろばんが必要とされる理由であるでしょう」と語っていたのが印象的でした。
計算能力は子ども時代に身につけなければならない大切な能力の一つです。それには珠算の練習が最適な方法の一つと考えてもよいでしょう。
また、「手は第二の脳」と言われます。全国珠算教育連盟では「
「習い事ランキング」4位、「子どもに習わせてよかった習い事」2位!
東京大学と大手の教育研究所が行った調査(2023年)では、習い事をしている小学生のうち「そろばん」を習っているのは全体の9%で、運動系を除いたランクの4位になっています。
「子どもに習わせてよかった習い事」ランキングでも、運動系を除くとなんと2位に。一般的なイメージ以上に、「そろばん」は人気の習い事のようです。
計算能力だけではない、「そろばん」を習うと身につくスキル
やらされる勉強から主体性のある学びに
「そろばん」は、たし算、ひき算、かけ算、わり算のほか、利息の計算や平方根、立方根など、いろいろな計算ができます。そして、前田さんいわく、「そろばん」を自ら操作することで、やらされる勉強ではない主体的な学びにつながるとのことです。
全国珠算教育連盟の「令和のそろばん意識調査」によると、保護者がそろばんを習わせる理由は「計算能力の向上」が85.6%
計算能力だけではない「そろばん」の凄さ!
また、「そろばん」の練習は単なる計算力だけでなく、集中力も養う訓練になります。前田さんも「身につけさせるものではなくて、そろばんをしながら、自然に身につくものであるところがそろばんの素晴らしい点です」と話してくれました。
全珠連珠算検定1級問題の中に、みとり算(10桁の数字を足したり引いたりする計算)があります。1問題の字数は100字で平均60秒以内に計算しなければなりません。この時、運珠(そろばん珠を弾く)回数は約130~170回で、そのうちの1回でも間違えば誤答になってしまい、相当の集中力が必要になります。
「そろばん」で身につく非認知能力
学力で数値化できない非認知能力も近年、注目されています。前田さんいわく、「そろばん」はそのような人間力を上げるのにとても適しているとのことです。
「そろばん」は自分のペースで進めることができるため、自己肯定感が上がります。さらに、検定試験や競技会はやる気を促し、時に起こる挫折は忍耐力を培います。また、多くの教室は学年別ではなく横のつながりがあり、思いやりなどの社会性や協調性も身につけることができるとか。
受験には役に立つの? 算数を制する者は受験を制する!
中学受験界隈では、「算数を制する者は中学受験を制する」
「算数一科目入試」の学校も
近年は「算数一科目入試」を導入する学校が増えているほど、算数の得点が合否に与える影響は大きくなっています。また問題自体の難易度も上昇していて、論理的思考力を問う学校が増加しています。
複雑な問題に対応するには計算力という土台が欠かせません。中学受験における珠算式暗算を習得するメリットの一つが、問題を解く時間に余裕が生まれること。受験に有利となるキーポイントといえるでしょう。
半数以上が受験を希望、理系希望の親が6倍
また、「そろばん」を習わせる親の56%が中学受験意向があるとのことです。(上図)
さらに、将来文系と理系のどちらに進学させたいかという質問で「理系」と答えた親は全体の48.0%で、「文系」と答えた親の7.8%より40.
「そろばん」を始めるならいつがいい?
「そろばん」を習い始めた時期は小学1年が最も多く、そろばんを習う子の43.7%を占めます。小学校入学前から始める子も多く、全体の31.6%に上ります。それらを合計すると、小学1年までに習い始めるのは、4人に3人(75.3%)という高い結果となりました。
全国珠算教育連盟によると、1960年代は小学2年時に学習する九九を覚えてから習い出す子が多かったそうです。また、現在小学校では3年と4年時にそろばん授業があることから、中高学年で習い始めるイメージが強い一方で、実際は低年齢化が進んでいるようです。
小さい頃から始めれば始めるほど、珠算式暗算(頭の中にそろばんを描いて計算する方法)が身につく傾向にあるとのこと。目安としては、受験を意識する前の小学校の低学年ごろから始めるのがよさそうです。
そろばん教室の月謝はどれくらいかかる?
月謝は通いやすい価格帯
授業回数や地域によりますが、そろばん教室の月謝は週3回で5000円から1万円前後ほど。(教室によっては、週1のコースから無制限コースを設定しているところもあるそうです。)
「そろばん」の購入費など初期経費は1万円以内で、習い事として月数千円から始められ、ほかの習い事とも両立しやすいのも魅力です。
どんな「そろばん」がいいの?
カラフルなプラスチック製の「そろばん」が4000円ほどで購入でき、小さなお子さんに人気なようです。習いはじめはプラスチック製で十分ですが、玉が滑って意図せず動いてしまい、級が上がるほど使いづらくなるので、木を購入する方が多いそうです。
また、プラスチック製を推奨していない先生もいるとのことなので、購入する前に、通う予定のそろばん教室の先生と相談されるとよいでしょう。
お子さんに「そろばん」に興味を持って欲しいなら「日本そろばん資料館」へ
最後にご紹介するのは、「日本そろばん資料館」。資料館には、なんと「そろばん」約800丁が保存されています。細長い「そろばん」だけではなく、まるや箱形のものなども展示されています。
予約制ですが、誰でも見学できるので、興味がある方はぜひ親子で訪れてみてくださいね。そろばんに興味を持つよいきっかけになると思います。
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取材・文/Rina Ota