※ここからは『こども目標達成教室〜夢をかなえるために何が必要なのかがわかる本』(カンゼン)の一部から引用・再構成しています。
目標を達成するために今やるべきことがわかる〝逆算〟の考え方
前編の記事では目標の立て方のコツをお伝えしました。後編では、どうすれば目標を達成できるのかについて考えてみましょう。
たとえば「野球選手になりたい」という目標があるとします。
プロ野球選手になるには、各球団のスカウト担当者の目にとまり、契約交渉権を各球団に振り分けるドラフト会議で指名されることが必要です。スカウト担当者の目にとまるためには、甲子園などの大会で活躍しなければなりません。甲子園で活躍するためには、野球が強い高校に入りレギュラーになることが必要です。
このように目標を達成するために必要なステップを考えることを「逆算」と呼び、逆算をすることで「今自分がやるべきこと」が見えてきます。目標に向けて自分がやるべきことを逆算していく考え方が「バックキャスティング思考」です。長期的な目標の実現に適した考え方になります。
バックキャスティング思考で考えるうえでのポイントは、「できる/できない」に関係なく「今やらなくてはならないこと」を考える点です。できない理由をあげてあきらめるのではなく、目標を達成するにはどうすればいいのかを考えるのです。
もしあなたに目標達成するのは無理だと思う気持ちがあるならいったんその気持ちを捨てて、今すべきことから考えてみましょう。
すぐに行動できるものを最初の一歩に
紀元前4世紀に活躍した古代ギリシャの哲学者プラトンは「始めは全体の半ばである」という言葉を残しています。「ものごとは始めてしまえば、半分終わったようなもの」という意味です。
しかし、最初の一歩はなかなか踏み出せないものです。作文を書くときに最初の一文字をなかなか書くことができなかったり、クラス会議で一番最初の意見がなかなか出てこないなど、一番最初の行動にはプレッシャーがかかってしまいます。
目標に向けて行動するときも同様で、一番最初の行動をなかなか踏み出せないという人もいるでしょう。うまくスタートを切きるコツは、だれにでもできる簡単なことを最初の一歩にすることです。
たとえば「歌手になりたい」なら「歌を歌う」を最初のステップにします。簡単なことですが、これで目標に向けての最初の一歩を踏み出せます。
「マンダラチャート」が大谷選手の夢をかなえた!
目標を達成するために必要な行動はいろいろありますが、頭のなかで考えているだけでは数が多すぎて混乱してしまうでしょう。そんなときに役立つのが「マンダラチャート」です。
マンダラチャートとは目標に必要な要素を細分化し、どんな行動をとれば目標達成に近づけるのかを書き込むシートです。メジャーリーグのロサンゼルスドジャースで活躍する大谷翔平選手も、高校生の頃にマンダラチャートを活用して、プロ野球選手になることを目指していました。
マンダラチャートをつくるには、まず下のマス目のように中央に「達成したい目標」を書き込みます。その周りの8マスには「(目標達成に)必要な要素」を書き込みます。さらに周囲の3×3のマスの中央に「(目標達成に)必要な要素」を書き込み、それぞれの周りの8マスに「(『必要な要素』を得るために必要な)行動目標」を書き込めば完成です。
書き込むときのポイントは、「達成したい目標」はできるだけ具体的なものを記入し、「(目標達成に)必要な要素」についてはあまり具体的に書きすぎず、「(必要な要素を得るために必要な)行動目標」には実行に移しやすくするため具体的な行動内容を書き込みます。こうすることで、自分に必要な行動が整理されていきます。
大谷選手のマンダラチャートを見てみよう!
下のマンダラチャートは大谷翔平選手が高校1年生のときに作成したものです。
花巻東高校時代の監督である佐々木洋氏の教えによって「8球団からドラフト1位で指名される」という目標を中心に置き、そこから細分化した行動目標を書き込んでいます。
このように「かなえたいこと」への道のりを確立したことが、大谷選手の今の活躍につながっているのです。
藤井聡太さんに学ぶ、結果が悪くてもあきらめない方法
目標に向かって行動していく途中にはさまざまな困難があります。
学校の勉強では日々新しい事がらを覚えなくてはなりませんし、テストで難しい問題が出たときには間違ってしまうこともあるでしょう。スポーツでもほかの人のように上手にできなかったり、ダイエット中に思うように体重が減らないことだってあります。
自分なりにがんばっているのに思うように結果が出せないと、「自分には無理だ」とやる気をなくしてしまうことがあるかもしれません。しかしこれは結果ばかり見ているからです。
努力しているなら少なからずあなたは成長しているはずです。成長を見ずに結果が悪かったからと落ち込んでしまうのは、悪いところしか見ていないせいかもしれません。
やる気を維持するためには自分の成長にも目を向けることが大切です。
実際、成功者のなかにも自分の成長に目を向けている人がいます。史上最年少で8つのタイトルを獲得したプロ棋士の藤井聡太さんは、結果と内容について下記のような発言をしています。
結果よりも内容を重視して、やっぱり一局指すごとに改善していけるところというのが新たに見つかるものかな、と思うので。
やっぱりそれをモチベーションにしてやっていきたいというふうに思っています。
藤井さんのような大きな結果を残している人でも結果だけを求めるとモチベーションを維持するのは難しいと考えているのです。あなたも結果だけでなく、自分の成長にも目を向けてみてはどうでしょうか。
※ここまでは『こども目標達成教室〜夢をかなえるために何が必要なのかがわかる本』(カンゼン)の一部から引用・再構成しています。
『こども目標達成教室〜夢をかなえるために何が必要なのかがわかる本』(カンゼン)
目標達成力は、将来の自分を想像し、なりたい自分になるために必要不可欠な力です。この記事で紹介した本書では、なりたい自分になるための目標設定の仕方、目標に沿ってステップアップしてくための修正力、モチベーション維持のためのコツと実行のためのポイントなどを、図表やイラストとともに解説しています。
<目次より>
・具体的な目標づくりに役立つSMARTの法則
・目標達成のキモになる「ストレッチゾーン」
・自分の成長をはばむ「セルフ・ハンディキャップ」
・「PDCA」でよりよい方法を考え直すことも必要
・巻末コラム「目標達成を成しとげた、夢をかなえた有名人たちのエピソード」
竹橋洋毅(たけはし・ひろき)
奈良女子大学文学部人間科学科准教授。1978 年愛知県生まれ。名古屋大学文学部卒業。名古屋大学大学院環境学研究科を修了。博士(心理学)。専門は社会心理学と教育心理学で、モチベーション(やる気)の心理について研究・実践している。著書に『モチベーションの社会心理学』(かもがわ出版)、『非認知能力 : 概念・測定と教育の可能性』(北大路書房。分担執筆)などがある。
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構成/国松薫