その機嫌の悪さは「便秘」が原因かも? 冬に多発する子どもの便秘。救急外来というケースも【小児科医監修】

冬は、感染性の病気による発熱から水分不足になったり、年末年始の帰省や旅行などによる環境の変化で排便リズムが乱れたりして、便秘になる子も珍しくありません。寒くてトイレに行くのを我慢するということも、便秘のひとつの要因に。
乳幼児の便秘について、目黒の「しあわせ子供クリニック」院長 二瓶浩一先生にお話を伺いました。

便秘ってどういう状態を指すの? 我が子の排便リズム、わかってますか?

そもそも、便秘とはどういう状態を指すのでしょう。特に、まだことばで自分の不調を訴えられない乳児の場合、何を目安にすれば便秘になっていると判断できるのでしょうか。

「排便のリズムには個人差があるので、3日出なければ便秘などとは言えません」と二瓶先生。判断の目安とするのは、その子の今までの排便リズムとの違いや、機嫌、食欲、おなかの張りなど。ことばが話せるようになった子どもであれば、「おなかが痛い」などの訴えもあるでしょう。今まで毎日排便していた子が3日間便が出なくて機嫌が悪かったり、ミルクや離乳食を嫌がるなどの様子が見られたら、おなかが張っていないか触って確かめてみましょう。

月齢が低いうちは一日に何度も排便をします。ミルクより母乳での授乳のほうが排便の回数は多めですが、一日数回出ていたのが一回に減って機嫌悪くしていたら、便秘の可能性が考えられます。

「週に何回以下だと便秘などという定義はないので、あくまでもその子の様子を見て考えましょう」と二瓶先生は言います。基本的に体重増加が順調で食欲があり、機嫌良く過ごしているのなら、3日おきの排便でも問題なく、それがその子の排便リズムとなります。

子どもにこんな様子が見られたら、便秘の可能性が

どんな様子が見られたら便秘だと考えられるのでしょう。便が出なくて苦しいことをきちんと訴えられない時期の子どもの場合は、下記の様子が見られたら、便秘の可能性が高くなります。

便秘が疑われる子どもの様子

・便が出ていなくておなかを痛がる(機嫌悪く泣いている)

・おなかが張っていて苦しそうにしている。

・おなかの張りが強くて吐く。

・固いコロコロの便をする。

・出た便に血がついている。

・少量のゆるい便漏れがある。

・排便の際に痛がって泣く。

・足を交差させて排便を我慢している様子が見られる。

・食欲がなく機嫌が悪い状態が続く。

便秘と気づきにくい便漏れ症状とは?

上記のような様子が見られたら、便秘の可能性がありますが、特に気づかれにくいのは便漏れを起こしている場合です。ゆるい便や液体が漏れるので、下痢をしていると勘違いされることも少なくありません。

これらの液体やゆるい便は、固い便が肛門近くにつまったせいで腸が膨らみ、固い便の脇から漏れ出した便の液体成分や、後から押し出されてきた新しい便です。肛門に固い便で蓋がされた状態なので便秘の症状はひどくなり、いち早い受診が必要となります。

不適切なトイレットトレーニングも便秘となるきっかけに!

子どもが便秘になるきっかけとして考えられるのは主に以下の4つです。

1 感染性の病気の後に

各年齢を通して冬に多く見られるのは、風邪やインフルエンザなどで発熱したり下痢をしたりで、体の水分不足が起きたことがきっかけとなる便秘です。

病気で食欲が低下すると、便の元になるものがなく排便回数が減ります。下痢や嘔吐などで体が水分不足の状態になると、食事がとれるようになって便が作られる際に、便の水分が奪われて固いうんちとなって排便がしにくくなり、我慢しているうちに便秘となってしまいます。

2 帰省や旅行などトイレ環境の変化で

排便は、副交感神経が優位になり体がリラックスした状態で促されます。

お正月に祖父母宅に滞在したり、旅行に出かけたりすることで環境が変わると、便意を感じにくくなったり、トイレ環境が違うために我慢したりして便秘になりがちに。また、冬休みの後、登園や登校し始めた際も、ストレスがかかって便秘が生じることもあるようです。

3 入園、入学、離乳食開始時は要注意

排泄環境が変わるという意味でも、入園、入学時期は便秘になりやすいものです。慣れていないトイレだと、気持ちよく排便できないという子も少なくありません。おむつをしている赤ちゃんであっても、保育園への預け始めは排便リズムが変わって便秘になることも。

朝、ゆったりした気分で排泄した後に、登園、登校できるのが理想的です。また、母乳から人工乳への切り替え時や、離乳食開始時も便秘になる子も珍しくないようです。

4 不適切なトイレットトレーニングでも

トイレットトレーニングで無理をさせることによって、便秘になることも。トイレでの排泄がストレスとなり、便意があっても我慢することが便秘の原因に。

また、便に対して「臭いね、ばっちいね」「また、うんちしたの?」などと大人がネガティブな発言をしていると、排便することにネガティブなイメージを持って我慢するようになるケースもあります。

さらに、失敗をして叱られたことでも、排便を我慢するようにもなることもあります。トイレトレーニングの途中で便秘になったら、いったん中断して排便リズムが整えてから再開するのがよいでしょう。

便秘が原因の腹痛で救急外来を受診するケースも。便秘で受診のタイミングとは?

「大学病院の救急外来では、便秘が原因で腹痛を起こして受診する子が、週に23人はいます」と二瓶先生。病院で浣腸をすると大量の便が出て、子どもはすっきりした顔になったりするとのこと。

救急外来での受診に至らぬようにするには、どういったことを目安にして受診すればよいのでしょう。

「普段の排便リズムを把握しておき、その排便間隔がいつもより長くなって不機嫌な様子が見えたり、コロコロした固いうんちが出たり、便に血がついていたり、排便の際に痛がって泣く、おなかが張って苦しそうにしているなど、便秘が疑われる症状が見られたら早めに受診するのが望ましいですね」(二瓶先生)

便秘の診断は、便の回数や硬さなどを尋ねる問診や、おなかを触る触診などによって行われ、必要に応じてレントゲン撮影や超音波検査が行われることもあります。便が大量に溜まっているとわかれば浣腸をして便を排出させます。

便秘を放置していると症状を助長する悪循環のサイクルに

便秘を放置していると、症状がひどくなって治りにくくなります。特に便が硬くなって排便の際に痛い思いをすると、次に便意を感じても痛みを思い出して我慢をしてしまいます。すると、腸の中に便が長く滞留することとなり、腸が便から水分を吸収して、ますます便は硬くなります。

腸に便がどんどん溜まることで腸が広がってしまい、便に対する腸の感受性が悪くなり(便が溜まっていることを感じて脳に伝達する力が低下し)、便意が生じなくなり、ますます便が腸に溜まっていき、さらに腸が広がってしまうという悪循環が生じます。

この悪循環に陥ると便秘が慢性化し、それが12か月続くと「慢性便秘症」と診断されます。

子どもの便秘 3つの解消ポイント

1食生活の見直しを。間食おやつのダラダラ食べはNG

子どもが便秘になったときには、食生活を見直してみましょう。食物繊維の少ない食べ物ばかり食べていると便秘になりやすいので、食物繊維が豊富な食材を意識してメニューに取り入れましょう。

食物繊維には、便を軟らかくする働きのある水溶性の食物繊維と、便のかさを増す不溶性食物繊維があります。基本的には2種類ともバランスよく取るのが効果的だと言われています(便秘の状態によっては不溶性食物繊維を控える場合もあります)。

<水溶性食物繊維を含む食材>

わかめ、昆布などの海藻類。オクラ、モロヘイヤ、アボガド、納豆、こんにゃく、きくらげ、山芋など。

<不溶性食物繊維を含む食材>

ほうれん草、キャベツ、ゴボウ、サツマイモ、きのこ類、豆類など。

規則正しくしっかり食事を取ることが大切なので、おなかが減らなくなるような過剰な間食はやめましょう。特にスナック菓子などをタラダラ食べていると、食事のリズムがとれません。また、水分不足にも気を配りましょう。

適度な運動と早寝早起き、朝ごはん

また、しっかり空腹を感じられるように、日中に適度な運動をすることが望まれます。体を使った遊びで腹筋が動かされると、腸への刺激にもなります。

さらに、生活リズムが乱れると、食事のリズムも乱れがちになるため、早寝早起きをすることも大切です。

朝食をしっかり食べるには、時間のゆとりが必要となります。離乳食期のお子さんの場合、ベビーフードを活用してもよいでしょう。朝食を食べてから登園・登校前に排便ができれば理想的です。そのためにも早起きが重要となります。

3お風呂上がりにお腹のマッサージ

おなかのマッサージをすることも、軽い便秘であれば有効です。特に乳児期にはおむつ替えの際やお風呂上がりにマッサージを。おへその周りを「の」の字を書くように、指の腹と手のひらで優しくマッサージをしましょう。

また、便意はリラックスできる副交感神経が優勢なときに感じます。トイレの環境や、排便に関する大人の声がけなど、子どもが排便で緊張することがないよう心がけましょう。

トイレットトレーニングが完了しても、子どもの便の観察を

おむつをしている時期やトイレトレーニング中だけでなく、トイレの自立ができてからも、子どもの排便回数や便の様子は気にかけましょう。

「どんなうんちが出た?」「スッキリ出せた?」など、子どもに尋ねるのもよいでしょう。「カチカチうんち」「バナナうんち」「ゆるゆるうんち」など便の状態に名前をつけ、子どもに報告してもらえるとよいですね。

「うんち出た〜!」など、子どもが排泄した便を見せたがったら喜んで見てあげて、「うんちが出てよかったね」などと、ポジティブなことばがけをしましょう。「汚い、くさい」などのことばは排便にネガティブなイメージがつき、排便を我慢することにつながったりするので控えましょう。

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記事監修

二瓶浩一先生|  しあわせ子供クリニック 院長

東邦大学医学部卒。東邦大学医学部付属大橋病院小児科勤務を経て、2020年東京都目黒区に「しあわせ子供クリニック」を開院。同クリニックでの診療の傍ら、東邦大学医療センター大橋病院の非常勤講師や目黒区内のいくつかの保育園の園医を勤める。

取材・構成/仲尾匡代

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